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前回、今週末に開かれるワールドカップ第3戦の展望などの記事を書きました。
いよいよ世界選手権にステップアップするための世界シーズンがはじまりますね!とにかく、毎シーズンが東京で飛躍できるかの生き残りをかけた壮絶な勝負どころとなります。

スイス・ルツェルンの風光明媚な美しいコースでのボート風景などを掲載しようかと思っていたのですが、やはり今の若い世代の方々に日本代表の足跡を知ってもらいたいと思い、もう17年も前になりますが2001年シーズンの活躍も含めて記事にしたいと思います。






まず、ルツェルンのボート風景をテーマにいたします。
redbull.comさんの記事で世界の名ボートコース9選にももちろんリストアップされている美しいレガッタコースであるルツェルン。
世界の名ボートコース9選
なぜかシンコビッチ兄弟が選んだという記事になっています!しかしこんな記事ももっと増えるとボート競技の認知度も上がるでしょう。

ルツェルンのRowingが行われるロート湖は、標高419mだそうです。そこまで高い位置にあるわけではありませんが、スイスの連峰を仰ぎたいへん美しいコースとしても印象深いですし、長さ約2500m、幅250mの直線コースとして自然にできた形状は戸田コースがそのままスイスに現れたというようなまさにボートのための湖です。
四方を森林エリアや小高い丘に囲まれているため風の影響を非常に受けにくい、立地的な優位性もあります。そのことから、ボート競技環境としては最良な場所とされ、レガッタの選手達の間では「神々の湖(Göttersee)」とも呼ばれています。
スイス情報 ロート湖より
1933年に世界のボート大会が主催され、1962年には第1回世界選手権がこのルツェルンで行われました。そして現在ではほぼ毎年、ワールドカップ第3戦の舞台として7月に世界大会をおこなっているのです。
ルツェルン british rowingより
ルツェルン、ロート湖のレガッタコース。
British Rowingより写真転載



上から俯瞰してみるとこんな風景です。
うーん、やはり一度はこんな素晴らしい環境でレースをしてみたいですね!
rotsee_1_1280_720_70.jpg
http://sportlived.co.ukより写真転載

世界中のオアズマンが、ヘンリーレガッタの行われるイギリスの聖地テムズにあこがれ、「テムズで漕がなければボート人生を終えられない」と口を揃えて言うといわれるそうですが、世界ボートの聖地ルツェルンも同様でしょう!「ルツェルンでボートを漕ぎたい」
われわれが想像する美しいボートのコースがそこにあります。








さて、そのルツェルンで日本クルーの活躍を夢見て、日本ボートは毎年チャレンジを続けているわけですが、2001年シーズンにはこのルツェルンで世界選手権が開催された際にLM4X3位、そしてLM2X5位という成績を残しています。
この日本の戦いを振り返ってみたいと思ったのです。


前年2000年、クロアチアのザグレブで8月初旬に行われた世界選手権(五輪の年なので非オリンピック種目のみ)では、五輪直前に日本はLM4Xで出漕し見事優勝、世界大会で初めての金メダルとなりました。
優勝のLM4Xは、S:T田選手、3:H谷選手、2:M本選手、B:K保選手であり、予選5'56、準決勝6'02、決勝6'06でいずれも1着の完全優勝でした。このときのようすは当時の月刊Rowingに詳しく、私のブログでも記事にさせてもらっています。
「世界選手権2000 舞台裏」
また、ともに出漕したのはLW4Xでこちらは4位。12杯中の4位です。クルーはS:I本選手、3:Y田選手、2:U下選手、B:U山選手。決勝ではドイツ6'54、オーストラリア6'56、中国6'58、日本7'02、イギリス7'03、オーストリア7'03でした。
さらにLM8+。9杯中7位。S:T邊選手、7:S藤H弥選手、6:O畑選手、5:M井K選手、4:M井S選手、3:U選手、2:I田選手、B:Y崎選手、C:O西選手でした。

この世界選手権を経て、LM4XとLW4Xの前2人とLM8+の前4人が9月下旬のシドニー五輪本戦に臨みました。すなわちLM2XのS:T田選手、B:H谷選手、初の五輪決勝6位。LW2XのS:I本選手、B:Y田選手は14位。LM4-のS:T邊選手、3:S藤H弥選手、2:O畑選手、B:M井K選手は14位(敗復敗退)となったのです。




この前シーズンの経験があり、ともかくもLM2Xにおいて五輪決勝進出、LM4Xで世界選手権優勝ということで大きく前進した日本代表チームは、次のアテネに向けて決意新たに2001年シーズンに向かうのです。現在と同じくO林コーチが日本代表を率いていました。

2001年世界選手権は、スイス・ルツェルンで8月下旬に行われました。

このときの日本代表の陣容です。
LM2X S:T田選手、B:U選手
LM4X S: M本選手、3: O畑選手、2:H谷選手、B:Y野選手
LM4- S: M井K選手、3: T辺選手、2:K野上選手、B:Y本選手
LW2X S:I本選手、B:K野選手
LW4X S: T井選手、3: U山選手、2:O澤選手、B:F田選手


このうちLW2X、LM4-、LW4Xはそれぞれ下位で苦戦しトップクルーと比べると艇が走っていませんでした。
しかし、LM2XとLM4Xの男子スカルチームは準決勝での激戦の中でサバイバルに残り決勝に進みます。(ともに準決勝B組6クルー中3着で決勝へ)


そして、世界選手権決勝を迎えます。
まずはLM4X、日本はS: M本選手(Tレ滋賀)、3: O畑選手(S洋電気滋賀)、2:H谷選手(C電)、B:Y野選手(N体大)
※( )は当時の所属チーム

2001世界選手権 スイス・ルツェルン
LM4X決勝
イタリア 1'25-2'52-4'21-5'50
ギリシャ 1'27-2'55-4'25-5'52
日本   1'26-2'56-4'27-5'54"1
スペイン 1'27-2'58-4'27-5'54"6
デンマーク1'25-2'55-4'27-5'55"4
ドイツ  1'27-2'57-4'28-5'55"9

ご覧のように、LM4Xらしい大接戦の団子レースの中で推移した中で日本は3位、銅メダルとなりました。
2018年現在、当然のように今度のワールドカップでもこれくらいのタイムが必要になるだろうということです。

ボートは、他の競技と同じように結果だけを見れば最初からその序列だったのではないかとの印象を与えがちですが、しっかり内容を見なければいけません。特に、レースをやる前はいつだってどのクルーも1着をめざしているわけですから・・・。
先行し飛ばしたのは前年日本に2位と敗れたメンバーのうち2人を乗せてきたイタリアと、ストロークがベテラン以外若手中心の編成だったデンマーク。日本はこの両クルーを追い半艇身ほどにつけ3番手をキープ。後に続くドイツ、ギリシャ、スペインもぴったり日本の半艇身差についています。

快調に飛ばす、先行の得意なイタリアは徐々に水をあけにかかります。若いデンマークは少しずつ苦しくなり、日本との差がつまってきますが、ここでギリシャが上がってきます。シドニーLM2X準決勝で日本が破った因縁のギリシャは、第2でスピードを落とさず進出し日本をかわしにかかります。ギリシャはこれまでボート強国の印象がありませんでしたが、このLM4Xにはのちのアテネ五輪LM2X銅となり日本の強力なライバルとなるポリメロス選手が3番に、スキアティティス選手がバウに乗っていました。特にポリメロス選手は北京ではLM2X銀。1976年の早生まれ、ちょうど日本LM2Xで活躍されたU選手と同い年でありギリシャのU選手といった名選手なのです。そうです、2005年岐阜世界選手権LM1XのU選手が出した世界最高記録6'46を翌日6'41というさらにぶっとびのタイムで更新しLM1X優勝をさらっていったのがこのギリシャのポリメロス選手です。結局これは長良川の順流というコンディションが生んだ参考記録となりましたが、アテネ、北京の五輪ロードに常に日本に立ち塞がってきたライバルだったのであります。
日本は第3Qで落ちてきたデンマークに並びかけますが、ドイツ、スペインもすぐ隣におり4艇が重なる激しい3番手争いに入っていきます。2艇身以上先行するイタリアと、それを追撃にかかる1艇身前のギリシャには届きませんが、この3位争いにすべてをかけた日本は、最後はスペインとの激しい叩き合いになりますがこれをカンバス差しりぞけ、ルツェルンの美しいコースで3位に入ったのです。

この年はルツェルンで世界選手権が開催されたこともあってやや変則的、ワールドカップ第4戦が7月にドイツ・ミュンヘンで行われておりそこでは日本LM4Xは同じメンバーで挑みドイツ、スペイン、デンマークに負けて4位でしたが、ルツェルンでは決勝の特別なペースに乗ることでワールドカップで敗れた相手にすべて先行して上回り、イタリア、ギリシャというLM2X強豪国に次ぐ成果を上げることができました。
表彰式での日本クルーの喜びようがまた印象的でしたが、当時のビデオを私も今は持っていないですし、当時の写真や画像も入手できず文面だけの紹介のみになるのは残念ですが、LM4Xでの戦績を重ねていけば、日本もLM4Xが得意種目であるという印象を与えていくことができるでしょう。




さらにLM2Xが日本のトップクルーでありました。日本はシドニーからバウが替わり、S:T田選手(Dイキ)、B:U選手(○TT東日本)のクルー。

LM2X決勝
イタリア 1'33-3'08-4'45-6'16
ポーランド1'33-3'09-4'45-6'19
フランス 1'34-3'11-4'51-6'20"30
ドイツ  1'35-3'10-4'48-6'20"33
日本   1'33-3'08-4'45-6'21"4
デンマーク1'34-3'11-4'49-6'21"9

これは、すごいレースですね。まずイタリアは史上最強コンビ、Sペティナーリ、Bルイーニです。前年シドニーは惜しくもポーランドに敗れ銀メダル、しかしこの年から世界選手権LM2X3連覇を果たし、2002年には当時のLM2X世界最高タイムの6'10を出して世界最強クルーとなります。アテネまで優勝候補ナンバーワンでしたが、故障か何か原因は分かりませんがアテネ五輪本番では不可解な不調に陥り準決勝で敗れていましたが・・・。イタリアのバウだったイケメン漕手ルイーニはエルゴ6'02あたりを出して、デンマークのエベセンを抜いて軽量級エルゴ世界一になっていたのではなかったでしょうか。それからポーランドはSシッチ、BクハルスキのシドニーLM2X金コンビ。フランスもシドニー銅メダル。ドイツもメンバーの一人はシドニー4位。そして日本が競り勝ったデンマークはあの後のロンドン金、Sクイスト、Bラスムッセンのクルーです。

つまり日本のT田選手、U選手は、シドニー決勝の相手、そしてのちの金メダリストたちとのレースをしているのです。そのルツェルン世界選手権の決勝で、最強イタリアにぴったり並んで1'33-3'08の前半1000mをバトルしました。世界の先行争いです。ルツェルンはコンディションが良く、比較的速いタイムが出る印象がありますが、この決勝タイム、メンバーと、現在と比べても遜色ないのではないでしょうか。現在のLM2X五輪優勝タイムは6'12と見ていますが、やはりこのときは当時世界最高水準のレースでした。
日本は1000m2番手、1500m3番手でしたが前半の飛ばした負債によって日本の永遠の課題、世界のラストについていけない弱みによって結局は5位に後退してしまします。ここのレース最後のクロージング、爆発ができるように現在ではトレーニングしているものかと思います。
しかし世界の金メダリスト、銀メダリストと並ぶレースはできるのです。このとき後半の強さ、レースをトータルでマネジメントできる2000mの強さがあったなら。
第3、第4とスピードを維持し突き抜けて、イタリアとの叩き合いに持ち込みパワー増幅し、世界のスパートできっと加速し続けられる。

世界一になる志をもって、世界チャンピオンを作る土台は、日本にはあると信じています。流れ星のように、ヨーロッパの美しい直線コースで世界の強国たちにきらめく輝きを見せてほしいのです。



そして日本が誇るLM2X、前回ワールドカップでクルーボートでの優勝はなかったかもしれないと書いてしまいましたが、この2年後、ワールドカップ第3戦ルツェルンで、LM2Xで6'16を出し2位になっています。優勝はやはりあの最強イタリアで6'12を出していますね。
2003年ワールドカップ第3戦ルツェルン、LM2Xの2位。T田選手とU選手は今なお日本における史上最強クルーといえると思います。

また、シングルではT田選手が2005年にワールドカップ第3戦のやはりルツェルンで優勝しています。日本人のワールドカップおよび1X種目では初めてかつ唯一の優勝です。
T田選手は日本ボートの歴史上、最高の選手だったことは皆さんが認めるところでしょう。
しかし、もっと素晴らしい選手を多く輩出していくことが、ボートにおいて真に強く、素晴らしい国になっていくためには重要なことです。



この2001年シーズンは、17年前のこととはいえ、現在の2018年シーズンと色々と重なる共通点や参考にできる部分があると思いませんか?
そして、日本はもう少し過去の反省や教訓、これまでのレース研究や他国研究などを繰り返し、日本ボートとしての経験と知恵を積み重ねていく必要があると思うのです。
他の強国はまさに、歴史と経験を大切にしているところが日本との大きな差であると思います。







日本ボートは歴史を前進させなければいけません。
いくつかの栄誉を勝ちとった、このめぐり合わせの良い「世界の戸田」、ルツェルンで。

そして、われわれのホーム、東京で2年後に世界一をめざし、新しい星たちが多くの流星となって今とは想像もつかないくらい素晴らしいクルーに成長してください。
あと2シーズン。未来は変えられます。


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