今年の世界選手権を振り返るレビューシリーズも今回で完結です。
最後に、軽量級各種目を振り返りましょう。

どの種目もたいへんレベルが高く、激しい好レースの連続でした。しかしその中で、五輪から軽量級スイープ種目がなくなってしまったことでLM2-およびLM4-のレベルや出漕数、そして注目のいちじるしい低下はやはり否めません。LM8+などは世界選手権からなくなってしまっています!!スイープが好きな私としては悲しい現実、しかし私もレベルが低くなってしまう種目にはどうしても関心を寄せにくいのが本音です。特別これを見てほしいという注目に値する種目やレースを見つけられない限りは、みなさんの注目が集まる種目中心にお伝えしたいと思います。

代わって、軽量級はスカル種目が以前にもましてレベルが高くなった印象を受けます。世界の軽量級事情、このへんが大きく影響を受けていくでしょう。しかし日本もそこを意識しすぎて強化が偏りスカル偏重になりすぎるのは私は反対なんですよね。やはりスカルもスイープも並んで盛り上がってほしいと思います。
全然関係ないですがスカル種目にもCOX付き種目が増えてほしいですね~、個人的な願望としては。付きフォアに対応する付きクォド、そして付きペアに対応して付きダブルとかあってもいいかも!?付きダブルはあまり需要がないですかね(笑)。記号はLM2X+とかになりますね。





各種目レビュー③


男子軽量級編

LM1X
今大会、個人的に3大ベストレースのみっつめがこのLM1X決勝。いやー、すごいレースでした!思わず息が詰まるような激しくタフなデッドヒートでしたね。
私の推したポーランドのミコライチェフスキ選手や、ハンガリーのゲランボス選手、スロバキアのババツ選手は準決勝でかなり善戦しましたが惜しくもFinal Aに残れずでした。準決勝見ていた方、けっこうエキサイティングなレースばかりで、思わず力が入ってしまったのではないでしょうか!?ババツ選手なんて1500mまでトップだったんですけどねえ・・・。

決勝レースはスタートから激しいぶつかり合いといった様相。とにかく軽量級はオープンにもましてレートが高いですよね。
改めてみると、各国のRowingスタイルの特徴が際立って見えます。予想には入れていなかったスイスのミハエル・シュミット(179cm29歳)が素晴らしい実力の持ち主でしたがキャッチが正確で前から動かす日本人好みのスタイルといった感じ。それからアイルランドのポール・オドノバン(177cm23歳)は後半に向け出力と体重を乗せて加速するドライブ後半も重視する漕ぎ、そしてノルウェーのクリストファー・ブルン(175cm29歳)はさほど前後オーバーレンジせず無駄のない効率的な漕ぎの感じでストローク全域パワーカーブが一定の印象です。ニュージーランドのマシュー・ダナム(178cm23歳)、こちらはアイルランドほど後半を強調しないがつかんだキャッチを体重乗せて平らにドライブするというNZ代表に共通するシンプルなスタイルですね。NZは一本のストロークは雑な所もあるが出力が常に一定なので艇速変動は少なくレートの高さとイーブンペースというところにむしろ特徴があります。

しかしそのレートの高さはNZだけでなくどのクルーも特筆で、アイルランドとNZはSR38、スイスとドイツはSR37、ブラジルSR36。ノルウェーがかなり低くそれでもSR34。1000m過ぎのコンスタントでこのレートですからね。このレートの高さとコンスタントの強さで本領発揮したアイルランド・オドノバンがスイスをとらえ、第3でトップに躍り出ます。さらに加速するレース、第3でオドノバンは第1Qと同じ1'42のスーパー第3アタックを決めて一気にライバルを振りきりにかかります。これに対応できずスイスはノックアウト。ノルウェーのブルンも淡々とこれに追随しますがむしろ離されてしまいます。
そして以前からかなり注目していたNZのダナム選手が1500mまで5番手で上がれずかなり離されていたのですが、ラストで目の覚める鬼の追い込みを見せます。ここからです。ここからが世界のAファイナルでした。残り500mもあるのにダナム選手、SR42ですよ。3艇身離れていたトップのオドノバン選手には届きませんでしたが、前3艇をまとめてかわし2位に入ったのです。第4のラップは1Xで1'40。これはエルゴなら1'30くらいのペースだと思いますね。

オドノバン選手の中盤があまりにも素晴らしかったので、すでに大勢が決していた感じのレースではありましたが、こういうラストができるのが世界のラストスパートです。LM2Xも、LM4Xも、本当の勝負が第4に凝縮されていますね。こうしたスパート力を身につけて、なおかつ序盤およびコンスタントで優位にレースを運べる地力が必要なのですね。
オドノバン3'25-6'48、ダナム3'28-6'52。激しいスタート争い、ハイレートのコンスタントをしたうえで後半のスピードアップするレースに最後まで加速を続けラスト第4でベストパフォーマンスを披露でき、後半1000mが結果としてタイムが出せる。こうしたレースは、まずは有酸素能力が前提ですが、高いスピードと高いレートをキープできる上で、戦術とテクニックも卓越していないと表現できません。
彼らはもちろん、東京五輪ではLM2Xで臨んでくることでしょう。1Xでもこういうパフォーマンスができるようにならないと、五輪優勝には届かないということなんですね。

2017世界選手権LM1X表彰式 World Rowingより
驚嘆の個人能力を見せたLM1X優勝のポール・オドノバン(リオ五輪LM2X銀)。
東京へ向け別ルートで強化を進めているアイルランドはLM2-でも優勝しており、打倒フランスLM2Xに燃える
World Rowingより写真転載




LM2X
五輪種目LM2X、大本命フランスの打倒をめざし軽量級の強国が集結します。やはりワールドカップより仕上げも争いもレベルがましています。
LM2X決勝各艇スタートし、スタートは激しい先行争いに見えますが、250mを過ぎ300mくらいにはどのクルーもスピードを生かしつつもスムーズでリラックスしたいわゆるコンスタントペースになっています。SRはやはり40付近がめやすか、フランスドイツがSR40、イタリアがSR39、中国ポーランドベルギーがSR37と表示されていますね。ハイレート化のトレンドとしてLM2XでもだいたいコンスタントSR40が必須になっていっています。
展開としてはフランスとイタリアが並び競り合っていきます。打倒フランスの新たなライバルとしてイタリアが名乗りを挙げた形です。フランスはおなじみSアズー(178cm28歳)とBウァン(182cm23歳)のコンビ、そしてイタリアはSルータ(183cm30歳)、Bオッポ(187cm23歳)のコンビです。ストロークのルータ選手、髭がすごいので覚えた方も多いのでは。プロフィール写真と別人です。
しかしレース内容をざっくり言えば、フランスが持ち味のコンスタント力で圧倒し、イタリアは最後まで競ることはできずやや後退していき、徐々に上がってきた中国とポーランドにプレッシャーをかけられ結果的には銀メダル争いが激しくなります。第4では抜け出したフランスを尻目に3艇のつばぜり合いとなり辛くもイタリアが持ちこたえ2位を死守、3位中国、4位ポーランドでした。
結局、危なげなく優勝したフランス。まだライバルと力に差がある感じですね。第3が強く、勝負どころが早い長所は変わらずです。似た持ち味のアイルランド、NZと戦わせてみたいですが、先行力でもフランスに分がありますからね、まだフランス有利でしょう。
そして3位銅の中国LM2X、2人とも何と22歳(今年大学4年にあたる学年)ですね。次から次へと世界クラスの実力者が若くして出てくる中国、本当にすごいですがナゾが多いですよね。ポーランド、ベルギーもLM2X急成長を遂げておりたいへん熾烈な争いがまた続いていくLM2X種目です。

日本はFinal C、まだ厳しい感じでしたね。Final Aを見てしまうと、ここで戦える感じには物足りませんし、地力も勝負を決める勝負強さもこれからという感じです。壁にはね返されたというところですが、しかし潜在能力で負けていることは全くありませんので、世界トップ、優勝を見すえ高い目標でやってもらいたいです!Final CクラスからのFinal A、多くの前例があります。飛躍を期して、乗り越えていただきたいですね。

2017世界選手権、日本LM2X Crew Japan facebookより
日本LM2X(S:S藤K選手23歳、B:IK田選手29歳)、まだ結成1年目、これからの飛躍を胸に
日本ボート協会Crew Japan Facebookより写真転載




LM4X
LM1XとLM2Xに迫ってきたくらいに、レベルは高かったと見られる今大会のLM4X。
その中で日本は予選、準決勝と内容をかなり上げて課題修正してきた流れだったと思います。日本LM4X、メンバー的にもクルーのスピードとしても力のあるクルーであり私は過去最高のLM4Xになるのではないかと思います。来年以降、メンバーは代わるかもしれませんが、今大会のチャレンジをベースに、世界選手権で優勝やメダルを獲り続ける種目になっていったらいいのではと思っています。現行の種目の中で軽量級では、現状の体制の日本が最も優勝に近いのが、LM4Xです。LW4Xもそうなのですが、もう少し女子は個人能力が高くならないと届きませんね。そしてやはり、4Xで勝てる選手は2Xや1Xでも勝負できるようになっていきます。

LM4X決勝、フランスが安定感とラストの決め手でともに上回っていました。第2でのギリシャの奇策と、第4でのイギリスの信じられない猛追にも動じずしっかりレースをものにしました。
優勝フランス、2位イギリス、3位ギリシャ、4位イタリア、5位日本、6位スイス。

日本は展開にはついていき決勝の速い流れの中でレースできたことは大いに進歩だと思います。コンスタント力が増し、スタート無理せず落ち着いてスピードに集中できるようになっていますよね。しかしこの決勝レースからするとレベルが高いので、ラップ1秒ずつ、そして第4は2秒以上足りないということになります。クォーターごとの1秒はレートとさらなる地力。しかし日本はフランスやイギリスと同じくらいのSR37は出ていますので、エルゴの部分になるでしょうか。また、第4のスプリント、日本はラストスパートがスプリントになっていない(たぶん練習していない!?)ため、ついていけない現状ですので、国際レースにおける積年の課題ではありますが、ここが強くなっていかないとラストのMAXスピード比べに勝てません。いずれスパートがバシバシ決まる、半艇身や1艇身以内なら絶対差せる、ラストの決め手が強い日本、というようになったら素晴らしいですよね。

決勝を経験したクルーは、練習や日々の取り組みが格段に変わってきます。日本代表はそれくらいはとうに経験してきている意識の高い選手の皆さんだと思いますが、やはり世界の決勝がレベルと意識を高めてくれるはずです。決勝をトップでゴールするために。世界一の毎日を!

2017世界選手権、日本LM4X 岸蹴り Crew Japan facebookより
さまざまな課題をクリアし、進化し続ける世界トップレベルをさらに超えてほしい
日本LM4X(S:N良選手25歳、3:F井選手22歳、2:N村選手27歳、B:O元選手33歳)
日本ボート協会Crew Japan Facebookより写真転載





女子軽量級編

LW1X
続いて女子軽量級。LW1Xは南アフリカのキルステン・マッキャンが優勝。あの女子軽量級エルゴ世界レコードの南アフリカ・グロブラー選手とLW2Xを組んでいたパートナーです。170cm29歳。これに対し弱冠20歳とたいへん若く世界ジュニア、U23世界選手権と世代別世界大会を優勝してきたオランダのマリーケ・カイザーを推してきましたが、スプリントに優るマッキャン選手に一日の長がありました。スタートはマッキャンが飛び出してのちコンスタントSRは2人とも34ほどで推移し、中盤に強さを持つオランダらしい強みを持つカイザーがマッキャンをかわし先頭に立ちますが、ラストのスプリントに切れがあるマッキャンがスパート勝負で逆転して優勝。
しかしまだ20歳のカイザー、これから底知れぬ成長を見せていきそうですよね。今後LW2XにシフトしリオLW2X金のイルセ・パウリス選手とタッグを組むという噂も!?
3位には、地元の大声援の中素晴らしい追い込みでスイスとスウェーデンを交わしたアメリカのメアリー・ジョーンズが入りました。

2017世界選手権LW1X表彰式 World Rowingより
左から2位オランダのカイザー選手、真ん中優勝南アフリカのマッキャン選手、右に3位アメリカのジョーンズ選手
World Rowingより写真転載




LW2X
LW2Xでは私はてっきりNZとポーランドの2強対決だと思っていました。そうしたらもうまったくノーマークだったんですね、ルーマニアとアメリカの存在を・・・。

ルーマニアLW2Xはそれもそのはず、つい7月のU23世界選手権で優勝したばかりのクルーなんですよ。優勝したルーマニアはSジャニーナ・エレナ・ベラーガ(177cm22歳)と、Bイオネラ・リヴィア・レハチ(179cm22歳)の同学年コンビ。軽量級でありながら2人ともたいへん長身で180cm近く、高身長の長い手足を生かしルーマニア伝統のイーブンペースの素晴らしく長いロングストライド・持久漕スタイルといった女子ダブルです。シドニー五輪LW2X金のルーマニアもそんな感じでしたね。しかしこの国は若手の女子を育てるのがうまいですね。
このルーマニアLW2X、U23世界選手権LW2Xではイタリアとの壮絶なマッチレースに競り勝ち優勝、そして勢いそのままにさらに完成度を上げてシニア世界選手権に参戦してきたわけですが、強豪のNZとポーランドを破って五輪種目を制したわけですから、相当な実力、一気にブレイクした今シーズン最大の昇り竜といえるかもしれません。ただ、ベラーガ選手もレハチ選手も、じゅうぶんにジュニア期やこれまで国際経験を積んできての現在であり、例えばレハチ選手はリオ五輪LW2X8位の実績を持っています。
このU23で争ったイタリアも、LW2Xの1人はシニアのLW4Xに回り優勝しています。今年の世界の若手も、どんどん成長してU23世代は当たり年かもしれませんね。日本のU23世代の皆さん、うかうかしてられませんよ!
ルーマニアはそれほどいいタイムが出なかった今大会のコンディションでも6'55と素晴らしいタイムだったので実力は本物だと思いますが(ほぼ同時刻のLM2X優勝フランスが6'13なのでほぼ無風と思われます)、NZと終始競り合っての得意な形にはめ込んでの優勝でしたので、今後NZとポーランドも巻き返しが必至だと思います。そして、今回LW2Xに出ていない他の有力国も含め争いは激化していくでしょう。しかしとにかく、ルーマニアは競り合いに強いんですよね。並んだことで力を増幅できる勝負強さのメンタリティーが宿っているんでしょうね、すごい精神力です。

ちなみに3位になったアメリカ(Sゼクサー、Bシュミーク)はどちらも30歳前後のベテラン、今シーズン世界大会にほとんど出漕せずこの地元開催の大会一本に絞ってきたと見られる調整をしての3位。こういう、一発勝負で見事に大事なレースの結果を出すクルーも素晴らしいと思います。

2017世界選手権LW2X表彰式 World Rowingより
優勝のルーマニア(真ん中)、Sベラーガ、Bレハチ。2位のNZ(左)、3位のアメリカ(右)
ルーマニアの長身がひときわ目立つ
World Rowingより写真転載




LW4X
最後にLW4Xです。
積極的に優勝争いを挑み最後落ちてしまったものの3位に入った中国とは対照的に、日本は決勝においてはあまり良いリズムが出せず、SR37と高く出せていたもののスピードに乗れない形で上位争いから脱落してしまいました。いずれの国もSR37でしたので、やはりLW4Xもハイレート化が進んでいます。優勝は後半でも良いスピードを発揮したイタリア、そして2位にコンスタントに強いオーストラリア、よく粘った中国が3位、4位接戦を落としたカナダ。5位イギリス、6位日本は離されてしまいました。
イタリアの優勝タイム6'33であり、映像からも少し出にくいコンディションになってきているように見えたものの(無風+5秒くらい?)、15分前に行われたLM4Xのフランス優勝タイム5'51からすると、もう少しほしい感じがしますが、性差40秒ほどと考えると6'25~30切りくらいがLW4X世界優勝基準かと思います(世界ベストは超順の6'15。2014、ヘートやパウリスが乗っていたオランダです。これはやはりすごいタイムでした)。ですので、日本LW4Xとしてはもっともっとタイムに貪欲になってほしいところです。日本のレベルは、男子の軽量級より、女子の軽量級のほうが世界トップと差が大きい現状と見ています。女子軽量級はとにかくパワーとエルゴが足りません。いまの世界の軽量級トップはものすごい出力があります。
LW4Xでも、男子のように優勝クルーと5秒圏内の位置にいられるはずですし、目標は常に優勝を見てひたすらフィジカル向上とスピードのアップに磨きをかけて世界トップを争う力をつけてほしいですね。

2017世界選手権、日本LW4X Crew Japan facebookより
日本LW4X(S:T屋選手23歳、3: Y領選手25歳、2:K本選手23歳、B:F本選手29歳)、日本の女子も伸び盛りの選手ばかり。
今回唯一の出漕となった女子クルーですが、多くの日本の女子クルーがFinal Aで躍動する、夢のあるチャレンジを見せてほしいと思っています。世界にライバルを作り、お互い競い合い高め合ってください!
日本ボート協会Crew Japan Facebookより写真転載









アメリカのフロリダを、颯爽と吹き抜けた青い風。

東京へと続いていくこの風は、2018にブルガリアのプロブディフ、2019にオーストリアのオッテンスハイムと東欧そして中欧をめぐっていき、2020に極東の日本へと舞い戻っていきます。
56年ぶりの東京、世界ボートの体験が還ってきます。戸田オリンピックコースから江東区の海の森水上競技場に舞台を移しRowingの風を感じることになるのです。
1年、1年、強さをましていく風・・・。風は、太陽が生み出します。太陽をシンボルとする日本のクルーたちも、光り輝く風となって東京の海をきらめきわたり駆け抜けることができるのでしょうか。

世界のスピードの中で、いくつもの日本の艇が先頭を切って走っていく、そんな日を夢見ています。
太陽の風に乗って。



スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://rowingcox.blog.fc2.com/tb.php/336-1358d9d9