ボート競技がチームスポーツたる魅力の一つに、クルー編成、シート決め、シートやサイドの役割とコンビネーションがあります。
およそチームスポーツにおいては、個々に特徴のある選手たちを能力や適性、性格や強みに応じて、各ポジションに配しチームとしての組織力を高めその有機的な相互作用と総合力によってチーム単位で競うという面白さがあります。


この点において、組織を形作りチームを組み立てる役割のチームマネジャー(監督、コーチ、主将など)は、戦術と勝敗に大きく関与するプレイヤーであるといえるかと思います。例えば高校野球の顧問はチームの人材発掘(選手勧誘)と人材育成と目標や練習のマネジメントと生活のマネジメント、さらに打順オーダーや投手や野手の交代、作戦立案と実行にいたるまですべての勝負どころの采配にも絶対的な権限を有し、完全にプレイヤーかつリーダーです。
私は野球素人ですが、昔は子どもの頃野球を見ていてスター選手ばかりに目がいって、監督がやたらアップになることの意味が分からなかったのですが、野球における監督とコーチの重要性はボートを知ることで分かってきた気がします。

ボートでも、選手として漕がなくても、その編成やクルーマネジメント、采配に関わることでレースの勝敗を左右するのです。
クルー編成は、チーム目標の設定、長期スパンの戦略、シーズン戦略、種目(艇種)の選択、レース戦略、選手の育成やモチベーションなど多くを左右する組織戦術です。さらに、シート順のオーダー(シンプルにシート決め)、スイープではサイドの設定、リガー配列、そして技術方針や選手の相性・適性まで考えることが必要です。


こうしたクルー編成の全般について、今回は考えてみることにしたいと思います。
このクルー編成、選手やチームの人事というチームスポーツならではの頭や情報を使ってのある意味ゲーム性と言える頭脳戦が、私は以前コーチを長年やってきてたいへん面白いと感じてのめり込んできたことの要因の一つだとも思います。選手の運命や将来まで決めてしまうクルーの人事はとても重い決断です。この重さは肝に銘じなければいけない。しかしその重大な責任感の中で得られた結果や感動は、何にも代えがたいやりがいと喜びでした。クルー編成に関わる監督、コーチ、主将など選手リーダー、新人コーチなどは、結果だけでなく選手の将来まで握っているという自覚と責任をもって、1人1人を大事にしたチームマネジメントを行っていただきたいと思います。はっきり言って、チームの結果はこうした編成権をもつリーダーの能力や人間性に大きく左右されます。しかしこの重さこそが、やりがいと面白さにつながっていきます。

ボート競技はとにかくシンプルだと言われますが、同時に奥が深いと言われるのは、こういう「人」というものを理解し「組織」や「チーム」の総合力が必要な競技だからです。単純に何も考えずに適当にクルーを決めて何も考えずに漕いで勝てる、このようなものでは全くないということです。
逆に、人について理解し、組織という特性を知り、ボート競技の知識経験を増やしよく研究していくことで、これらの重要性が身につきボート競技はもちろん、さまざまな社会や仕事などに応用できる考え方のヒントがきっと得られることと思います。


なお、この記事も含め基本的にこのブログは私個人の見解と意見に基づくものです。私自身の経験から多くを書いているところもあります。決して内容を鵜呑みにしたり信じすぎることなく、参考程度に読んでくだされば幸いですので、その点毎度のことながらよろしくお願いします。





1.クルー編成はボートの人事
ある組織の人事やグループや役割決めは、どんな会社、組織、たとえば学校のクラスや行事のグループ割り、部活などに至るまで日常的に行われます。30人の学校のクラスの中で、「人気の体育委員は立候補者が多くて投票で選挙したけど、清掃委員は誰もなり手がいなくて余ったこの2人に任せよう。」みたいなことが起こります。人気があって誰もが椅子を狙っている役職は実績と能力と人望によって決まりがちですが、人気がなくて3K的でなり手がいない役職は押し付けたり余った人を当てるようなことが多くなったりもします。この「余った」みたいな扱い自体失礼きわまりないのですが、人の心と人間関係、権力関係が反映されやすいのがこうした人事。責任と能力の最も高い人が人事権を持っていないことがそもそも間違いのはじまりかもしれません。

人事は、「適当に決めた」「何となく決めた」という、思いつきや場当たり、好き嫌いなど、いわゆる恣意的であってはいけません。
最大限に人を生かし、構成員の希望やニーズを把握し、なおかつ構成員が自分ひとりでは伸ばせない未知の能力を発見できるように、人を見る目にかけてはプロフェッショナルなリーダーが結果責任を背負う形で決めなくてはいけないと私は思っています。
だいたい、人事権というのは組織の長が握っています。会社なら社長ですが、さらには社長を人選する会長や株主まで当然ながら責任を持たねばいけません。下は主任から上は社長や会長まで、人事権を握って行使する役割の人は、自分が決めた人選による結果の責任を負うことが必要です。結果に対し責任を持つので、ただ部下の役割を決めるだけでなく、同時に部下を指導したりモチベートして結果や成長に導く役割も担います。

当然ですよね。クルー編成をした当人が結果責任の多くをもつのは。組織編成も同じですが、人事の失策によって会社であれば業績に、ボートであればレース結果にもろに表れます。逆に、多少個々の力が劣っても、考えられた編成によってクルーとして素晴らしい組み合わせとなりどんどん成長して強くなる効果も発揮できます。
人事はブレーン(コーチ、顧問、参謀やアドバイザー)に編成案やアイデアをもらっても、最終的に決断し決定をするのは人事権のあるリーダーです。多くは監督、コーチ、主将であって、このリーダーこそ結果責任が帰することになります。(もちろん個人能力や意識の限界もあるので、すべての責任を背負うわけではありませんが、だいたいはリーダーによって結果が左右されます)


結果や成長に導くために、目的に沿った目標を示し、その目標達成のためのチームや組織作り、個々の人間作りが人事権を持ったリーダーの仕事となります。
いわゆるコーチングや日々の指導などは個々の人間作りだと考えますが、チームや組織作りにおいてはどんなチームにするか、どんなクルーにするか、どんな環境を整えていくかというように、人を生かすための「人の配置」を決めて調整をし、個人としても組織としても総合力が高まるように成長が促されるようにマネジメントします。

この「人の配置」は、いまの能力、これから伸びる見込みの能力、性格、身体的特徴、技術的な特徴、などさまざまな「個人の特徴」を見て決めていきます。
また、チームやグループですから、「集団での特徴」も考慮しないといけません。人間関係、人との和合性や適応力、コミュニケーション能力、ポジティブかネガティブか、貪欲か保守的か、リーダータイプかフォロワータイプか、自己中心的か他者に合わせるタイプか、技術的な相性やイメージの共有などなど、集団において力を発揮できるかどうか、色んなタイプの人がおり、このチームでは良さが消されてしまうが別のチームでは大いに良さを発揮できる、というようにその人が活きる環境やグループ、上司や同僚など権力関係やチームの磁場によって全く別人になる場合さえあります。

クルー編成については、このように選手が活きるクルーであるのかを考慮し配慮した上で、おもに心技体の能力に沿って相性良く適性のある艇種に乗せ、メンバー決め、シート決め、サイド決めを行います。サイドを決めるのはスイープ限定ですが、最初から変更は難しい場合もありますが指導者によっては柔軟に変更を求める人もおり、私もサイド転向はこだわりなく要求するほうです。
そして、どの組み合わせ、どのクルーが、最も艇速を出せるのか。そして出せるようになるのか。現状の把握と未来の見込みを、「何となく」ではなく「ボートの知識と経験」で見定めてその艇速へと導くことが、クルー編成の人事を握るリーダーには必要だと思います。ボート意識、ボート経験のある人ほど、クルー編成も確かな腕を持っているといえます。

以前、選手選考について記事にしましたが、例えばシートレースに勝ち残った選手4人をそのままフォアにするやり方ではなかなかこうした編成はできません。ボート経験の豊富なコーチやリーダーがいて結果責任を負うことが可能なチーム体制であれば、クルー編成は個人の序列ではなく、クルーの艇速を第一にした編成を行うのがよいと現在は考えています。




2.チーム目標によって、編成を決める
先ほど見たように、クルー編成は責任感と人事センスが必要な決定ごとです。
クルー編成は、かっこいいクルーを作るためのものではありません。この人とこの人が組んだとき、プラスαのパワーや相乗効果が生まれるとか、個人を超えた組織力を発揮するためのチームの編成です。個人が生かされると同時に、全員が生かされなくてはいけません。

また、クルー編成は、チーム目標ありきです。
チームとして例えばインカレ優勝するには、強い個人を合わせるのが必要という以上に、クルー単位で優勝レベルの艇速が出せるメンバー構成にしないといけないということです。
しかしここには、チームの哲学というかチームとしてめざすべき姿が、表れます。チーム目標が「インカレ優勝」ではなくて、「インカレM8+優勝」「インカレW4X+優勝」ならば、特定の艇種に特化した編成をしないといけないからです。
日本の大学ボートならば、男子エイトと女子クォド以外には、極端に価値に差をつけるチームはそれほどないと思います。つまりどの種目も等しく価値が高いということです。
チーム目標が「インカレ最終日進出」ならば、最終日進出の結果を得るために、第一に重要になってくるのは、種目選びとクルー編成だということです。そうやって、目標が先にあって、クルーの編成を行います。
まずクルーを先に決めてから、じゃあ目標はこれという決め方では、チームの資源を最大限に生かせず目標に対して全力を投入することができないのです。目標設定→人集め、金集め、物集め→個人能力と意識向上→グループ能力と意識向上→組織で目標達成→個人と組織の成長
こんな順番で、グループ能力と意識向上の段階で、適切な種目選択と人員配置つまりクルー編成をしてクルー目標達成に向かうと。それには前段階としてある程度個人レベルで能力と意識を高める個々のトレーニング期間が必要ですね。
ボートに乗ること自体を楽しむのが目的なら、能力も問わず気の合ったクルーで組めば良いのですが、競技として結果を求めるならチーム目標を決めて、その目標達成のために能力と意識を高め目標に全力で向かうプロジェクトチームとしてのクルーを編成しましょう。

実はボート競技は、種目が豊富に用意されておりある意味特殊な競技なので、どの種目を選択するか、そしてそれに最適なクルー編成はどれか、という選択のスポーツでもあるといえます。どの競技もそうですが、ボートも例外なく試合のはるか前の準備段階やこうした選択によって、勝敗の多くが決定されるのです。

いわゆる対校クルー、つまりファーストクルーを決定したら、セカンドクルー以下を決めていくことになると思います。しかしチームのレベルや選手層によっては、どのクルーも高いレベルで編成できるチームもあります。この戦力を用意できるかどうかは、数年かけて育ててきたチーム規模とチーム全体の意識によりますが、こうしたチームは、セカンド以下のクルーはできるだけ適性に合ったクルーを複数作るほうがいいですね。できるだけ多くのクルーが上位を争うことで、クルーは別でもチーム全体で戦っている実感を得ることができ、チーム状況が良くなり相互のチームワークやフォローの質も高まります。
クルーがクルー単体で完結するのでなく、チーム全体がまた一つのクルーとなるように全体の艇速を上げていくことが重要ではないかと思います。それこそがチームスポーツだろうと。




3.クルー編成はボートの知識と経験を反映する
これら、どの艇種でどういう選手を配したら最大の結果を得て、相乗効果を何倍にも増すことができるか。クルー編成には、ボートの知識と経験が欠かせません。
種目ごとのレベルをよく知っていることも大事ですし、ライバルの戦力も把握が必要です。この選手はエルゴはやや劣るが速い水を掴む高い技術とメンバーへのアプローチが的確だとか、この選手は口数少なく淡々と漕ぐが地道なタイプだ、あの選手は体格良くエルゴもすごいがキャッチやテクニックに課題が多い、など、選手の個性を生かしてさらに成長を促進させるためのクルー編成、相棒選びをしていくにはボートに対する理解も人に対する理解も不可欠だからです。

そしてやはり経験です。3、4年くらいでボート経験豊富になるにはどうしても難しく、経験と知見のあるボートマンに指導や助言を請い、味方になってもらうことが必要ではないでしょうか。インカレやインハイで勝負となるポイント、クルー編成における肝など、ボートを何年も経験していると勝利や敗戦を何度も味わうことで押さえるべき要点がいくつもわかってきます。何となくとかイメージで思いつきや漠然とクルーを編成するのでなく、経験によって適材適所を施し走るクルーを組み立てることができます。
また、私のおすすめはひたすらボートの動画やビデオを見まくり過去の大会やレースを研究することです。ひたすら量を漕ぐことです。これらの量によって、あるとき直感や勝負勘ができてきます。知識が感覚に落とし込まれる瞬間だったり、経験則による、質的変化です。

大会の研究とは、どの種目がどれくらいのレベルで、どんな相手がいて、傾向と対策を学んでいくこと。そうやって大会レベルをつかんでいきます。
また、レース研究は、純粋にボートが速くなるための知識と技術を学びます。色んなチームとクルーと選手と配置と編成を知り、さまざまなクルーの組み方や漕ぎの技術や艇の動き方の特性、コーチの傾向、選手の特長(心技体)、レース展開、戦術、心理、フィジカルの知識、レート、アタック、スパート、タイムマネジメント、などなど本当にさまざまな情報が活きた映像の中にすべて詰め込まれています。どんなクルーが勝って、どんなクルーが負けて、その理由や背景、展開の機微、レース自体の流れやレベル。本当に、さまざまなレースパターンでの艇速を表すタイムを知っているだけでもボート経験を養ってくれます。
例えば2014年世界選手権アムステルダム大会は風向きこれくらいの強い順風で行われ、M2-ではNZがイーブンペースで強みを発揮しこのラップで6'08の世界ベストを出して各地点何艇身差で優勝した。など、特別マニアックに知らなくてもいいのですが、その展開やタイムを知ってNZのトレーニングやエルゴなど予備知識もあれば勝つクルーの要素というものが分かります。
国内のレースでもいいのですが、色々なクルーやチームの情報を知り、さまざまなクルーを知ることでクルー編成においても選択の幅が広がりきっとその編成術のための肥やしになるのです。

この選手をこの種目とこのシート配置、このサイドで起用すればおそらくこれくらいの艇速が見込めるだろう。これらが確信のもとに根拠のあるクルー編成ができるようになります。そうすると、だいたいの結果も予測できます。
このまま進んでも正しい道順かもわからないうえで不安と闇の中を手さぐりに進んだり戻ったりするより、はるかに明るく照らされはっきりとした道すじのもとで全速力かつ計算されたペースで目標に向かうことができるかと思います。




4.先を見据えた選手育成とサイド決め
クルー編成は、集団や組織でのチーム作りとも切っては切れないのですが、個々の選手育成が土台にあります。
このクルー編成論は、強いチーム作りをめざすボートマンに向けて書いているつもりです。強いチームは、高い目標とチーム理念をもち、それに基づき個々の能力と意識を向上させることが必要です。弱い個人が集まっても当然勝てるクルー編成はできません。

ここで、この時期にちょうど良いタイミングかもしれませんが、1年生の新人トレーニングではもうチーム作りが始まっています。というか、新勧やスポーツ推薦セレクションの段階ですでに始まっているのですが・・・。
今の大学ボートの実情の中で、新人トレーニング時期にエルゴをはじめとする体力測定を厳しく課しているかと思います。特にセレクション私大のような強力なインカレライバルに対し、最低限のエルゴ数値は必須ですし今年から小艇ではエルゴ基準が上がりました。(M1X、M2X、M2-が6'55のクリアが条件。W1X、W2X、W2-は今までどおり8'00クリアが条件)
エルゴは漕力の期待値を如実に示すものですので、かなり実際の艇速に反映される数値です。ある程度新人についても、エルゴスコアが実力を反映する数字となります。

例えば、仮にですが以下のように新人男子8名(+COX1名)がエルゴスコアを1年目の7月に出したとします。

A 6'40 185cm82kg
B 6'55 180cm75kg
C 6'59 177cm70kg
D 7'02 178cm78kg
E 7'06 172cm66kg
F 7'15 175cm74kg
G 7'19 170cm63kg
H 7'28 169cm60kg
I COX

このへんの数字の例は、未経験オンリーでもインカレ優勝をめざせるチームのイメージです。
私からすると、Aは冬には6'30切りも狙えるかもしれない将来の日本代表候補。B、C、Dまで主力の4人としてエルゴ測定をするたびにコツを掴んできて冬には6'40切りか50切りを期待したい高いポテンシャルをもった上位選手です。E、F、G、Hの選手はしっかりと基礎体力や体重アップに励んでもらい、上位4人の伸びを脅かすくらいに成長し冬にやはり7'00を切って、できれば2年で6'55は確実にクリアし翌年のインカレに出したいところです。E、G、Hは体重的にまだ体ができるまで時間がかかる感じです。ウェイトや筋力アップで体重を70kg近くに乗せたいところ、またFは体脂肪率が高いか有酸素能力がまだ養われていないかもしれません。Fのラップが1'40-1'50-1'52-1'53といったペースなら、序盤に飛ばし過ぎてコンスタントが作れていなかったりエルゴそのものの2000mペースに慣れていません。ペース改善ですぐに7'00切れる実力をつけられる、などのアプローチもできます。

こうした将来の実力アップの伸び幅を見極めつつ、新人クルーの編成もしていきますが、基本的にエルゴ順に決めていくでしょう。
しかし、DよりもEのほうが体重が少ないのにエルゴが大きく変わらない、としてEを体重換算で上位に評価することもできます。

私だったらですが、この新人8名を、M4+、M2Xを2杯。もしくはM4+とM2XとM1Xを2杯という新人クルーの編成をして全日本新人および東日本新人などの地方新人大会をめざしていきます。COX1名も含め、トップ4の拮抗した実力で上位をめざすクルーと、まだ体ができていなくて育成とチャレンジ的なクルーとして体力レベルの近い選手での小艇クルーを組む。M2X2杯でもM2XとM1X2杯でも、希望を聞いたり選手をよく見た上で選択し、より体力トレーニングを重視して小艇では艇を動かす技術アップをはかります。クルー編成には、「このクルーにする」という上での意味や根拠があります。

ここで、スイープではサイド決めがあります。
これも私がコーチだった場合ですが、いくつか基準があります。

①学年の中でサイドに偏りを作らない。(漕手8名だったら、Sサイド4名、Bサイド4名に振り分ける)
②ペアごとの対を意識する。また、SサイドとBサイドのエルゴ平均がなるべく等しくなるようにバランスをとる
③エルゴスコアだけでなく体格もつり合うようにサイド振り分けをする
④上の学年に突出したエースがいた場合、上の例でいくとAはそのエースと対になるサイドにする
⑤技術に問題があって行き詰まった場合、もしくはフォームが原因で腰痛になった場合、改善のきっかけとしてサイドチェンジを積極的に行う

これらは、将来を見越してサイドの振り分けをおこなうということです。つまり、当該学年の1年後2年後3年後もそうですが、2年になって上級生と合流した際にサイドの偏りが出ないよう、次のシーズンやその次のシーズンまで先を見据えてのサイド決めと編成を行っていくということですね。

例えば、2年生に6'28でさらに伸びそうなSサイドのエースがいるとすると、1年のAは次のシーズン主力へ成長することを期待しBサイドにします。同学年のBはAとペアを組んでほしいのでSサイド。

つまり、こんな感じにしていきます。

A 6'40 185cm82kg B
B 6'55 180cm75kg S
C 6'59 177cm70kg B
D 7'02 178cm78kg S
E 7'06 172cm66kg B
F 7'15 175cm74kg S
G 7'19 170cm63kg B
H 7'28 169cm60kg S
I COX

そうなると、Bサイドのエルゴ平均が7'01に対し、Sサイドのエルゴ平均が7'10となり、全体としてBサイドが9秒もパワフルになってエルゴ値にかなり差が出てしまうので、E以下を逆にする調整をしてもよいでしょう。E~HをSBSBとすれば、Sサイドのエルゴ平均が7'05"5、Bサイドのエルゴ平均7'05"5と等しくなり、サイドのエルゴバランスはたいへんよくなります。体格的にも、Sサイド平均175cm70.5kg、Bサイド平均176.5cm71.5kgと、ほぼつり合いますね。腕のリーチや脚の長さ、柔軟性から来るフォーム的なレンジ、キャッチのテクニックなどレンジと水中強度に関してもペアごとにつり合いがとれているか、ここも必要なところだと思います。
つり合うかどうかとは、エルゴや体格の数字だけでなく、ペアを組んだとき、フォアを組んだとき、エイトを組んだとき、直進性や総合的な水中のバランスに関わってきます。例えばAとHでペアを組んでもまず真っ直ぐ進みません。しかし、A~Iで同学年エイトを組めばサイドとシートの並びが適切なら直進性は保てるでしょう。
エルゴだけが重要だというわけではないのですが、やはり漕力を示すうえで参考と根拠になる確かな指標です。

そうは言っても、エルゴスコアの評価は1回だけの測定ではなく、数回に重ねた統計で見る必要はありますし、とにかくどれくらい成長するのかの見込みは必要かと思います。
また、スカル種目をスイープ種目より上においてインカレを狙うチームもたくさんあります。男子では今は4Xを対校にする大学も増えています。やはり上記の戦力ならば、A~Dが対校M4X候補として鍛え、Aはエルゴにおいて抜けているので長い期間1Xで起用するのもありでしょう。
先を見据えたサイド決め、スカルスイープ決め、クルー編成。しかしそれらは臨機応変に変えられるつもりで、今季だけでなく長い目で見たチーム作りのための編成にしていきたいものです。




5.1Xの編成パターン
それでは、さらに具体的に艇種ごとにクルー編成の方法を見てみましょう。
まずは1X種目。シングルスカルは、1人だけのクルー。しかし個人の育成と強化、そしてチーム体制の中では1X種目もとても重要な編成案件の一つです。
1Xはオフシーズンのトレーニングとしてクルー編成すると効果が高い艇種。ひたすら1Xで長い距離を強く漕いでいく練習をして、たいへん個人の心技体を伸ばすことができます。
しかし、シーズンになると個人能力強化のほかに色んな目的が出てきます。インカレをめざすとなると、1Xは対校1Xの1杯しかチームで出漕させることができません。しかしこの編成に関しては、インカレ1Xのシートレースに使う。あるいは、2X、4Xを組む際のトレーニング。1Xで練習し、時期が来たら2Xや4Xを組んでいきます。この2Xと4Xは確実に1Xの漕力、艇速が必要な種目です。あるいは、1Xでシートレースをして順位どおりに対校2Xや対校4Xを組んでも最適な選考が可能でしょう。個々の能力が高いために、うまくイメージや技術ポイントのコーディネートさえできれば、最高の艇速が出せる組み合わせが期待できます。
多くの艇種にとって、1Xは基本となるために、1Xで艇の動かし方やレーステクニック、レースプランを自ら組み立てボートの意識と感覚を向上させましょう。




6.2Xの編成パターン
次に、2Xのクルー編成です。
スカル種目では、1X、2X、4Xの中からどれをトップクルー、つまり対校のファーストクルーにするかを決めると良いと思います。4Xをトップクルーにできるチームは、選手層が厚いかチームのトップ4で組んでやはり4人乗り以上を対校にしたい思いがあるでしょう。1Xを対校にする場合は、小規模チームで突出したエースがただ1人という場合が多いかと思います。
2X対校は、優れたスカラーが2人いる場合がほとんどだと思います。このように、選手層というか戦力に合わせたクルー編成をしていくのが通常です。しかし、中には大所帯チームもいて、種目レベルを見ながらスカル系では1X、2X、4Xから自由に選べるという選択の幅がある場合もありますね。やはり1Xでは相当ずば抜けた体力がないと難しい、4Xで優勝や上位が狙えるほど優秀な選手を揃えられていない、しかし2Xならクルーボートなので個人能力だけでなくコンビネーションで勝負できる。
こうしたつぶしが効く種目というか、たいへんポピュラーな種目だと感じています。

2人だけのクルーですが、その編成方法にはさまざまなパターンがあると考えています。

AAパターン
ほとんど同じ体格、同じエルゴで似た2人がパワーロス少なくたいへん統一された漕ぎで進めるタイプ。
例えば、体格もエルゴも似たかつてのNZ、エヴァース=スウィンデル姉妹のアテネ・北京五輪で2大会連続金のW2Xですね。双子の姉妹で2人とも180cm80kg、バウのお姉さんのほうがエルゴ6'28で回しましたが、ほぼ似通った2人が乗るダブルでした。6'38の当時の世界ベストも記録しました(現在、W2X世界ベストは6'37)
また、昨年リオ五輪LM2X銀メダルのアイルランド、オドノバン兄弟。当時22歳と23歳の若い兄弟ダブル、兄はバウで175cm72kg、弟はストロークで177cm74kg。(もちろんレースでは平均70kgです)あるいは、リオ五輪LW2X金のオランダ(Sヘート、Bパウリス)なども2人とも172cm前後でたいへんよく合っておりこのタイプだと分類できます。
究極的に言えば、2Xだけでなくすべての種目で同じ体格、同じエルゴがよいのでしょう。しかし、人間は機械ではありません。1人1人違う体格、性格、人格をもち特長があります。むしろ個性があって違いがあることでパワーロスもあるかもしれませんが、逆に補ったりそのロスをプラスに変える、違いこそが化学反応を生み出しむしろクルーとして組織として大きなパワーを生み出す。例えば性格面でも、2人とも協調性があって補完し合うクルーもあれば、お互い我が強く張り合って競い合うことで誰よりもパワーを出せているクルーもあるかもしれません。

ABパターン
ストロークが大柄なパワータイプ、バウがどちらかというと小柄でややエルゴは劣るがストロークに同調するのがうまく、テクニカルかつ戦術眼に優れる司令塔のタイプ。2Xには比較的よく見られるタイプです。一般的に大柄でエルゴに優れた漕手はコンスタント型が多く、ストロークに乗せると器用ではないがずっと強い水中を出し続け、ペース変化が少ない特徴のクルーが出来上がる場合が多いです。イーブンペースが多くなる傾向にあるということですね。バウはこうしたストロークの精神面をリードし、クルーリーダーとなることが多い。

BAパターン
ABとは逆に、ストロークはバウより小さいがたいへんテクニカルでストロークとしてのリズムメイク、戦術眼、総合的なRowingセンスに長けた漕手が務める。レートも回転よく上げ、スタートとスパートがたいへん巧みなレース巧者。バウはたいへんエルゴが回りエンジン役としてストロークを常に援護し水中迫力を支えストロークが漕ぎやすい推進力を与え続ける。これも2Xにはよく見られるタイプで、クロアチアのシンコビッチ兄弟などはこのタイプで兄のヴァレントがやや小柄でセンス抜群なのに対し、弟のマルティンは兄より体重がかなり多くエルゴ世界記録を持ちトップクラスのフィジカルを誇る。ちなみにシンコビッチ兄弟、キウイペア解散のあとM2-に転向するらしいとか!?また、ロンドン五輪金のデンマークLM2X(Sクイスト、Bラスムッセン)もこのタイプだろう。
一般に、ボートでは腕と脚が短い小柄な漕手は小気味よい回転とテンポでハイレートがうまく、腕と脚が長い大柄な漕手は強く長く1本で確実に進めるがややレート低めの傾向があります。




7.4X、4X+の編成パターン
そしてクォドです。舵手なしクォドルプル(4X)、舵手付きクォドルプル(4X+)ともに4人の漕手で構成され、4人の水中があるためにたいへん迫力とスピードが出ますが、同時に4人の体重移動が生まれスライドが合っていないとスムーズに艇がひとかたまりとして動きません。基本、4Xや4+だろうと8+だろうと、1Xのように軽快に水を滑らせてスピードをもって走らせたいのです。
4人の艇を動かすドライブとスライドでの体重移動の技術を前提に、水中とレンジをうまく一致させ強い推進力を生み出すために、4人という人数を考慮したクルー編成をおこないます。例えば、エルゴ平均6'35なら4Xで6'15、4X+で6'27というところでしょうか。
シートの配列としては、やはり真ん中2人のミドルペアにエルゴの高い選手を乗せるとストロークがリズムを作りやすくかつ安定して艇のドライブを生み出すことができるのでおすすめです。真ん中や後ろのストレッチャーおよびクラッチリガーに強く安定したドライブがあると艇がよく動くのです。全体が安定し、そうするとストロークは漕ぎやすい。その意味で、バウのテクニックや水中も重要です。
しかし、4人乗り以上だと、技術でも体力でも実力ナンバーワンのエースをストロークに乗せることも多いかと思います。実力的に、S>3>2>Bという前から(ストロークから)実力の順番に並べることが多いかもしれません。しかしこれはやや安易だと私は考えます。フォアやエイトでもそうしがちな実力順、学年順の並び。バウに行くほど漕歴が浅くエルゴも劣る下の学年を後ろのポジションに固めてしまう。

しかし私ならここで、実力トップを3番か2番に、(4人乗りの場合、3番を私はエースポジションとします)そして若手の期待株をやや漕歴が浅くてもストロークに起用、あるいは2番にして、経験豊富な漕手をバウに置きます。特にバウはストロークや3番を漕いだことがある方が前のポジションで漕ぎやすい動きなどを知っているし、後ろからの指示もしやすいのでリーダーとしての役割もできるのです。クルー全体をまとめてバランスをとれるのはバウか2番。ストロークペアは純粋に水中が強く1Xの能力も高い漕手がよいでしょう。若くても、技術やクルーの艇速を上げていく経験を積ませることができます。
リオ五輪金メダルのドイツW4Xをはじめ、全日本を制してきたW大のW4X+などこうしたクォドはよく見られると思います。
しかし、クォドは4人乗り。2X以上に多くの組み合わせがあり、さまざまなクルー編成の妙があるかと思います。




8.2-、2+の編成パターン
スイープになるとさらに編成は複雑になっていきます。
ペアは特にサイドごとのエルゴや身体データ、技術特徴の総和が等しくなりにくい種目です。何しろ、フォアの2:2、エイトの4:4と違って、ペアは1:1です。
できるだけストロークとバウの2人がエルゴも体格も似ていて、かつキャッチ強度やキャッチ技術、レンジが近いことが望ましいです。サイドの不均衡によって最も蛇行(ヨーイング)やローリングなど揺れが起こりやすい種目だからです。このサイドの不均衡は、キャッチのヨーイング、ドライブのヨーイング、フィニッシュのヨーイング、サイドのブレード一枚カバーの不完全によるローリング、フォームや重心のずれのローリング、ハンドルワークのローリング、水中レンジや体格のレンジの違い。これ以外にも細かく見ればサージング、ピッチング、などさまざまな蛇行や不安定性の要因があります。

2Xで見たような、体格エルゴ技術がともに似ているAA型のクルーが良いです。
キウイペアなどは、そっくりというわけではありませんが世界最高に近いレベルで個人能力が両者とも拮抗しているのでこれに該当するのではないかと思います。
しかし、ペアにおいても私の言うところのAB型、BA型が存在します。
私の経験則だと、ストロークのほうが大柄でエルゴが回るAB型に、速いペアが多かったような気がします。Sの選手のほうが強いドライブが持ち味なので、より針路を曲げやすいBがややパワーやキャッチが弱くても直進性が保てるからです。
しかし、BA型のペアもいます。やはりテクニックに優れたストロークは魅力です。そして強靭なフィジカルと大柄だったり体重のあるバウはパワフルな水中を常に出していくことで安定したコンスタントやハイレートへの対応がしやすくなります。バウは水中もあってトップの位置に近くて曲げやすいポジションですから、蛇行に気をつけなければなりません。
サイドごとに少々アンバランスでも、実際にはキャッチ技術の改善で多くはあまり蛇行しないようにすることができます。キャッチ振り角、キャッチ負荷、キャッチポジション、フラットからの一枚、これらを強く確かにして艇の立ち上げをしっかりと脚や全身で掴めるようになることです。




9.4-、4+の編成パターン
フォアの編成に関しては、基本の考えはペアと変わりません。
1:1が、2:2になるだけです。しかし、4人組という2人組とはまた違った独特の人員バランスになるので、バリエーションが増える感じがありますね。
まずやはり基本はサイドごとのバランスなのです。クォドでは縦の関係しか考えなかったクルーバランス、これがフォアでは縦の並びプラス横のパワーバランスの考慮が必要になります。できるだけ、SサイドとBサイドのエルゴや体格平均の総和が等しくつりあうのが理想です。SBSBもしくはBSBSのスタンダードな配列でも蛇行がかなり起こってしまう時は、以前に見たイタリアンのリガー配列を試してみてください。 「漕手技術論⑱~知っておくと便利なボート知識、技術のコツ」
こうしたリガーレイアウトのアレンジで、フォアの進みが改善されることがあります。意味もなく「かっこいいから」みたいな理由でイタリアンにするのではなく、「ノーマルリガーだとバウがエルゴ強い選手になってどうしてもSサイドに曲がってしまったのが、バウペアを入れ替えてエルゴある選手を2番に上げたら直進性がよくなった」など、根拠をもって変更することです。
また、ノーマルなリガーでも2番をストロークに替えるなど、縦の並びの変更によって大きく進みが変わることがあります。あるいは、バウと3番を入れ替える。いずれも、ストロークはクルーにとって影響力が最も大きいポジションであり、ガラッと艇の動かし方からリズムワークまで大きな変化が出るところがありますし、3番を変えるのも、ストロークとの相性や技術上や推進力の要所であるポジションなのでこちらもかなり変化が表れたりします。
それから、若いクルーだとストペアが強くてバウペアを軽視しがちかもしれませんが、レベルが上がるほどバウペアの漕力、経験や安定感は絶大な威力を発揮します。できるだけハイレベルな4人を用意するのが理想ですが、今ある現有戦力の中で最適な編成ができるように調整していってください。

先ほど4項で見た架空の漕手8人が順調に育ってインカレで対校4+を組むとしたら、私ならストロークからA、B、C、Dという順番(BSBS)のオーソドックスなバウサイドストロークの4+にするでしょう。
しかし、1年後にA(6'26)、B(6'35)、C(6'37)、D(6'42)というあたりのエルゴ数値なら、
B、A、D、Cの4+(SBSB)でもいいですね。A選手の大きなパワーをクルー全体に生かしたいということです。

また、A選手が生粋のリーダータイプでたいへんクレバーなボート選手として成長しているなら、2番あたりに起用して全体の指示をしてもらうのもありですね。性格や組織の中での精神的資質も考慮してシートを決めていくことが可能だと思います。
いずれにしても、4人をどのように選び、4人をどのように組み合わせていくか。これはクルーの艇速という一つの目的のもとに組み合わせていくことが重要です。




10.8+の編成パターン
最後にエイトです。エイトの編成はやはりペアとフォアの延長線上の考え方になります。
しかし、サイドで4:4、全体で8人ですから、この統一性を意識して全体が同じ方針でまとまっていくことが必要です。その上で、できるだけハイレベルな数字でサイドの総和を近づけ、縦の並びも考えられたシート順のオーダーにしていくことが必要です。
エイトははっきり言って、そのへんがごまかされやすく、多少バラバラでも曖昧にまとまりやすいところがあります。サイドが多少不均衡で蛇行してもCOXがラダーで修正できます。しかしその細かい不均衡は、必ず艇速に表れています。1秒、2秒を争うレースにおいては、しっかり考え抜かれた編成をすることです。人数の多い種目だからこそ、曖昧で混沌としたコントロールできない艇速にするのではなく、理論と数字に基づき秩序のもとにコントロールして最大にまで実現できる艇速として編成を考えましょう。

エイトの考え方として、ストフォア(ストロークフォア)とバウフォアの前後の4人ユニットの考え方ですが、推進力とリズムを重視すると、ストペア、ミドルフォア、バウペアの3つのかたまりで考えるほうが良いでしょう。ストペアのリズムワークが全体のレートや艇運動のリズムを左右するので艇速のコントロールに作用します。ミドルフォアの真ん中4人のドライブやエルゴが全体の水中と推進力すなわち艇速ポテンシャルに大きく影響します。バウペアのバランス調整や艇の揺れや蛇行に対する調整が艇全体の安定感と艇速平均化に大きく貢献します。
これが前4人に強い上級生選手を乗せ、後ろ4人は若くて未熟な選手で固めてしまうと、全体のアンバランスが大きくなってしまうのです。やはり8人になると、全体のバランスを考えた組織として配置することが肝要になってきます。

例えば、これも先ほど4項の9人の同学年でエイトを組む想定をするとしましょう。
2年後の3年生、順調に成長した想定で、
A 6'23 185cm79kg B
B 6'32 180cm77kg S
C 6'33 177cm72kg B
D 6'36 178cm76kg S
E 6'40 172cm72kg S
F 6'31 175cm78kg B
G 6'45 170cm72kg S
H 6'47 169cm69kg B
I COX
こんな8人になったとします。

やはり体格、エルゴとしてB・Aが主力のエースのペアになるかと思うのですが、Fの選手が体格に合わせてエルゴが伸びてきました。FとEをサイドチェンジしてC・Fを2番手ペアにしても良いですね。このままのサイドだと、Bサイドエルゴ平均6'33、Sサイド6'38で若干の差があります。気になるほどではありませんが、F選手の適性を見てサイド変更はありだと思います。F選手をSサイド、E選手をBサイドにすると、エルゴ平均は両サイドともほぼ6'35になります。

こんな8人で、B選手がストロークを任せられる心技体があり、FとEをサイドチェンジしてこんな8+を組めると思います。
S B選手 6'32 180cm77kg S
7 A選手 6'23 185cm79kg B
6 F選手 6'31 175cm78kg S
5 C選手 6'33 177cm72kg B
4 D選手 6'36 178cm76kg S
3 E選手 6'40 172cm72kg B
2 G選手 6'45 170cm72kg S
B H選手 6'47 169cm69kg B
I COX
8人エルゴ平均6'35
Sサイドエルゴ平均 6'35 平均175cm75kg
Bサイドエルゴ平均 6'35 平均175cm73kg

この場合、ストペアにエース格トップ2の2人を乗せており、大学エイトではよくある配置かと思います。
しかし、全体で考えると少し後ろに行くにつれて不安になるところもあります。ペアごとの均衡は大事なのですが、実はエイトくらいの大きな艇種になると、全体の総和でつり合っていれば縦にくっつけなくても艇速のバランスがとれるところもあると考えています。つまり、もう少し後ろを強化して全体の艇速バランスを安定させたい。

例えば、こんな編成も可能だと思います。

S D選手 6'36 178cm76kg S
7 E選手 6'40 172cm72kg B
6 F選手 6'31 175cm78kg S
5 A選手 6'23 185cm79kg B
4 B選手 6'32 180cm77kg S
3 H選手 6'47 169cm69kg B
2 G選手 6'45 170cm72kg S
B C選手 6'33 177cm72kg B
I COX
こうすると、先ほどの編成ではSフォアのエルゴ平均が6'29、Bフォアのエルゴ平均6'42とかなり前4人と後ろ4人で差があったのが、こちらではSフォア6'32、Bフォア6'39とやや是正されました。ミドルフォアも先ほどは平均6'35のところを、今回はA、Bの主力を真ん中に置いたことで平均6'33にややアップ。バウペアも強力になりました。Sペア2人の技術がしっかりしていれば、そこまで前2人にパワータイプを置かなくてもエイトの場合は全体として強い水中で走らせることが可能です。最近、私はエイトのバウペアの重要性に注目しています!5、6はエンジンですが、同じくらい3、4も大事ですしね。Sペアは若手の有望株を乗せ、後ろを実力と経験に秀でたベテランを配しクルーをコントロールしてほしいというイメージがあります。

世界トップクルーを見ても、国内トップクルーを見ても、さまざまな編成があります。その編成の方法によって、どれくらいクルーとしての艇速に表れているのか、そこを考えながら過去レースを研究するとボートに対する見識が広がっていくと思います。




11.サイドの決定と、主将のサイドやポジション
最後に、サイドの決定についてスイープ限定ですがお話します。
4項でふれたように、将来的なクルー編成に関わってくるので、新人期にサイドの振り分けをすると思いますが、あくまで1年での決定ですし2年後3年後まで考えたサイドの編成をしていくべきです。
その中で、もちろんエルゴや体格だけでなく、適性に合わせてサイドを決めます。右利きなのでどうしてもバウサイドのフェザーリングが苦手、あるいはキャッチポジションがしっくりこない、左利きなのでストサイが向いている、など多くの要因からサイドは柔軟にその人に合わせた編成をしてください。しかし、最初うまくいかなくてサイドチェンジしたいと訴える漕手も、数カ月、もしくは数年経てばどちらも必ず違和感なく漕げるようになります。どちらのサイドも、そしてスカルも漕げるようになるのが私は漕手には必須だと考えています。1つのサイドに慣れすぎる前に、逆サイドやスカルを積極的に経験しチャレンジしていきましょう。

サイドのキャラみたいなことを冗談交じりに話されることがありますが(笑)、サイドとパーソナリティはさほど関係がありません。ただ、スイープだとどうしてもSサイドをストロークにするリガー配置がスタンダードなので、Bサイドは圧倒的に7番3番バウなどのストロークに合わせて漕ぐということが多くなるかと思います。しかし、ストローク個人に合わせるのでなく、艇に合わせ自ら積極的に艇を動かす能動的なバウサイダーをめざしてください。Sサイドのストロークも好きですし、Bサイドのストロークはクールでかっこいい。同じように、7番も6番も5番も、4番も3番も2番もバウも、それぞれポジションごとの魅力があります。
そのへんのキャラクター設定もスポーツの魅力の一つとしてとらえつつ、しかし艇速に対しては平等な1ポジションとして、クルーという1つの艇のスピードを加速させる知性豊かな勇ましき戦士であっていただきたいですね!


そこで、主将はSサイドのほうが多いのか?という疑問が出てきましたので、R大の例ではありますが歴代主将のサイドについて一覧にしてみます。私の記憶によりまして、最後に務めたサイドを記載しています。平成元年からの集計です。

歴代R大主将のサイド ※H15卒からは男子主将、女子主将
(S63卒主将のFさんはS)
H1 B
H2 B
H3 B
H4 S
H5 S
H6 S
H7 B
H8 S
H9 B
H10 S
H11 B
H12 S
H13 S
H14 S
H15 男子B 女子B
H16 男子S 女子B
H17 男子B 女子S
H18 男子S 女子S
H19 男子S 女子なし
H20 男子B 女子B
H21 男子なし 女子スカルのみ
H22 男子B 女子なし
H23 男子S 女子スカルのみ
H24 男子S 女子スカルのみ
H25 男子SB 女子スカルのみ
H26 男子S 女子なし
H27 男子B 女子スカルのみ
H28 男子S 女子S
H29 男子B 女子S
H30 男子S 女子S→B

こんな感じになりました。もしOBの方で違うとか、私はスイープも漕ぎましたよ!という人は教えてください(笑)
まとめて集計すると、平成の過去30年で

歴代男子主将 Sサイド16名 Bサイド12名 スイッチ1名
歴代女子主将 Sサイド4名 Bサイド3名 スイッチ1名

スイッチとは、両サイド漕げる意味で使用しました。
最後のレースや最後のシーズンだけサイド転向しているので、どちらも漕げるという敬意を表して。
どちらかというとややSサイ優位という結果になりました。主将は基本その代の実力ナンバーワンが選ばれるケースが多く、ストサイというとやはりストローク、整調を務めることが多くなるのでイメージどおりといった結果なのでしょうか。しかし、Bサイドもちゃんと多くいて、名選手数多く存在します。最近はバウを務めるクルーリーダー、チームキャプテン、主将も増えてきておりポジションに関する考察はどんどん進化していってほしいですね。
先頭に立ってストロークを漕ぎ背中を見せ炎のように燃えてクルーを牽引する勇将たる主将、ストローク背後の7番や3番の要を漕ぎストロークとともにクルーを引っ張る驍将たる主将、真ん中あるいはやや後ろ寄りでクルーを引き締め大きな存在感で支配する闘将たる主将、後ろから司令塔としてクルーを最速に作り上げ広い視野のもとレースでも戦術眼巧みにコントロールする知将たる主将。それぞれです。一軍の将はどこに位置してクルーを率いるか。
主将というとまた、1学年上の主将と次期主将が同じ対校クルーに乗り、対になってペアを組むパターンも多いのです。1年ごとに主将のサイドが交互に分かれるケースが多いのも、それによると思いますね。同サイドが数年続くときは、クルーが一緒になっていないか、スカル種目主戦の主将だったということです。

どうしてもR大では対校戦エイト種目があるので、スイープ中心の編成がとられるのですが、スカル中心の編成をおこなうチームでのポジション別主将の傾向なども調べてみたら面白いかもしれません!
個人的に、Sサイ主将は正統派、Bサイ主将は個性派と感じるのは私だけでしょうか!?しかし、Bサイ主将に時代をつくった名主将が多く、コーチ経験者が多いみたいです。オリンピック代表、監督、コーチ。Bサイ主将もSサイ主将とほぼ同じ数だけいらっしゃって、リーダー気質の方ばかりだと思います。








以上、クルー編成に関する考察、いかがだったでしょうか。
もう少し図を多用してサイド間の力学的なバランスだとか、理論と根拠を元に最適なクルー編成を説明したりもしたかったのですが、時間がなくこんな記事になりました。

しかし、たいへん奥が深く面白さが詰まっているテーマであると思います。
監督コーチの一存だけで決まるチームも多いと思いますが、野球のオーダーやサッカーのフォーメーションやスタメン予想、システム論のように、チームスポーツであるボートにおいてもクルーのオーダーはファンが楽しめる要素であり、しかし現場の責任者が重責を担う決定事でもあります。
ともすれば単なる人のやりくりや穴埋めパズルにもなってしまう適当な決め事になってしまう日々の人事やシーズン人事。しかし、そういった惰性や無知や思いつきで人事を扱うのと、未来を見越した戦略的な積極人事を行うことで、組織力と個人力を飛躍的に高めることができます。人事はチーム力を高める鍵なのです。
人事とは組織能力と仕事や競技への意識・理解そのものを表します。何より、人への理解と思いやりが必要で、人の可能性を発掘し成長させるスキルが人事やチーム編成です。人のポテンシャルを無限大に生かし良さと強みをすべて発揮する魅力的なオーダーをめざし、それこそスポーツの素晴らしい創造力を実現するような編成を日々考えて、ボートの楽しさを感じられる編成をめざしてください!

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