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新勧まっただ中ですが、技術記事も無理やり入れてしまおうと思います。
新勧と並行して、対校戦が間近に迫った重要な時期、新勧力もRowing技術もアップさせるのが一流の漕手と舵手の務めですよね!
学業や仕事やチームマネジメントなどさまざまなタスクをこなし、気づいたときにフォームチェックとさらなる未知の身体感覚を開発していく。それがボート選手の理想なんですよね!




4月に入り、各大学が本格的にシーズンへと動き出す時期ではないかと思います。
対校戦がある大学はいよいよ対校クルーが選考され組み始める。対校戦や定期戦がもう少し先の時期に組まれている大学や対校戦自体がない大学も、戸田では全日本軽量級、関西なら朝日レガッタなど4月~5月の大会を重要な目標に設定して、それに向けたクルーを組んで本格的に始動していると思います。


ここでは冬季に培ってきた個々の技術や小艇の技術、何よりエルゴをはじめとする体力を、いかにクルーボートの艇速に反映させていくかという点が練習目的のメインになってくることでしょう。この乗艇主体の練習においてはフィジカル向上はもちろんですが、テクニカルの向上も求められてきます。まだ低レート中心だったりするかもしれませんが、中レートや高レートも徐々に割合が増え、乗艇トレーニングのバリエーションが増えていくチームは多いと思います。
まだまだ基礎テクニックの試行錯誤を繰り返すための時間的余裕がありますが、あっという間にシーズンはやってきます。というより、目標レースのクルーボートを組んでいるならば、もうすでにシーズンに入ったと考えるべきですね。
冬は終わった。いよいよ漕春です。
春の大事なレースが控えており、冬季トレーニングの重要な目標のひとつが待っています。以前から言っているように、目標がすべてのはじまりとなります。その目標達成のために、タイムと艇速を出す体力指標の到達、技術レベル向上に、とことん挑戦してください。






1.フォームについて
感覚的なアプローチをするための、Rowing技術をお話します。Rowingは感覚です。これが前提で、その上で感覚は忘れやすいものなので、イメージとして記憶しそれをさらに説明したりキーワードとして繰り返す形で再現性を高めます。


私は、ずっとボートに関わってきてキャッチでのポジションすなわちフォームの重要性というものがRowingの極意である、という結論にいま現在至っています。理想的なキャッチによってドライブからフィニッシュまで艇を強く長く動かすことができ、安定したフォームはバランスやリズムにも大きく影響し、キャッチがうまくなればすべてのサイクルが向上するからです。つまり、キャッチでタイムが伸びます。(ドライブ~フィニッシュまでの股関節主導の脚の使い方や出力ももちろん重要ですが)
本来フォームとは、スポーツバイオメカニクスのことなんですが、ボートではあまりメカニックとかバイオメカニクスという言葉は一般的に使われないので、フォームないしはポジション(姿勢)というよく使われる用語をこのブログでも使用します。


フォームとは、単なる見た目ではありません。質です。そしてフォームとは、質、内容の改善によって「艇速」というパフォーマンスを上げるための根本となります。
骨格・関節のポジション(姿勢)、筋肉の出力・脱力、重心・体重、これらの身体力学的な作用を、「感覚によって感じ、コントロールする」のがフォームです。見た目から直すのではなく、感覚から変えます。それには感覚イメージを変えます。「○○(身体の部位)を意識しよう」という運動感覚のイメージです。
視覚イメージと、この運動感覚イメージ(以下、運動は省略)は違います。視覚イメージは、あくまで見た目で評価。感覚イメージは、見た目から実際にその人になりきって感覚を想像することで、パフォーマンス自体の評価ができます。

形だけ真似しても感覚が異なっていたり艇速につながらなければフォームが良くなったとは言えません。形は良いフォームとそっくりにしたつもりなのに肩が力んで動きが硬い、力が弱い、などと試行錯誤を繰り返すことになりますが、意識する身体の部位を変えて、感覚が変わることでようやくすべてが変わることに気づきます。リラックスが身体の重さを利用するために重要だとわかったりします。一部分をシンプルに使うだけで全身が連動することを発見したりします。こうした変化が、フォームの質的変化、内的変化とでも言えると思います。そこではじめてパフォーマンスが上がった、見た目も良くなった、となるわけです。

こうした意識ポイントを、トップ選手は必ず詳細に感じ分けていて、修正したりコントロールすることができます。知識とはあまり関係ありません。トップアスリートは感覚識、感識とでも言うべき感覚が優れています。良い悪い、必要なもの不要なもの、一致感と違和感、これらを峻別できます。言葉を知らずとも感覚を知っているわけです。
さらに、それを言葉として表現し、知識として感覚とリンクさせ、なおかつ他者がわかるように説明できる人が、コーチとしての資質まで持っている人だと思います。まわりの主体性を大事にして「わかる」から「できる」ところまでもっていきたい。というより、教員や指導者、先輩も、人に教えるならそこをめざしたいものです。
言葉にできなくとも、感覚が自己完結している人はそれだけで優秀なパフォーマンスが発揮できるので、優秀な選手であることと社会的能力とは実際はあまり関係がないのです。ただ、ボートはチームスポーツです。身体感覚の能力と、社会的能力とをともに鍛えて組織で力を発揮できる人間になることが私は重要だと考えています。ボートはコミュニケーションに優れ共感力にあふれたリーダーを育てる競技であるととらえています。
良いフォーム、良い感覚を得れば、できれば言葉を持ち、まわりのまだわからない選手を手助けしてあげたいものです。


フォームは質といいましても、実際には見え方が違ってくることで、選手やコーチは結局は外からの見た目で評価をします。しかしそれは理想のフォームの「感覚イメージ」によって評価をしたいわけです。見た目にクセや個性があっても、パフォーマンスの質が良く故障の心配もなさそうなら細かい点は気にせずきちんと評価するべきです。
全てのボート人が、「完璧なフォーム」を手に入れることができていません。ここも私なりの表現ですが(笑)、世界一のクルーでも決して完璧なフォームではありません。
質やパワーという要素によって、フォームはどこまでも進化できます。仮に最高の感覚で漕げた日があったとしても、次の日には失われていて、また取り戻そうとしさらに良いフォームを求めるのが技術や感覚というものです。ですので、常日頃からRowingイメージを養いましょう。

感覚イメージは日があくととにかく忘れがちです。そして、コーチでなくともRowing選手であれば(漕手はもちろんCOXも)、フォームを見て、身体力学、感覚における「質」を見抜いて評価し自ら表現できるようにしてください。良い感覚イメージができてきて、視覚イメージに頼らなくて済むようになった場合は、内的感覚だけでフォームを進化させていくようになれると良いでしょう。





2.デンマーク代表クルーのキャッチポジション
※2015年の記事ですので、話題や例、資料などががやや古くなるかもしれませんがご了承ください。
古いと言っても、世界ベストタイムを達成したLM4-5'43のクルーと、LM2X6'05のクルーのお話です。今とりあげることに新鮮味は全く薄れません。

具体的には、私はやはりデンマークLM4-クルーのキャッチポジションをおもに参考にしています。もちろん他の国も参考になりますが、日本人に向いているフォームとして下半身を重視しているデンマークスタイルを推奨したいです。(あくまで私の個人的な考えですが)

彼らは、キャッチの姿勢で体重を乗せていてレンジも良くとれ、なおかつキャッチだけでなく脚を主導的に使うための低いポジションを基本にしており、フィニッシュまでしっかり体重が効いています。脚が終わってから腕を強烈に引き付けることができるのは「脚で押してからハンドルをフィニッシュ」させようとしているからです。脚が終わっても体重が利用できるので体幹、腹筋が効いてハンドルが一気に加速し爆発的な出力ができます。実はハンドルではなく艇が加速しています。いわゆる、最後までフィニッシュを押せています(用語としては、私の場合「ファイナル」でも「フィニッシュ」でも同じとして使っています)。日本で伝統的に言われるボディスイングはほとんど見られない代わりに、脚が常に効いていることで下半身主導での強いドライブを可能にしています。

私は、脚→上体→腕と使って「オールを引く」という考え方はナンセンスだと考えており、そもそもハンドルに力をかけるイメージでは故障につながると考えます。見た目は確かにそうともいえますが、その形を意識する勘違いを生みやすい表現と考えます。
キャッチ~ミドル~フィニッシュまで脚→脚→脚とすべて脚を使います。下半身主導だからこそハンドルが勝手についてきます。下半身主導だから体重が効いて体幹や腹筋(腹筋というか大腰筋などの腸腰筋ですが)といった強大なインナーマッスルが生きます。特にフィニッシュで生きてきます。その結果、置き去りになったハンドルが信じられない強さで引きつけることができ、艇の素晴らしい加速につながるのですが、下半身主導だからこそです。すべては脚が効いたキャッチからの体重がもとになっています。フィニッシュまで脚を使えば体重を生かしたデンマークのような豪快なドライブが可能なのです。

デンマーククルーは「俺たちの大腰筋すごいだろう」と言ったとかなんとかいう話を聞いたことがあります。伝聞なので真に受けないでいただきたいですが(笑)。シックスパックの腹直筋が重要ではなく、大腰筋などのインナーマッスルが日本人は弱すぎると思っています。体幹、体幹といいますが、アウターではなくインナーの筋力をいかに強く大きく太くするか。アウターの骨格筋ももちろん重要ではありますが、外側をゴツゴツと硬く大きな筋肉で覆うのではなく、内側から充実した身体を作りたいものですし、ウェイトトレーニングよりも、自重を使いなおかつ重い艇を強く動かしより加速しようとする乗艇トレーニングがボート選手には最も有効なのです。

もちろん脚が効いた上で体幹その他や上体の動きは連動しますが、とにかくキャッチからフィニッシュまで体重が効いていることが何より重要です。体重を利用し、脚や骨盤周りの力を使って上体を動かすようにして「艇を動かさなくてはいけない」。上体が単独で、腕が単独で艇を強く大きく動かすことなどありえません。体重が浮いて脚が効かないドライブはフィニッシュでの加速、走りを生み出すことができません。

「低いポジション」というのは、簡単に言えば頭の位置がやや低く、腕と脚のレンジが長い姿勢です。2014世界選手権などでもデンマークLM4-クルーはライバルのニュージーランドやイギリスと比べると頭の位置が低く、その代わり前後にワイドな姿勢で漕いでいることがお分かり頂けるでしょう。身長はほとんど変わらないのに姿勢によってずいぶん印象が変わるのがこうした座り方です。この座り方については後述します。
ぜひ2014世界選手権のLM4-Final Aを参考ビデオとして繰り返しご覧ください。スイープもスカルも、男子も女子もすべての日本人選手の方に参考にしていただけると思います。(World Rowingにて視聴ください)


デンマーク世界ベスト5'43クルーのSヨルゲンセン、3バルソー、2ラルセン、Bヴィンターの2015年トレーニングビデオがありました。こちらも参考にどうぞ。
https://www.youtube.com/watch?v=wP-qrMriKb8&t=3s
動画URLはこちら





3.下半身の使い方、骨盤・股関節の重要性
ここで、下半身の重要性についてふれなくてはいけません。
ほとんどのスポーツにおいて、下半身をいかに使えるかというのがパフォーマンスを決定づけます。例えば野球、ゴルフなどは体重を利用した下半身からのスイングができていないと良いパフォーマンス(ボールのスピード・飛距離・軌道・コントロール)が発揮できません。テニスやバレーボールなども肩関節の使い方も重要ですが腰の回転や切れといったものが必要になります。サッカーやあるいは基本となる走る動作や立ち動作さえ、すべて下半身、おもには骨盤を意識的にうまく使えるか否かが要となります。

ボートでは、腰が入った姿勢でないと、腰を痛めます。重い物を持ち上げたり担いだりする仕事は何でもそうですね。ここでいう「腰」とは、痛めやすい部分の背中の下部ではなく、「骨盤」と「股関節」のことです。(背すじを張る、腰を立てる、ではありません。こうすると下半身が連動せずボートでは余計に腰痛を招きやすいので絶対に注意してください。)「骨盤」「股関節」が効くと、必ず体重を足に感じます。
よく言う「腰が入る」「腰を入れる」というのは、骨盤と股関節がきちんと使えて、大きな筋力を発揮し、体重をエネルギーとして利用しているかどうかです。そして同時にここは、最も強く持久的な筋力であると同時に、身体の重心であり身体動作の起点となる場所。身体操作のすべての中心が骨盤、そして股関節の操作と感覚にあります。

仮に体重60kgのあなたが、ゆかに置いた重い物(仮に30kgのおもりとします)を持ち上げる時、上体を前にかがんで上体の力だけで持ち上げるとすると、これは腰に来ます。上体は、単独で重さを挙げられるようにできていないのです。このとき、足は体重が浮いています。しかし、脚を曲げてしゃがみ、上体をリラックスしてこの30kgを脚の力で持ち上げます。おもりに指をかけて、骨盤と股関節を意識して、脚で立ち上がれば楽に挙げられます。背筋を起こす力や肩にとって30kgはヘビーでも、脚にはさほど重くない。
上体と重さを一体化させ、合計90kgの体重としてももなどの脚の力で支えます。足の裏にはこの90kgをゆかから感じています。これが、Rowingの負荷の考え方であり感覚です。ハンドルの重さを上体の力で引くことはありえません。最初から上体で力を作ろうとするのも違います。脚で重さを挙げます。骨盤、股関節のポジショニングを通じて、脚の力で、足の裏に重さのすべてを感じます。その結果として、指にかかった重さもまた感じることができます。上体につながり一体化しているからです。


骨盤のしくみを図解で見てみましょう。骨盤の中心に位置する仙骨(脊椎の一番下の中心軸)がすべての要となり、周囲の2枚の寛骨(おもに腸骨)とそこに接続する股関節によって足から体重の反力を得て脚や臀の筋力で強い力を生み出します。

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ピップ製品情報HPより(あまりいい画像が見つかりませんでした。ネットから拝借してきました)


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石川はりきゅう整骨院さんのHPより(模型だと思いますが、こちらがリアルで分かりやすいでしょうか。女性の骨盤はもう少し大きくなります)


例えば野球では昔から「ピッチングは下半身を使って投げろ」「バットスイングは下半身が重要だ」と教えられ、今に伝わってきました。しかし、プロ選手でさえ理想的な動作ができている選手は決して多くありません。下半身がうまく使えていないと、いわゆる「手投げ」「手打ち」と言われ、全身を使った強いパワーでボールを投げられず、あるいは脚や骨盤まわりの強大なパワーが打球に伝わりません。そのように人間の身体構造に合わない身体の使い方をする中で、無理に強さや速さを求めて繰り返すと、故障の原因になってしまいます。
野球や投擲競技、ハンドボールなどで「手投げ」にあたる投球スイング動作、野球やゴルフ、テニスなどで「手打ち」と呼ばれる打撃スイング動作、こうした上肢主導で下半身と連動しない力弱く効率の悪い動作。ボート競技では「手漕ぎ」と呼んでよいでしょう。
この「手漕ぎ」になってはいけないということです。何度も言いますが、力弱くて疲れやすく艇も進まず、ケガのもとです。





4.キャッチでの強い姿勢
ボートの初心者~中級者あたりでも陥りやすい弊害。それは、オールの弧を描く軌道に腕から身体ごとついていってしまうことです。
オールにつられるとどうなるか。スイープでは俯瞰して見ると上体も下半身も曲がっていて、キャッチでインサイドに突っ込み、盛大にキャッチで止まり、アウトサイドに逃げながらドライブをし、フィニッシュで著しく上体がアウトにはみ出し、ブレードが抜けないので外へ下へハンドルを引き下げます。これでは全く艇が動かせないどころか、バランスも漕手の動きもぐちゃぐちゃです。
スカルでも同様で、キャッチに向けて前へと腕や肩を突き出していくので、思い切りブレードが止まり、キャッチが戻ります。ブレードが深く潜り、ハンドルを引き落とすドライブになるためにうまく艇が動きませんし、やはりキャッチでブレードが固定できないとフィニッシュは抜けにくくなり、良いバランスもリズムも作ることができません。

このような効率の悪い漕ぎを続けても、それなりに水中が強ければ艇速がそこそこ出たりもするのですが、チャンピオンの漕ぎにはなりません。脚で進められないことは上体への負担が集中し、脚が効いていないのになお強く漕ごうとすることは腰痛などの故障につながる漕ぎとなってしまいます。
ハンドルに対して力んではいけません。脱力は、すべてのスポーツや身体動作に共通する一流のパフォーマンスへの道です。一流のアスリートは、最高のパフォーマンスにおいて脱力ができています。身体の各部位を部品のようにバラバラに分けて使いながらも連動してつながり一体化しています。体重のかたまりを脱力のもとに分けたりつなげたりと自由自在にコントロールします。すべて、身体がリラックスできているからですが、同時にハードな中でも楽しくプレーできる状態でもあります。


ハンドルの弧の動きに対応するには、身体と手が別々に対応するイメージを持ってください。
スイープであれば、ミドル~フィニッシュ~ハンズアウェイでは、オールから見て身体のアウトサイドをハンドルが動きます。ハンズアウェイで身体から離し、腕をまず送り出します。オーバーラップの関係上、一度ハンドルは身体の外にはみ出します。これに身体がついていかないことが第一のポイントです。身体はあくまで重心、下半身(骨盤や下腹部)が艇の中心をキープしなくてはいけません。身体はフォワードでもキャッチでもドライブでも常に脚と連動します。


外回りした腕が今度はスライド中にボディと一緒にフォワードし、スライド半分過ぎたかどうかのところで腕だけインサイドに向かいますが、「腕は前に突っ込まないでください」。スライド中にボディ(上体)をインサイドへ向けて回転してください。回転軸は下半身、ここでは仙骨を中心に上体はインサイドへだいたい60度~50度斜め前方を向きます。上体はインサイドを向くのですが、下半身で回っている感覚が第二のポイントです(スイープ限定)。
よく「ツイスト」という用語が使われますが、ねじられ引きつる感覚を想起させるので、以前私も少し使いましたがこの言葉はやはり使わない方がいいと思います。キャッチ姿勢はねじる・ひねるのではありません。私の感覚では「回転」なのです。仙骨を中心軸に、下半身の回転でキャッチポジション。下半身で回るとくるっと軸回転ができてとてもスムースです。海外トップクルーのスイープ選手をよく見てください。正面や斜めアングルからのカメラ視点で、立体的に感覚をイメージすることを私が強調するのはここです。
下半身と頭が正面を向き、上体だけがインサイドを向いているとも言えます。
上体が向いたインサイドが正面で、下半身と頭を身体のアウトサイドに回したとも言えます。

デンマーク2012LM4- キャッチポジション
↑これはロンドン五輪デンマーククルーですが、2014年のいい画像が見つからなかったのでこちらをご覧ください。
ご覧のように、バウサイドの2人は上体が斜め前方のこちらとまるで正対しているように見えます。しかし仙骨を軸に回った下半身が艇の中心線を向くことで、両股関節に体重が乗ります。この感覚が重要です。
ちなみに、脊椎を軸に上半身や肩が回るとも言えますが、私の感覚では下半身で回るイメージなのです。両肩、両股関節をスイープでもきちんと使えます。両股関節均等に強く乗せることで、それを元に両肩(両ワキ?)で強くつなげられます。

スイープだけではなくスカルも、真横アングル以外をもっと見ていただきたいのです。スイープの片方サイド対応、スカルの両サイド対応、どちらも真横以外を見ることで下半身のフォームや動きが重要であるというのが直感でわかってきます。
斜め前のアングルは、立体的なイメージ作りに役立ちます。真正面は、体重の乗せ方や艇の動きが分かりやすいです。感覚イメージは、3Dイメージが基本です。立体的なイメージを作ることで、実際に自分が漕いでいる際の前方(スターン方向)を向いたときの感覚を作り上げます。漕手の皆さんは、この前を向いた感覚で必ず身体を動かすわけです。あらゆるスポーツ、身体動作でそれは同じことですね。


俯瞰すれば、ストサイの場合、下半身や脚の向きは↑、キャッチ姿勢での上体の向きは↗、キャッチ方向は→です。
バウサイなら下半身や脚の向きは↑、キャッチ姿勢での上体の向きは↖、キャッチ方向は←です。
スカルなら、下半身や脚の向き、そして上体ももちろん↑、キャッチは左右に開いて← →です。↖ ↗だと前に突っ込んでしまいます。↑というスライドによって艇が↓に近づいてくるので、ハンドル軌道の感覚的には↖ ↗になりますが、腕をサイドに動かして開くイメージは← →です。スイープも両サイド同じくです。

第三のポイントは、このようにスイープもスカルも一番横に遠いところでエントリーしてください。前ではありません。前でキャッチしようとすると上体や肩が乗り出してしまって、反動で戻ります。
「キャッチが戻る」「キャッチが遅れる」この原因は、タイミングだけではなくフォームに原因があり、またキャッチのイメージでも大きく変わります。
前レンジはシートスライド分とリラックスして自然に肩から伸びた腕のリーチでじゅうぶん取れているので、横レンジでキャッチの振り角を確保するのが大事なところです。オーバーレンジにならないよう、シートスライドのトップでキャッチすることが重要です。フォワードの前方到達点、つまりトップでのキャッチ位置は、ハンドル到達点よりもスライドトップを下半身で感じるのがよいでしょう。艇のフォワードを下半身の感覚で感じて、艇を止めないタイミングでリズムを合わせキャッチします。同時に、最も強く脚が出力できる股関節のポジション、リラックスしてすぐ反応できる上体を作っておきます。


そうすれば、上体の戻りもなく、下半身でのキャッチができます。キャッチというのは腕から手繰って引っ掛けるものではなく、スライドトップでブレードの重さを落としてから脚で艇を押し、ブレードが入っているのでハンドルが逃げないよう指関節で掴まえることがキャッチです。じわっと耐えなければいけませんが力みで対応してはいけません。
脚で体重を効かせドライブしようとしてもハンドル=オール=ブレードを動かなくするようにその体重とパワーを閉じ込めようとして逃がさないことがサスペンションと呼ばれる状態であり、行き場を失ったたいへん強い股関節からの力が艇を立ち上がらせ、クラッチ回転を通じて艇の重さを駆動する力へと変換されます。
ハンドル=オール=ブレードが動くのではなく、動くのはクラッチを介した艇です。艇と身体がつながっているか、出力に応じて艇が動いているか、ここをきちんと感じるのがRowing上級者です。

脚でキャッチすることで、「手漕ぎ」ではなくもちろん脚からのドライブが可能となりますし、下半身がおもに負担できるために上体の過度な負担がなくなり腰への負荷は常に軽減されます。重さには脚で反応する。両股関節にしっかり力が乗って、脚と股関節伸展で立ち上がるドライブをすれば腰痛は起こりません。上体が変に力もうとせずテンションを一定に保ち、脚の出力をうまく上げていくことで、フィニッシュに向けた自然な加速として脚の力を艇にダイレクトに伝え続けることができます。





5.脚の力を受け止める座り方のポジション
また、基本的な座り方。これがボートではやはり重要で、私は初心者を教えるとき必ず座り方を強調するのですが、以前のブログにも書きましたが、リラックスして床に体育座りをする感じです。背中は丸くリラックス、リラックスして体重を床に預けると、自分の体重をお尻から感じます。このとき重心は下腹部あたりに落ち着いているはずです。
(ちなみに、「体育座り」を調べたら昔は「囚人座り」と呼ばれ必ず腰を痛める座り方などという怖いことが書いてありました。じっとしてずっと座っていれば、確かに腰には負担がきます。しかし、艇上では脚を使いドライブで毎ストローク体重を足にかけるので、Rowing動作の中では心配する必要はありません)

それから、腰を痛めないもう一つは、骨盤の下部である「坐骨」で座り、体重を受け止めます。前傾をつけようと上体を前に出すと、ゴリゴリする左右の出っ張りです。この坐骨で座り、フォワードではシートの左右の穴に引っ掛けます。
キャッチ姿勢をとろうと腕を前に伸ばすと、肩が疲れるので肘のあたりをひざに置いて腕の重みを下に預けます。この感覚も重要で、フォワードからキャッチポジションにいたるまで腕の重みは垂れ下げておくというか下へあずける感じで肩をラクにしてください。
このようなサイトもありました。座り方にはうまく気をつけながら、下半身の強い力が出せて艇が安定する座り方をしましょう。
仙骨座りは危険


そして、座り方については骨盤の傾きでフォームが決まります。前傾したままフィニッシュはできません。フィニッシュからフォワードにかけ頭が骨盤より後ろや真上にあるときは、まだ「骨盤後傾」しています。キャッチポジションをとっていく際に、「骨盤垂直」→「骨盤やや前傾」となります。
最近は、キャッチポジションでも「骨盤後傾」ぎみの選手が多くなりました。理屈ではなく感覚を重視している選手が増えているのだと思います。上体の振り角度をあまり大きくとらず、そのぶん股関節が常に前方を向き、キャッチからフィニッシュまで長く体重を乗せ脚をきかせることができるフォームです。高校生のトップスカラーに増えてきたと感じていますし、2013年全日本選手権W1×優勝した、MY生命のS藤選手などはこのタイプになるでしょう。
いっぽうで、日本では依然として「骨盤から前傾」スタイルも多く、海外クルーでもさまざまなスタイルがあります。
最も艇速が出せるならそれぞれのスタイルで構わないと思うのですが、クルーで組むときにはドライブでの脚が効くポイントや長さにやや違いが出るので、できれば統一したほうがいいでしょう。個人差を認め許容範囲をもった方がよいと思います。しかし、どちらにも対応でき、自分のイメージに固執しなければ柔軟に、Rowingイメージはクルーで共有しましょう。


ここからは私の個人的な意見が強くなります。以前、他競技の影響でボート競技でも骨盤は「前傾」せよと言われていたと思います。
私は以前からこれは感覚的におかしいと感じてきました。野球やランニングその他、ほぼすべてのスポーツでは骨盤前傾が正しいと教えているのがほとんどです。しかし、ボート競技は「骨盤後傾ぎみ」でも大丈夫です。なぜか。

答えは簡単で、ほとんどのスポーツが立位で行うのに対して、ボートは座位だからです。座って力を出す特殊なスポーツであり、フォーム的には足をかけて体重をかける接地面(=ストレッチャー)の方向は骨盤の前方にあります。立位の動作においては足の接地は下方、あるいは後方へ押し出すことで股関節の方向は斜め下の後方を向く骨盤前傾が正しいポジションです(本当はボートと同じく接地の足は地面を押すのでなく力強くグリップするだけです。押しているように強い力を感じるのは反力です)。
しかしボートにおいてはストレッチャー角度の方向を股関節が向くように座らなければ(キャッチでポジションをセットしなければ)効率的に体重を乗せることができないのです。

他競技のように骨盤前傾をしてしまうと股関節が力強く使える方向がストレッチャーとは違う向きになり、なおかつ脚のレンジが短くなります。ボートで骨盤前傾を指示することは、立位で走る際に骨盤を地面と平行に倒し、上体を下へ向けて走れと言っているようなむちゃくちゃな姿勢を強要するようなものです。股関節を前方に向けるために骨盤後傾ないしは骨盤垂直くらいにしてRowing動作を行うことで、「膝が高く脚が長く効くフォーム」と「股関節が前を向き、なおかつ上体の体重を股関節にあずけるキャッチポジション」の双方が得られます。

骨盤後傾と言っていますが、本当にわざと上体角度を後傾したままスライドしてキャッチするのではありません。お腹のラインに見られる上体の傾斜と、骨盤の傾斜は違うということなのです。
私の言う骨盤後傾とは、股関節が前を向いていて体育座りをしている感じです。お尻の穴が前を向いている感じです。そのままキャッチをとろうと前に伸びれば、上体やお腹のラインは前傾しますが、骨盤自体は垂直かやや前に引っ張られている程度までがせいぜいです。股関節やお尻の穴が下を向いていると、骨盤前傾です。
骨盤後傾ぎみで漕ぐ場合も、骨盤の下部、「坐骨(ざこつ)」で座ってください。かつての国産艇でなければ、今の艇はシートに必ず2つの穴があいており、この穴に坐骨をはめるというか引っ掛けてシートをスライドして脚を持ち上げたたんでいきキャッチポジションをとっていきます。

キャッチポジションをとるために肩と腕を伸ばしリーチをとると自然に骨盤が前に起きて引っ張られます。感覚としても見た目にも90度かそれよりやや鋭角に前へ引っ張られると思います。このような、股関節が前を向いたまま骨盤後傾を基本にしてキャッチポジションをとろうとすると、上体を前に出そうとしても自分のももが壁となってじゃまをするので、頭がひざやすねをなかなか越えられなくなります。下半身に体重がたまるので、よく脚を折りたたんで股関節中心に出力する準備をしてください。
骨盤前傾だと頭の位置がひざを大きく越えて前がかりに突っ込んでしまうので、体重を股関節にためにくいのです。どのスポーツもそうですが、股関節に体重を乗せてためられないと、上体に頼ったパフォーマンスになってしまいます。上体が力みやすく、乳酸がたまり疲労しやすく、重心の上下動も激しく不安定です。
Rowingでは水平の動きとリラックスした動作が美しいのです。そういうこともあり、私は骨盤を前傾にセットするような姿勢ではなく、とにかく感覚として最も脚と股関節が効くキャッチポジションというものを大事にしていただきたいと思います。





6.大きく漕ぐ
速いクルーの共通点に、キャッチ前の迫力があります。これはボートをずっと見てきたコーチやOBなら伝わる速いクルーの印象だと思いますが、キャッチの瞬間、「ぐわっ」とクルーの体重が一気に迫るまさに迫力があります。キャッチからフィニッシュまで、体重が長く乗った大きいドライブの条件です。速いクルーは、人が大きく見えます。この体重の乗りを、かつては「ギャザー」という用語で言い表していたと思います。あるいは、「乗り込み」といった用語もよく聞きます。
やはり、上体の体重が下半身つまり骨盤~股関節を通じてストレッチャーに乗り、深い脚のレンジでスクワットする直前のような下半身の予備動作。それと同時に、スライドによって艇がスーッと漕手に引き寄せられる動きとミックスしてこのような用語が生まれたのだと思いますが、「体重」と「パワー」がフォームには重要で、下半身と連動したフォームが今言ってきた座り方にあると考えています。

この「体重」と「パワー」は目に見えないレンジです。目に見えるレンジだけでなく、こちらをもっと重視してください。
キャッチポジションにおいて、下半身からどれくらい体重が乗っているか。結果的にストレッチャーに体重が乗るわけですが、フォワードの時点でストレッチャーにすでに乗っているのはありえないことで、「ストレッチャー=艇」が向こうからやってくるイメージは重要ですが、実際にはフォワード中は股関節に上体の重みを預けます。

腕を前方に伸ばし、上体と骨盤周りのすべての重み(体重)を、脚に、股関節を通じて乗せていきます。フォワードでリラックスするのは脚に体重を後ろから前方へ乗せるためです。そのジョイントが股関節。腕がそのリード役となるために、リラックスした重みが前方へまるで自由落下するようにフォワードしてください。その落下の重みすべてを受け止めるのが、キャッチポジションなのです。ストレッチャーという地面に落下した体重を、キャッチ~ドライブで利用します。
腕は前に放り投げるイメージでもいいですし、腕の重みもボディの重みもすべて下半身にたまるようにスライドしてください。

フォワード中の頭の中はとてもシンプルで、最大体重と最大出力を股関節から発揮する、それだけを考えてキャッチポジションをとろうとしているだけだと思います。股関節からキャッチの重みに対応すべく、ためるイメージがあるかと思います。そして脚の押す時間が少しでも長くなるように、前で艇を立たせて長く強く動かす。ドライブからフィニッシュにかけてはさらに加速のために重さを乗せる。それが大きな漕ぎであり、見えないレンジを大きくすることだと思います。

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↑このデンマーククルーのキャッチ前に迫ってくる迫力、下半身から表現される大きさ、見習いたいですね!体重の作用で、艇が一気に吸い寄せられているようです。





7.キャッチポジションの図解
図を使って、今回のポイントをおさらいしたいと思います。
やはり、ビジュアルで見ないと文章だけで伝えるのは難しいですね。
細かいニュアンスも入れつつ、これまで見てきた要点を図で説明します。都合のいい写真はありませんでしたので、自分でエクセルを使い描いてみました。イラストの技術がありませんので、マウスによる手描き(!)なのでところどころ下手くそですが、雰囲気は伝わるのではないかと思います。
自分の身体で感覚を確かめながら、見ていただけるとありがたいです。

フォームの見え方以上に、感覚が重要ですので、あくまで参考程度として見てください。しかし、私個人の推奨が入っていますので、取捨選択してください。形だけの真似も、感覚を崩すかもしれませんので。
また同時に、感覚を確認するために視覚的なフォーム確認も必要になるでしょう。良い感覚に変えて、さらに自分の中で最高の感覚イメージを創造してください。




●5章の補足、骨盤の傾きによるフォームの違い


①骨盤後傾ぎみ
①骨盤後傾ぎみ
頭がかなり低く座高が低く見える姿勢で、股関節が前を向く。腕・脚が長く見える。
ひざがかなり高くなる。(ひざの高さはもちろんストレッチャーの高さによっても変わります。デプスを上げればさらにひざが高くなり脚が長く見えます)
横から見て、頭の位置がすねよりもだいぶ後ろ。
お腹のラインに見られる上体の傾きと骨盤の傾きはまた少し異なる。この2つの傾斜は別物。
シートに対し背中が後ろか前かが骨盤の傾きを見るめやすとなる。
重心が後ろ寄りにあるので実は脚が強く長く押せる。股関節にじゅうぶん乗せるが、重心後ろというのは大事な感覚。力なく後ろにもたれるのとはまったく違い、後ろにある重心を股関節から前に乗せるのがこのフォームのポイント。
後ろ重心で脚で後ろに押すのに、前の上体前傾を解かずにがんばる、この状態がサスペンション、いわゆるぶら下がり。
脚の力で後ろに骨盤と上体の重みを押し、後ろに艇を動かすのがボート。しかし上体を後ろに倒すとまた体重は生かせない。キャッチ上体を前に残し骨盤・体幹を脚で押す。フィニッシュは骨盤を開きさらに骨盤後傾しつつ、上体の上では頭を前に残し後傾を食い止めるのが強いフィニッシュポジション。フィニッシュはまたの機会に。
また、重心が低く、艇の揺れが少なく安定する。
これでキャッチポジションとしてもよいし、さらに圧縮してシートや上体を出すこともできる。ももはかなり高く持ち上がる。
①では無理して前のレンジをとろうとはしていない。



②骨盤垂直
②骨盤垂直
骨盤の位置では前に傾けてはいないが、肩と腕を伸ばして骨盤が前に引っ張られており、後傾から垂直へと起きている。①と比べ、後ろにもたれていた背中がだいぶ前に移動。個人的には②も含め、①~③までを推奨。現在のJAPANは①~④までさまざまですが、①~③が多いと思います。日本のトップと世界のトップ、よくフォームを研究してください。
漕ぎやすく、最も艇速を出せるフォームと感じていれば、それが優れたキャッチポジションとなる。



③骨盤垂直か、やや前傾
③骨盤垂直か、やや前傾
②よりもさらに腕を伸ばし、頭と背中がより前へ引っ張られている。そのために骨盤も前へ引っ張られ、それが股関節に乗る。昔からRowingで言われている、つま先の上の鼻。すねの上の頭。
上体の前傾をあまりつけないこのフォームでは下半身の圧縮はこのへんが限界となり、股関節からじゅうぶん体重が乗っている。①②より頭が前に出て上体前傾が深いのは、骨盤前傾しようとしているのではなく、骨盤後傾から前に引っ張られているだけである。
下半身圧縮もポイントで、脚がよりふところに収まっていて脚が折りたたまれ身体に近い。脚に身体が寄るだけでなく、脚を身体に引き込んでいる。身体と脚を閉じて近づけ、開いて遠ざける。股関節屈曲して、伸展する。これがRowng動作。

体育座りから上体をいっぱいに前に出そうとして、①→②→③のように前方のレンジを大きくするが、頭がすねを越えることはない。起点が骨盤後傾だからであり、背中の下あたり、後ろに重心が常にあるからである。体育座りから前に伸びてるので、腰を立てて頭から前に突っ込んでいないからである。
本当は、後傾がどうとか考えるのが大事ではなく、とにかく感覚が重要。そして見た目からも感覚のチェックができる。
ちなみに①の骨盤後傾ぎみのままでもこれくらいにももと上体が接するように脚を圧縮し、上体前傾で前をとることも可能。個人的に①と②は骨盤傾斜そのままでも、③くらい脚を身体に近づけ圧縮すると体重がドライブ前半から効くと考えます。
また①と②のようにももと上体が接しなくても、スイープならばサイド対応をしてキャッチポジションをとると、アウトの脇腹とアウトのももが接して見える。
個人的には③が好きです。この背中の下に重心がある感覚のまま(本当の意味での重心点は下腹部あたりですが)、できるだけ下半身を圧縮し前に上体前傾をとり、いっぱいにレンジをとるフォームが合理的だと思っています。デンマークのイメージです。


④骨盤前傾
④骨盤前傾
③とは少し違う。骨盤から上体を倒しており、前がかり。しかし、よく見られる一般的なフォーム。もっと上体を起こす場合もある。
上体を前に引っ張るのではなく、上からかぶせる感じであり、前のレンジを大きくとる意識がある。
脚を身体に近づけるのではなく、ストレッチャーへ上体から乗ろうという感じにも見える。とにかく③との相違点は、キャッチポジションへのアプローチが横から見ると←ではなく、↙である。
おじぎをするようにキャッチで頭が下がりやすい。また、ももが上体をじゃましないので、頭がかなり前に出やすくなる。頭を基準に動いている。アスリートは頭が動作の基準になるのではなく、身体の中心や重心、丹田が動作の起点・中心にして身体を動かしたい。
ストレッチャーに斜め上から乗せようとしがちだが、股関節の意識が甘くならないようにしたい。
前後の見た目は大きく漕げるが、ドライブ後半強くするには工夫が要る。
上で(上体主導で)漕ぐのではなく、下で(下半身主導で)漕げるようにしたい。



⑤骨盤前傾、かつ腰を立てる
⑤骨盤前傾かつ腰を立てる
これは故障しやすい危険なフォーム。しかし、日本では今でもよく見られる。
頭の高さ、座高が極端に高くなり、ひざが低く、シートスライドが小さい。骨盤の上を上体が扇形に動く形になり、上下動激しい。重心高い。
背すじを突っ張ってしまうので、下半身のドライブと連動しなくなる。肩も力みやすい。漕ぎが短い。
椅子に座ったり、背すじを伸ばし姿勢が正しいと言われてきた人に多いと思われる。立位や正座であればきれいな姿勢となるのだろうが、Rowingでは相性が悪い。Rowingは、シートに長時間座るのが目的ではない。
自然に背中を丸くして、リラックス。後ろで重心を作って、下半身から、股関節に対して体重を前に乗せる。この感覚には決してたどりつかないフォーム。ドライブの股関節伸展も難しく、膝伸展になりがち。
足と上体が別々に力を出すようになってしまうと、漕ぐたびに腰を悪くする危険がある。この姿勢でうまく漕ぐのは本当に難しい。



⑥骨盤前傾、腰を立てつつ一生懸命前をとる
⑥骨盤前傾かつ腰を立て、前をとる
⑤で短いと指摘され前をとろうとするが、じゃまする空間がなく、上体がかなり乗り出す。これでは脚主導のドライブは難しく、多くはキャッチで上体が起きてしまう。尻逃げの癖にもなりがち。⑤と⑥は、座り方を見直し、よくフォーム研究を練ることをすすめます。



再三言っていますが、見た目ではなく感覚が重要です。上のフォームのように見えても、うまく艇を進める選手、進められない選手ともちろんさまざまです。
どうしても説明するには静止した図を用いるわけですが、フォームはスタティック(静的)ではなく、ダイナミック(動的)で感覚的にとらえるべきです。そのようにイメージしてください。

ここで示したフォームは大まかなもので、①~③でも背中の曲線があまりないバージョン、もっと上体を前に出すバージョン、上体前傾があまりないバージョン、上体を起こすバージョン、そのほか脚をもっとたたんで下半身を圧縮するバージョン、スライドが深いバージョン、浅いバージョンなど、本当にさまざまです。フォームは個性があり、骨格や身体つきなども個人差があるためまさに十人十色です。
フォームを画一化する意図は全くありません。フォームや骨格・関節ポジションを考えるための参考程度にお読みください。




●キャッチポジションの視覚イメージと感覚イメージ(真横)

キャッチポジションで体重を乗せる
キャッチポジションで体重を乗せる
赤線の白ヌキ部分が股関節。この股関節から体重を乗せてください。体重とは骨盤から上の重みです。
リラックスした上体・腕・頭など上半身がひとかたまりとなった重みをしっかり股関節に預けるようにします。



スイープ(左方向)
股関節体重、ストサイバウサイ(真横視点、左方向)
スイープでは上体がオールと正対するくらいにインサイドを向いています。
しかし下半身は上体と違う向き、艇の中心線を向きます。必ず両方の股関節に均等に体重を乗せます。
キャッチではその股関節に乗った体重とパワーを、足の裏、ストレッチャーにかけていきます。



スイープ(右方向)
股関節体重、バウサイストサイ(真横視点、右方向)
どちらからの視点も同じですが、このキャッチ間際の回転動作が私はスイープの身体の使い方の楽しさと感じています。
身体が下から頭を追い越していくように急激とも言えるほど体重を乗せるニュアンスです。(もちろんスライドは加速しませんよ!)骨盤~脊椎を軸にボディや肩や腕が回っていきます。フォームがしっかりしていれば、すべて両股関節に乗ります。脚が効くことでとてもパワフルです。


スカル
股関節体重、スカル(横視点)
同じくスカルももちろん股関節に乗せて、全体重を足の裏に感じます。
スカルの醍醐味は、左右対称、全身連結の調和。ブレード、クラッチに伝わる力が身体の中心ですべて等しくつりあう感覚。自己完結できるゆえに、コントロールが重要です。しかし、下半身を基本にパワフルに体重を使うことは、スカルもスイープも変わりません。



●キャッチポジションの視覚イメージと感覚イメージ(正面)


スイープ(ストロークサイド)
ストサイのキャッチポジション(正面)≪青矢印≫キャッチでストサイは上体がオールと正対するくらいにインサイドを向いています。肩とオールが限りなく平行になるくらい、かなり回るとデンマークのようなキャッチができます。
(実際にはキャッチでのオール振り角は上体の向きより鋭角だと思いますが)

≪赤矢印≫しかし下半身は上体と違う向き、艇の中心線を向きます。上体ではなく股関節に体重を乗せながら。必ず両股関節に体重を乗せます。
両腕が遠くを狙いインサイド、艇の外にはみ出すのは当たり前。特にインの肩は大きくはみ出す(はみ出さないと窮屈)。両脚均等で下半身が艇の中心ならば重心が偏ることはない。これを見て、上を意識するのでなく、下半身の感覚を意識する。
両脚で体重を乗せるキャッチとドライブができ、下半身重心が艇の中心線にあれば、スイープで腰を痛めることはありません。いわゆる艇のフラットも、フォワードからキャッチ、ドライブまでキープできます。
両股関節に体重がよく乗り、上体リラックス。キャッチポジションは、決してきつい姿勢ではなく、シートのトップでいつまでもとっていられる姿勢です。
そして、〇で囲ったアウトのグリップエンドが最も横に遠い位置でブレードを落としてエントリーします。(デンマークなど世界トップクルーはもう数cm遠くの外をとっている選手もいます)



スイープ(バウサイド)
バウサイのキャッチポジション(正面)バウサイも同じく。まったく対称で。
しかし、右利きが多い関係上、一般的にストサイよりは器用に回転動作、キャッチポジションができる選手が多いです。
キャッチ直前にくるっと身体が回り両腕はパッと内に入り、アウトハンドはインサイド遠くを狙います。
上の図くらい横に遠くエントリーとれればじゅうぶんな振り角が得られ奥からのレンジとなる。
スイープのキャッチポジションではアウトの脚は開きがちだが、開き過ぎないことを推奨します。両ひざの間にアウトの腕が入るのが多数派で自然だが、アウトの脚を大きく開いて肩を割り込ませることでレンジをとろうとする選手も多く、個性なのかネガティブなのかの見極めは必要。自然な動作なので、多くは許容範囲。
正面から見た頭の位置も同じ。上の図よりだいぶインサイドに入っても許容範囲だし、頭が艇の中心になくてはダメだと強要することもない。すべては本人の漕ぎやすさと、感覚。そしてスイープ種目におけるクルー全体のバランス。
また、上体がインサイドに傾くのもある程度は許容範囲。しかし、アウトに傾くのは絶対ダメ。
鏡映しのように、こちらをストサイ、さきほどのストサイをバウサイにして感覚イメージ作るのもいいでしょうね。


スカル
スカルのキャッチポジション(正面)スカルでは上体と下半身は同じ向きなので、しっかり艇の中心をキープ。こちらも上体ではなく股関節に体重を乗せながら。
フィニッシュからいったん閉じた両腕を、エントリーではスライド最後にパッと外に(横に)開いて、一番横、一番外でキャッチするイメージです。あたかも翼を大きく横に広げるような、一番外の空間をとってくるような感じです。但し、ワキが開かないこと。
スイープも同じですが、シートのトップで、艇を戻さないように。下半身や艇と、エントリー動作は連動してください。
上の図くらいに開くと、だいぶキャッチの振り角がとれ、十分なレンジが得られます。軽量級トップ選手はこれくらいが標準のようですが(フランスLM2×Azou選手や男女LM2×など参考)、両サイドともこれよりこぶし一個分ずつ狭い程度でもレンジ十分だと思います。このあたりも選手によって個人差がありますし、フォーム感覚と柔軟性とリギング等によりさまざまです。(実際に一番遠くをとれるのは、もちろんエントリーの一瞬だけです。すぐに下半身からのドライブが始まり、ハンドルがついてくるので前から見るとすぐ腕がまた閉じる方へ向かいます。これはスイープも同じです)
肩はこれくらいリラックスして下がっていると、下半身主導でドライブしやすく、つながりやすいです。膝の高さに近づけるように肩を自然に下げて脚からドライブすると、全身連結の感覚が分かりやすいと思います。





8.まとめ
今回の話では、チームの理想とする漕ぎと全く違う内容を言われていると感じる方ももしかしたらいらっしゃるかもしれません。
あくまで、私が個人的にRowing動作の研究をしてきた内容であり、個人の見解に基づいています。何かのヒントとして、参考程度にお読みいただき、身体で考えていただき、感覚してくださればいいと思います。フォームは頭で考えても何も分かりません。
もちろん、劇的に漕ぎが良くなるきっかけとなれたならば、たいへん嬉しく思います。

フォームは、できないと難しいのですが、できるようになると本当に簡単です。
覚えてしまえばカンタンです。感覚イメージをなぞればいいだけですからね。考えないで、感じて動くとはこういうことです。

窮屈で動きにくい姿勢は正しいフォームではありません。スイスイとラクに動ける姿勢、ダイナミックで豪快、強くてはまる、無駄な力が抜ける、身体の中で矛盾がない。こういう感覚が良いフォームです。
うまく動けると、楽しいのです。


個人的に、最も強く下半身が使えている技術を追究していると感じ、デンマークのスタイルを推奨しています。
腕が長く、脚が長くのフォームを今のところ私は理想にしています。しかし、体格や骨格は個人差があります。その中でとにかく強調したいのは、形をそっくりにするのが目的ではなく、質・感覚を共有したいのです。動きの質が合えばいいわけです。
デンマークのほかにも、オーストラリアのスムーズで水平に動く美しいRowingサイクルや、ニュージーランドやイギリスのシンプルでオーソドックスなスタイルもいいです。フランスも好きです。ほかにも色々な良さがあるフォームやスタイルがあり、いいとこどりをすれば良いと思います。私自身は今、デンマークを超える漕ぎを模索中で、それを考えるのも楽しいものです。すごいすごいと称賛するだけでは勝てませんし、やはり日本がいずれ・・・と思いますからね。

世界一のデンマークやニュージーランドのクルーを参考にすることで、技術的には世界トップを意識することができます。テクニックとフィジカルは切り離せないものではありますが、技術で世界最高峰をめざすこと、これは可能です。
トップレベルの彼らの良い点をイメージして実践しつつ、さらには技術で彼らの上回るためのレベルの漕ぎを創造していく。デンマークやニュージーランドに、勝って世界一になりたいと思いませんか?私は日本ボートが勝って優勝に貢献したいです。そうやって高い技術目標も持ち、夢は男女で日本がエイトを出し、COXも乗って世界一になる。

日本人の強みは、研究熱心なところにあると考えます。
教科書的だったり、初心者向けの技術指南から脱して、世界を制するためのRowing研究がさかんになることへ、何かしらの足しにでもなれば幸いと思っています。
それこそ、日常の立ち動作、座り動作、歩く動作、ランニング、すべてが面白くなるのがスポーツの効用だと考えています。技術はエリートだけでなく、皆のものであるべきです。


また今回の記事の動機には、腰痛などボート競技におけるスポーツ障害、つまり怪我や故障を何とかできないかというものです。腰をこわしてボートが漕げなくなるのは本当に悲しい。腰痛を完全になくすことはできなくても、減らすことはできるはずです。
身体のメンテナンスの方法やケアの徹底も故障の防止につながると思いますが、やはりまず重要なのはフォーム。身体の構造に合った力の出し方や方向、感覚です。

腰痛の軽減には、やはり脚(leg)がきちんと使えていること。足(foot)に体重など全ての重さを感じること。上体だけで力を発揮しない。身体をしなやかに、ゆるめて、硬くしない。安定した艇の動かし方。重さをイメージし、重さに正しく反応、対応。
膝痛の軽減には、ひざまわりリラックス、脚の筋肉リラックス、足首も固めない。足を力かけて踏ん張らない。股関節からダイレクトに押し、ストレッチャーつまり艇とつながる。フィニッシュでひざを固めない、脚を突っ張らない、押してからゆるめる。海外や日本のトップクルーのフィニッシュからスライドにかけての脚やひざをよく観察してください。

自分の培ってきた技術のエッセンスをブログ公開するのは迷ったところもありましたが、人に知ってもらって初めて意味が出るし、何より腰痛や故障を減らすことに少しでも貢献できればという気持が強かったのです。



キャッチポジションについて説明するだけで、これだけの文章量を使ってしまいました。
できている人からすれば、「こうやって、これだけを意識して、こうキャッチするんだよ」程度で説明は事足ります。できている人にとっては、実にシンプル。必ずシンプルです。
しかし、物事が上達するには、分解して、例えを使い、まとめてシンプルに、これをスパイラルに向上させていく連続です。どうやってうまくなっていったのかといえば、分析して部分的に考えてから全体へ総合すること、そして試行錯誤や失敗を経てから質を向上させたのです。完成形は必ずシンプル。頭で考えず、身体で感じて動きます。
向上のスパイラルを上り詰めるいっぽう、完璧には常に辿り着かず身体と意識の変化の中において、いつも発展途上なんですけどね!それがスポーツのいつまでも続く楽しさです。

こんなことを考えつつ、ぜひ世界選手権のビデオ動画の研究をし、世界最高峰の漕ぎを参考にして見てください。
自分自身に眠る未知の感覚とコミュニケーションしながら。







この記事は、キャッチにおけるRowingフォームに特化した記事でした。
この翌年、漕手技術論シリーズを書いていろいろな技術についても書いています。先日も再掲載した漕手技術論をお読みになりたい方は、こちらをご参照ください。
「Rowingの技術考察」




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