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新人教育シリーズはラストです。




前回、前々回の記事から、新人指導や育成についての話題を中心にお伝えしています。

私は大学からボートを始めてCOXとして入部しまして、2年生や3年生のときは春~夏の期間、新人指導を任されていました。1つ上にCOXの先輩がいたために乗れる艇がないので新人指導に回っていたというチームの事情もあったのですが、当時は新入生を教えるために参考にできるノウハウなど伝わるものは何もなかったため、自分が1年のときのメニューを踏襲したりトレーニングの本などを参考にして手探りでやるしかありませんでした。当然、無駄や失敗もあったと思います。
ですから、何も分からない人間がやるより、基本的にボートに対して日頃から高い意識で考えている上級生や院生が適任であると考えています。週末社会人コーチでは日頃接する時間が少ないため、できるだけ毎日の練習や生活で接する人間が指導役として望ましいのです。

それから、私がコーチをしていたときに自分に言い聞かせていたのは「自分の経験値や考えだけで指導してはいけない」ことで、教える人間は人一倍ボートを学ばなければいけないということです。学んだことを、鵜呑みではなく自分の身体と頭で考えて理解したものを相手に伝えることが大事です。それをまた相手には、同じようにきちんと考えてもらわなくてはいけません。



夏を過ぎたら新人指導は終わり、ではなく重要なのは秋と冬も同じで、将来の戦力を育てるために通年の計画が必要であるとの考えに至っており、現在では私は新勧と1年間の新人指導というものを重視しています。それもあって、「新勧、継続、育成」という最近よく使うフレーズをセットにして、これらが全て一貫した方針のもと「未経験者主体チームのめざすべき事業」としてチーム運営の根幹に据えるべきだと私は思うわけです。ここを最重視しなければ、強いチームの土台につながりません。元から主体性が身についていた一部の素質ある主力に依存するだけのチームとなってしまいます。全体で強くなり、高いレベルで平均化するにはチームとして1年目からの底上げが最も重要なのです。

2年目以降は、レース経験を積んでトレーニングのPDCAの質を高めていくサイクルができあがってきますし、社会人コーチや学生コーチなどの関わりも増え、より自律的に動いていけるはずです。心技体の基礎やボート競技の基本部分は、1年生の1年間でどれだけ凝縮できるかが大事ではないでしょうか。(とはいえ、何度も言うように成長の度合いやタイミングには個人差がありますので、2年目の飛躍や3年目の覚醒、あるいは4年目の急激な怒涛の成長ももちろんあります)



私自身の経験を振り返ると、1年目のうちから前々回の記事にあったようなレクチャー内容の中で、基礎知識は当たり前としても、1年生のうちから、技術、トレーニング、Rowing情報その他、さまざまなコミュニケーションを密接にとれた学年と言うのはボートに対する意識が全体的に高くなる印象を持っています。
私のコーチ経験では失敗も数多くしてきたと思いますが、当然インカレには毎年こだわってきました。その中でどうしてもそのシーズンの成績が欲しいために上級生クルーのコーチングを優先し、1年生と接する時間がとれなくなってしまったとき必ずその影響が1、2年後に出てしまっていたように思うのです。上級生は大事だが、同等以上に1年生と接する時間が貴重なのです。最近になってその重要性を本当に感じています。
コーチ自ら1年生の指導時間を確保するかどうかが大事というわけではないのですが、上級生部員の中で1年生指導をきちんと決めておき、1年生1人1人を大事にする仕組み作りが絶対に必要です。このことは確信を持って言えます。
2015 サーキット風景



1年目のうちからトレーニングや技術を中心にボートに関するコミュニケーションを日頃からとっていき、丁寧に乗艇やエルゴを見ていけば、ほぼ例外なく1年冬で小艇(スカル・ダブル・ペア)やフォア・クォドを乗りこなせるようになり、2年目のシーズンには1人前の活躍ができるようになります。これは私の経験だけでもそれが言えます。

よく未経験、未経験と私は言ってしまうのですが、例えば強豪の高校チームはほとんどが未経験者中心の大学チームと同じ条件です(しかも通年合宿がなく練習部数は大学に比べ少ない)。それにも関わらず強豪高校に共通するのは、やはり1年冬に小艇を乗りこなし2年目で多くは全国レベルですでに活躍したりします。私は高校チームの実情にそれほど詳しくはありませんが、強豪高校では上級生が1年生の面倒をしっかりと見て指導するチームが多いと聞いたり、顧問の先生によって1年生段階でのきちんとした指導がなされていることも感じます。いずれのやり方にしても、仕組みやルールがきちんと確立しています。1年をほったらかしのチームは高校、大学に関わらず弱小だと言い切れるでしょう。

長年の経験を持つ強豪高校の顧問と同じ指導力をいきなり有するのは難しくても、大学生には時間を有効に生かしてボートを考える時間があります。自分のトレーニングの合間にエルゴを見たり、岸に着けて指導したり、一緒に乗艇したり、前々回言ったようなさまざまなレクチャーをしたりと、何でもできます。一緒に海外Rowingビデオを見たり、大会があれば一緒にレースを岸で見て解説してあげたり、1年生が常にボートと接することができる時間を作ります。(これらは私が新人指導やコーチをやっていたときは必ず行っていました)
そもそも、優秀な大学生ボート選手は、有能なコーチの資質を持っています。これも私は確信を持っていることで、クルーを見る目や艇を感じる能力に長けているのだから、あとは初心者に対する共感と考えさせるアプローチの工夫の問題だけです。




さて、1年生を指導するときに重要なことは2つ。「楽しく!厳しく!」です。
これは高いレベルをめざすチームに向けてです。(このブログはできるだけそこを意識して書いているつもりですが・・・)

どんなレベルにおいてもボートが楽しい、ボート部が楽しいと思えなくては続きません。とにかく、初心者でもトップレベルでも、現代のスポーツにおいて一番のモチベーションは「楽しい」ということです。初心者の「楽しい」と、トップレベルの「楽しい」は全く意味が異なる楽しさかもしれませんが、毎日続けても楽しいとか、ボートに乗ること、ボート部に関わることが楽しいと思えることは共通していると思います。
そこがボートを続けることに対しての、ボートで強くなることに対しての原動力になるところです。

新人指導の方は、ボートを楽しむための工夫を常に考えてください。1年生に楽しんでもらうわけですが、教える側の自分自身も1年生と接することを楽しまないとですよね。
1年生のうちは、食事会やレクリエーションも頻繁に行って、1年生同士の関係を深めてもらい、もちろん上級生も一緒に参加するのも大事ですね。こうやってコミュニケーションの風通しをよくして、困ったときに悩みや相談ができるファミリーのような関係であるのが、ボート部のいいところです。
2015インカレ納会 1年生女子3人


それから、厳しさも必要です。ボート競技は、ハードスポーツです。楽しいところばかり優先しすぎると、馴れ合いや仲良しクラブになってしまい、競技性が失われる場合があります。仲良くなりすぎて目標に向かえなくなるのがボート部の目的ではありません。目標に対して強い執着を見せることが大事であり、集団の甘さを指摘し高い意識を持ってリードすることが浮いた存在になってしまうようでは、健全なチームにはなりえません。自らの人間的成長や組織の社会的成長が目的だからこそ、目標のもとに議論し工夫して、さまざまな能力や心技体を培うことができるのです。

オンオフをしっかり切り替え、徐々にハードなメニューを課していく必要があります。まだ入部して1カ月や2カ月の部員にエルゴのインターバルやトライアルを課して、目標タイムをクリアさせることにためらってはいけません。ただし間違ってはいけないのが、強要したりただ追い込めばいいんだと勘違いしてはいけないところです。このブログで幾度となく強調している内容ですが、「やらされる」練習では絶対に結果が出ません。

基準タイムやトレーニングの消化基準において、「これが強くなるために当然クリアすべきハードルだ」ということを示すことが必要です。選手自身が主体的にチャレンジする姿勢を養うことが必要なのです。新人であっても、自分の身体は自分が一番わかりますので、こうした目標に対する現状がどれだけのものかちゃんと考えて理解できます。

トレーニングが厳しいときこそ、見守り、認め、励ます存在が必要になります。今は選手をむやみに怒ったりする時代ではなくなっていて、どう接したら前向きに貪欲にチャレンジできるようになるか。選手のようすをトレーニング中もトレーニング以外もよく観察し、毎回目標を持たせて継続すれば、意識も意欲も高めることができて、必ず壁を越えられるようになっていきます。自分で考えさせ、時には的確なアドバイスも必要です。
そして、1年生指導はできるだけ同じ1年の仲間と一緒に厳しいトレーニングに当たらせましょう。集団でやれば競争意識もチーム意識も育てることができて、効果が高まります。仲間同士の励まし合いは効果抜群です。1年の人数が少なければ、上級生が一緒にトレーニングするのもありですね。
新入生の指導3



このようにして、楽しさと厳しさが凝縮された1年目を過ごしてもらうと、本格的な2年目というところにつなげることができるでしょう。同期とともに日々目標を全力でクリアしていこうとする充実感、上級生の先輩に色々教えてもらい学んでいくことへの信頼と感謝、仲間との充実した毎日を過ごす喜び、目標を達成した嬉しさ、達成できなかった悔しさ。
多くを凝縮して感じていき、そしてボートの楽しさや奥深さを、色々な知識や経験によって知っていくことで、これらすべてより高いレベルでボートを楽しむための原点となるのです。強いライバルとレースをする、本当に信頼できるクルーやチームの仲間と勝利をひたすらめざしていく、未知の艇速や世界にチャレンジしていく―こうした心からワクワクするRowingの楽しさを、Rowingの喜びを、できるだけ多くの人に味わっていただきたいのです。
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