では前回に続きまして、今度は女子オープンウェイト各種目の結果や内容を見ていきましょう。
このようにオープン種目を大きくクローズアップし、日本もオープン種目重視の風潮を巻き起こしていきたい私の目論見が少しあります(笑)。だって、東京五輪でボート競技全14種目中、軽量級2種目に対し、オープンウェイトは12種目なんですからね。
日本がオープンでも軽量級でもトップを争うための道を模索していきたいのが当ブログの考えです。





各種目レビュー②


女子オープン編

W1X
中欧オーストリアのロブニヒ(180cm69kg27歳、リオ五輪W1X6位)とイギリスのソーンリー(193cm77kg、リオ五輪W2X銀)の長身2人がスタートから飛び出し先手をとろうとします。しかしその後3番手から徐々にトップを窺う本命スイスのジャニーヌ・グメラン(171cm70kg27歳、リオ五輪W1X5位)。グメランはこの180cm級が揃う今回W1Xファイナリストの中では最も小柄ですが、コンスタントSR35と長身選手たちの中でひときわ高い、高回転で軽快かつ力強いリズムでロブニヒを捉え、1000mでは勢いよく先頭に立ちます。そのまま後半もどんどん攻めて押し切り、3'41-7'22の見事なイーブンラップを刻んで2着ソーンリーに1艇身半をつけ世界選手権初優勝しました。今季ワールドカップ第1戦、第3戦と2連勝し素晴らしいシーズンを世界一で締め括ったのです。

このスイスのグメラン選手、体操の世界選手権で話題になった村上茉愛選手のようなゴムまりみたいに弾力性ある全身Rowingでしたね。弾むように躍動したダイナミックな漕ぎは大いに参考になり、これくらいの体格ならば日本選手でもオープンチャレンジできるし、そのめざす理想というか方向性に近いのではないでしょうか。
今後さらに、能力の高い長身選手がW1X参戦してくればグメラン選手も東京五輪まで優勝候補の座に居続けられるか分かりませんが、小柄な選手はぜひ大活躍してほしいですね!そして日本からも世界のトップスカラーを。

2017世界選手権W1X表彰式 World Rowingより
真ん中、W1X優勝した小さな巨人、公称171cmスイスのグメラン選手。
2位イギリス193cmのソーンリー選手、3位オーストリア180cmのロブニヒ選手に囲まれるとかなり小さく見えてしまいますね。しかし、紛れもなくスピードと身体能力に秀でたオープンW1X女王です
World Rowingより写真転載




W2X
スタート500mまでは全艇カンバスから半艇身以内に収まる団子状態の接戦、1000mあたりで本命NZ(Sドナヒュー、Bロウ)、オーストラリア(Sエドモンズ、Bオルダセイ)とアメリカ(Sトーメック、Bオリアリー)との3艇の争いに絞られてきます。しかしやはりW2XではNZが強い、後半もその有酸素能力の高さを生かしグイグイ離しにかかって水をあけてきます。何とか食らいついたのは地元アメリカで、強力なNZに追いすがっていき、最後は優勝NZ、2位にアメリカ。以下3位オーストラリア、リトアニア、中国、フランスときれいに逆カンバス差ずつ順序よくゴールしました。オーストラリアは世界ベスト(6'37)を持っているオルダセイ選手が乗っているのですが、このタイムもNZが塗り替えていきそうな感じがしますね。まだまだNZの快進撃を止めるクルーはいないようですが、こうしたアメリカのようなブレイクが現れることを期待したいですね。




W4X
W4X種目は、平均年齢24歳の若いポーランドクルーが今シーズン好調で、ワールドカップ第2戦第3戦を連勝して世界選手権に臨んできました。レースでも地力を発揮し先頭で頭ひとつ抜け出すのですが、ずっと半艇身差につけていた平均年齢28歳2番手オランダが得意のラストスプリント勝負を挑み、壮絶なマッチレースに持ち込むと残り100m鮮やかに逆転、オランダがW4X優勝しました。
ポーランドは体格を見てみるとS、3、Bの3人は175cm65kg前後でしたので、やはり決して日本人では組めない体格の編成ではないと思います。ひとり188cmがいますが、日本でもオープンクルーを多数編成したいなら数人は180cm超級はスカウトが必要かもしれませんが、全部そろえる必要はないでしょう。身長以上に大事なのはやはりエルゴと身体能力、そして世界トップをみすえたトレーニングによる心技体の向上あるのみかと思います。オランダはストロークが169cm70kg、しかし後ろ3人は180cmを揃えていましたね。
3位イギリス、4位ドイツ、6位オーストラリアといずれも20代前半の若いクルー、このへんの列強は東京を見すえた育成用で、あと3年で間違いなく主力に成長する選手が出てくるなという編成意図が見てとれました。ボート強国は、目先の結果だけでなくしっかりと五輪に照準を合わせて強化を進めています。




W2-
今大会目玉の一つとしてキウイW2-の活躍と注目をおすすめさせていただきましたが、期待にたがわぬ強さを見せてくれましたね。ニュージーランドのSケリ・ギャラー(181cm23歳)、Bグレイス・プレンダーガスト(183cm25歳)のペアは今季世界ベスト6'49を出し、世界選手権でも他を圧倒して4秒差(2艇身差)の優勝を飾りました。まずV1、といったところでしょうか。
内容としても最初はデンマークなど競りましたがこれはNZスタイルからすればいつものペースで、第2でぐんぐん加速するように抜け出していくと、第3以降は大きく水をあけて独走態勢。これは、高いレベルのイーブンペースで、他が落ちるのにNZは全く落ちないからこういう展開に見えるのです。ボンド&マレーのキウイペアと全く同じレース内容ですね。この2人、覚えておいてください。東京までV4めざしているんじゃないでしょうか。

アメリカ(Sアイサー、Bカルモウ)にもNZと対抗できるよう期待はしましたが2着に入るのがやっとでした、でも地元で銀は素晴らしかったです。デンマークの180cm台後半という長身W2-(Sヨハンセン、Bラスムッセン)も好漕しましたが、このデンマークあたりが今後キウイW2-を脅かす成長を遂げれば面白そうです。デンマークのバウ、ヘドヴィグ・ラスムッセン選手はリオ五輪W2-銅でした。187cm75kg23歳、まだまだこれからの選手ですね。ちなみにロンドン五輪LM2X金のマッズ・ラスムッセン選手とは血縁関係はなさそうです。

2017世界選手権W2-2日目 New Zealand Rowing Team Facebookより
キウイW2-(Sギャラー、Bプレンダーガスト)、まだまだこれから大きく進化する23歳と25歳の若い2人
New Zealand Rowing Team Facebookより写真転載




W4-
W4-決勝、面白かったですね!やはり五輪種目になると激しいレースが増え、レベルも上がるんですね。何だか力強さやテクニックも、以前の一発決勝ばかりだった閑散とした非五輪種目のときからは格段にアップしているように見受けます。五輪種目効果、おそるべし。レースビデオの大写しになるポーランドW4-のスタート力漕なんかを見てください。男子と遜色ない力強さですよね。五輪W4-は優勝予想タイムが無風で6'25あたりと見ていまして、だいたいこれはインカレM4-順位決定くらいのレベルになります(W4-世界ベストは超順で6'14)。エルゴ平均6'35くらいのクルーたちでしょう。8+なら5'55近辺。このように、男子も女子もエルゴによっておおよそレースタイムのポテンシャルも規定されてくるところがあるかと思います。
W4-レースは一団で進む接戦模様からオランダが果敢に飛び出して逃げ切りを狙います。M4-ともどもコンスタント型だがハイレートを武器に生まれ変わりつつあるオーストラリアが、スタート500mでは最後方6番手の位置取りから徐々に進出、SR38をキープして上位に上がってきます。ラストは置かれてしまった中国以外の全艇がスパートで激しくスピードを競うたいへん迫力ある5艇のスプリント勝負、オランダとアメリカに加えポーランドとロシアも突っ込んできますが、SR43以上まで上げたオーストラリアが突き抜けて優勝。スピード感あふれる競り合いに次ぐ競り合いの素晴らしいレースでした。
2017世界選手権W4-表彰式 World Rowingより
W4-種目、ますますレベルアップしていくか。優勝のオーストラリア(前列)、2位ポーランド(後列左)、3位ロシア(後列右)
World Rowingより写真転載




W8+
今大会、個人的に3大ベストレースのふたつめがこのW8+。
ついにルーマニアがW8+世界一に返り咲きました。実に2004年アテネ五輪以来、13年ぶりのW8+女王復権です。その間、アメリカが女王として2006~2016年まで11年連続世界一に君臨していましたが、実は2005年の世界選手権・岐阜大会はオーストラリアが勝ってるんですよね。あの大会は現地で見ていましたが、オーストラリアとNZがたくさん勝っていましたね。当時はオセアニアは日本と時差があまりないのが有利なのかと思ったりしていましたが、思えばNZはこの頃からドライスデールやマレーが出てきて強くなり始めていたのです。

さて、そのW8+です。ルーマニアは伝統的に中盤、後半の強さが持ち味のスタイルですが今回はスタートから積極的に攻めていき頭をとりましたね。アメリカ、イギリス、NZの機先を制したかったのでしょう。ルーマニアはやはりワールドカップでマッチレースを演じたNZを最大のライバルに見ていたのではないでしょうか。イギリスはオーバーペース気味でしたが、隣りのレーンNZの前でカンバス差だけでもリードを保ってレースできたのは大きかったでしょうね。ハイペースでしたがある程度リズムを作れてタフな競り合いをしのいでいったと思います。
逆に前半消耗しなかったカナダが第2、第3といい形で上がってきて、ラストも猛烈なアタックをかけてきて、この2艇の競り合いに入ってきました。6レーンルーマニアCOXドルンセア選手としては5レーンNZの向こうから上がってくる4レーンカナダは見づらいのですが、NZを突き放すイメージでいたと思います。1500m過ぎてすでにSR42を超えるスプリントモードに入ったルーマニアは、ものすごくタフなロングスパートを継続してダブル、トリプルとスパートを重ねフィニッシュラインへとまっしぐら、見事色んな意味のある今回の優勝をつかんだのです。

NZは戦術的にやや失敗の3位、カナダは展開が向いた中で作戦的中の2位、そしてルーマニアはこういうタフすぎる展開を制し、ラストも素晴らしい伸びを見せたということで着差以上の力を感じる強いレースだったと思います。そしてアメリカは再び女王の座へ戻れるのか、ライバルとして立ちはだかるルーマニアはものすごく強くなって帰ってきています。
カナダ、オランダ、イギリスもまだまだこれからもっと強くなってくるでしょうね。そしてNZ、実力的には一番でもおかしくないですが、NZにほしい部分であるレースに自在な柔軟さとここ一番の勝負強さを獲得できるのでしょうか。

2017世界選手権 W8_表彰式 romaniaインサイダーcomより Romania-team-Rowing-Championships
13年ぶりの世界一に喜びいっぱいの表彰式。よみがえった強いルーマニアW8+
romania-insider.comより画像転載



日本もぜひ、W2-、W4-、W2X、W4Xなどで東京では活躍してほしいですし、W1X、W8+でも勝負できる日がくることを待っています。それも近いうちに。お隣り中国が真っ向からチャレンジしているんですから、できない理由はありませんよ!



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