前回、オープン種目強化の方針を推進してほしいといった記事を書きました。
五輪からLM4-が削除されてしまう。しかし、見方を変えればW4-が追加されて女子種目が増える。
実は、女子にとっては大きなチャンスかもしれません。

そもそも、今回の五輪種目変更は、種目の男女均等における是正。IOCがFISAに要求した部分は、ここが主題だったのです。
男子8種目、女子6種目だったのを、男子7種目、女子7種目に変更したのです。すなわち、
M1X、M2X、M4X、M2-、M4-、M8+、LM2X
W1X、W2X、W4X、W2-、W4-、W8+、LW2X
東京五輪からはこのように男女全く同じ種目になるということです。


女子のボート競技、7種目になるということは、メダルの数も21個。これをめぐってボート強国の熾烈な争いが繰り広げられるわけですが、そこに日本もしっかりと加わっていく必要があります。
男子においては、ひたすら世界基準に達するべくとにかくエルゴを強化しないといけません。
女子も前回書いたようにエルゴが最も重要なのですが、女子オープンは光る若手の人材がいます。6'40台を誇るY川選手、同じく6'40台突入したらしい(?)S原選手です。このW大出身のお二人が女子オープンチームを牽引し、ぜひともエルゴ6'30前半の世界トップレベルへ日本ボートを引き上げてほしいと思います。こうした選手が出ると、周りのレベルアップを確実に促してくれます。現実の目標となり、全体の意識と限界を高めてくれるからです。次点候補ではR命館大のT野選手や、現在軽量級ですがリオ五輪代表のO石選手など7'00切りを狙える170cm級選手も数人いるかと思います。


こうしてみると、五輪ではスカル種目のほうがスイープ3種目に対して4種目と多いのですが、漕手の人数で言えばスカル9人に対しスイープ14人なのでスイープ漕手のほうが人数が必要です。(全日本では男子がスカル7人に対しスイープ20人、女子がスカル7人に対しスイープ10人。世界選手権は軽量級オープン含め男子がスカル14人に対しスイープ30人、女子がスカル14人に対しスイープ14人)
スカルが1X能力を基本とした小ユニット個人パワー型のイメージがあるのに対し、スイープのほうがどちらかといえばクルーの艇速勝負の組織型技術型ともいえるかもしれません。ただ、基本はあくまでハイレベルな体力、心技体が強いアスリートを揃えなければいけませんが。




そこで今回、女子スイープをもっと強化してはどうかというお話をしてみたいと思います。
前回言ったように、軽量級のLW2Xが引き続き日本の強化策の軸であることは間違いないでしょう。その上で、オープンを強化していく際に、私の考えでは日本が狙っていく種目として妥当なのが、スイープのW2-、W4-。そしてスカルではW4X。この3種目のどれかをいわゆる対校、ファーストクルーにする選択かなと考えています。素晴らしい体格の資質を持った選手が多数揃えば話題性もあるのでもちろんW8+がいいのですが、まずはそうした人材が少ないところから最大の結果を得るという戦略を考えないといけません。(もちろん現在の選手だけで考えるのではなく、多数の新規獲得を前提にします。新勧で重要な、現状基準ではなくめざす規模をイメージし高い目標を基準に計画することと、発想は同じです。ボートの人材をいかに劇的に増やすかについてはいずれまた記事にしても面白いと思います)

W2-の世界一ターゲットタイムが6'55~7'00。W4-の世界一ターゲットタイムが6'20~25。W4Xの世界一ターゲットタイムが6'15前後。前回言ったようにこれはだいたい日本のインカレ男子決勝レベルにかかるタイムであり、女子でもほぼ同じエルゴタイムが求められます。すなわち、女子オープン世界一に必要なエルゴ基準は、70kg前後ならば6'35~40。イメージとしてインカレ男子優勝を狙うような目標設定です。
他の種目では、W1Xの世界一ターゲットタイムは7'20。W2Xは6'45。LW2Xは6'55。W8+は6'00。W8+とLW2Xは別として、W1XとW2Xはインカレ男子優勝タイムに匹敵し、これを出すにはエルゴはさらに5秒以上欲しいというところになります。LW2Xは60kgまでならばエルゴ7'00の基準が必要で、W8+も平均で6'40を切るような8人を揃えなくてはいけません。私のイメージだとエイトで6'00を出すにはエルゴ平均6'40が必要です。(現状、軽量女子がエルゴ平均7'30の女子エイトなどですと、6'40がせいぜいです。重量女子エルゴ平均7'20も6'40あたりですね)
こうして見たときに、W2-はイギリスW2-がやはり強いですが、2位3位に食い込む表彰台のチャンスがありそう。W4-は新設種目だが注目度はまだ低そう。W4Xは純粋に女子スカル系の経験を生かせる。他4種目より参加国数が若干少なめというところや、クルーボートの利点として日本の強みを生かせるというところなどが理由です。その中で、W4-で結果を出してW8+にステップアップ、という展望を私は望みたいところです!



かつて、日本の女子も4-で世界に挑戦していた時期があったようです!
日本代表LW4- 1993年
『月刊漕艇』'93年5月号より写真転載させていただきました。(全日本選手権W4+がメイン種目で、インハイ、インカレにもW4+種目がメインだった当時の頃。写真は1992年のものでしょうか)
このときLW4-だったかもしれませんが、五輪では軽量級種目がまだありませんでした。1992年バルセロナ五輪に男子がオープンM8+で最後の挑戦をしていたとき、女子はクラスをオープンに上げてW4-で五輪をめざしていたかもしれません。女子のスイープ世界挑戦は決して突拍子もないアイデアというわけではなく、むしろスカル挑戦のほうが男女ともに新しいチャレンジだったのであり、男女スイープ種目への戦いは先人の意志を引き継ぐチャレンジでもあるのです。

そうなると、ジュニア期のスカル一本化が世界への挑戦に必要としていたこれまでの日本の方針も、今後の世界挑戦を基準に考えると柔軟に対応してもよいかもしれません。
例えば、U23では男子でLM4-をシニアLM2Xのステップにするといった案を前回述べました。U23世代では、男子は当然オープンのチャレンジをすべきですし、もっと言えばジュニア期からオープン選手の育成をしていくことが必要です。タイトルを狙いにいくというよりは、将来の世界に対する意識のための経験ですね。
女子でも、U23でW2-、W4-、W4Xを中心にオープン種目を編成し世界挑戦する。場合によってはW8+、またはW1XやW2Xももちろんです。U23をシニアのステップとするならば、やはり育成で重要なのはジュニア期。全国の長身選手で編成し、世界ジュニア選手権での経験をしっかり積ませる。World Rowing Junior Championshipsには、体重制限がありません。ジュニア女子にはW1X、W2X、W4X、W2-、W4-、W8+の6種目があります。(JW2Xなど、ジュニアのJが表記につきます。男子はこの6種目に加えM4+があります)
これまで日本はJM4X、JW4Xをメインにスカル種目に絞ったチャレンジを毎年してきましたが、代表に限りジュニア期でスイープ経験をさせるのも一つ必要なことかもしれませんね。多くのジュニア代表級男子は、大学に入って1、2カ月ほどのスイープトレーニングでレースに出たりするのですから、このへんの対応はきちんと指導者がついていればさほど難しくなく、スカルスイープの適性や希望もみることができますし、将来への幅が広がると思います。何より、ジュニア期で同種目に世界のライバルを作ることが必要なことでしょう。




今回、女子のことをテーマに記事を書いたのは、冒頭に述べた「男女均等」という全世界的な考え方がスポーツにも当然のものだとして浸透している現状があったからです。
いわゆるジェンダーの問題です。社会的性差をなくし男女の機会均等を実現するために、ボート競技でも率先して男女同数種目に改善しようというのが今回の流れです。
(以前言ったように、それならばLM4-とLW4-にしてほしかったという個人的な意見もありますが!社会的体格差をなくし身長の機会均等を実現してほしいです笑)
このように男性と女性はそれぞれ等しく自己実現できる社会となり、チャンスを公平に用意していく働きかけが必要なのです。そのために、私は体格が優位な選手だけ優遇されるべきとは全く思いませんが、今のところは困難なチャレンジを奨励し誰もがボートで強くなる環境を第一にしながらも、その夢と可能性を示す役割としても代表選手の活躍は欠かせないと考えています。女子の代表も、普通の選手も、もっともっと活躍し輝くべきです。


そういうわけで、女子ボート選手は種目も増え、これからますますチャンスが広がります。
インカレでも男子と同じ種目数になって男女どちらも同じようにハイレベルで盛況な競技の状況を作り上げていかなければいけません。今は大学ボート女子の競技者数が少ないために男子8種目女子4種目となっていますが(2016インカレ出漕人数は男子746人に対し女子240人)、インハイや代表レベルとともに大学でも同じ種目数を常に実現し、そして女子ボート競技者の数自体をますます増やしていかなければいけませんね。

2016年高体連 加盟・登録状況の資料によりますと、全国の高校ボート競技人口は2016年8月時点で、
高校男子 3,174人(217校)
高校女子 1,784人(189校)
高校合計 4,958人
となっています。実数というよりは登録部員だと思います。
「平成28年度加盟登録状況(90KB)」PDF版

高校女子ボート選手は、男子のほうが多いとはいえ人数としてかなり多いのです。大学、社会人と進むにつれ激減することがお分かり頂けると思いますが、当たり前のように競技継続する意識や環境を育てていけば、女子が男子と同じ種目数、状況で日本でもボートができるようになっていくのではないでしょうか。
※ブログ関連記事
「ボート普及における他競技との比較①」
「ボート普及における他競技との比較②」

ただしこれも、高校ボート競技者を10年かけて2倍くらいには持っていきたいところでしょう。高校ボートが1万人、大学ボートが5000~6000人という現在の2倍の規模で男女同数に限りなく近い状況を目標に掲げていく。

いま、ボート指導者も若い世代が少しずつ増えてきていることも感じています。大学はもちろん、全国の高校中学ボート指導者の皆さん、新規競技者獲得にいっそう力を入れていただき、大きな体格小さな体格それぞれに合った心技体の指導にますます尽力されていってください。そしてボート競技を愛し日本ボートに関わる人たちをもっと多くしていきましょう。



能力だけでなく素晴らしい人間性も備えた女子ボート選手が増え、女子にも男子にも夢を与えるスーパーアスリートが多く育ち、東京五輪、そしてその先もいつまでもチャレンジすることの大切さを伝えていってほしいと思います。

スポンサーサイト
Secret

TrackBackURL
→http://rowingcox.blog.fc2.com/tb.php/305-6ea389c2