2月11~12日、FISA臨時総会が東京で開かれました。

臨時総会で可決され、国際オリンピック委員会(IOC)へ提案することになった主な項目は次の通りです。
・2020年東京五輪では男女同数の7種目を実施する(2016リオ五輪は男子8種目、女子6種目)。
・五輪種目のうち「男子軽量級舵手なしフォア(LM4-)」を削減。新たに「女子舵手なしフォア(W4-)」を追加する。
・五輪を含むすべての男女舵手つき種目について、Coxの性別を問わない(男女どちらでも可)

・パラローイング種目はレース距離2000mとする(現行は1000m)、など

現在、高校、大学、社会人でトップをめざし五輪出場を目標に頑張っていらっしゃるボート選手の方にとって重要なのは、赤文字にした部分でしょう。パラローイングも距離2000mにするのはものすごい変更だと思います。




軽量級種目の削減。LM4-種目が五輪からなくなる!昨年からこのブログでもLM4-存続のアイデアを出してきましたし私個人も日ボにそうした意見を提出したのですが、残念ながら五輪種目からなくなってしまうことは確実のようです。(とはいえ、私自身大好きな種目ですので、今後五輪にLM4-種目復活も希望しています!)
しかし、こうなったからには日本ボートのこれまでの考え方を改めるしかありません。「軽量級なら勝負できる」として軽量級に絞った強化体制を組んできた20年間でしたが、「ボートの基本は、無差別級。世界のオープンで勝てるクルーを育成し強化していく」という、日本ボートが根付いて以来100年間掲げてきた考え方に立ちかえればよいだけです。



まず、日本ボートとしてLM2X、LW2Xの軽量級2種目を軽量級チームのトップクルーに据える体制は引き継いでいきます。セコがLM4X、LW4X、そして個々の艇速を高めるLM1X、LW1Xも活用し世界選手権でいずれもFinalAに常時進出する、こうした基本線は変わらないでしょう。世界随一の軽量級スカルチームを男女ともに築くことが日本ナショナルチームにおける生命線だろうと思います。
また、LM4-が五輪でなくなったといっても、世界選手権ではずっと行われるはずですので、依然軽量級スイープのトップクルーとして、特にU23以下の若いクルーに経験を積ませる花形種目として世界選手権Final AをめざしゆくゆくはLM2Xをめざしてもらう位置づけでもよいのではないかと思います。世界で1つの種目で結果を出せば、自信と経験になり必ず他の種目でも花開くきっかけになる。そのことは歴史を見ても世界ボートの常識でもあると考えます。


そして、ここがより重要ですが日本重量級チーム、すなわちオープンウェイトチームを発足する。オープンの資質をもつ日本ボート界の選手は限られていますが、決して少なくはありません。海外の状況を過去いくつか調べてきた私からすると、男子が185cm85kg、女子が170cm68kgあたりが最低水準と見ていまして、身長はもう少し足りなくてもパワーとエルゴと有酸素能力でカバーできます。体重はこれくらいないと、エルゴ男子6'00切り、女子6'45切りは難しいからです。(不可能ではありませんが)

例えば、以前調べたドイツM8+。ロンドン金、そして2013~2015世界選手権準優勝、リオ銀のクルー。
ドイツM8+
Sハンネス・オーチック(190cm91kg、25歳)
7リヒャルト・シュミット(186cm74kg、29歳)北京M4-6位、ロンドンM8+金
6フェリックス・ドラホッタ(199cm99kg、27歳)北京M2-4位、ロンドンM2-7位
5マクシミリアン・ライネルト(195cm92kg、27歳)ロンドンM8+金
4エリック・ヨハネセン(193cm92kg、28歳)ロンドンM8+金
3アンドレアス・クフナー(196cm92kg、29歳)ロンドンM8+金
2マルテ・ヤクシック(193cm88kg、23歳)
Bマクシミリアン・ムンスキー(195cm88kg、28歳)
Cマルティン・ザウアー(168cm55kg、33歳)ロンドンM8+金

公表データとしてこのような体格となっていまして、ドイツM8+の平均身長193cm、平均体重89kg。
これに比べて、リオ金のイギリスは平均身長196cm、体重98kg(推定)。ドイツのほうがやや小柄です。
特にドイツ7番には186cm74kgのシュミット選手が乗っています。これは特殊な例でこんな軽量級選手みたいな数値なのか公表体重は少し怪しいですが、クルーの中にはこういう選手もいます。
また、リオM2X金のクロアチアは、バウのマルティン・シンコビッチ(弟)は186cm100kgで6000mエルゴ18'03(Ave.ほぼ1'30)のエルゴキングですが、ストロークのヴァレント・シンコビッチ(兄)は公称184cm82kgです。

オープン選手の中にも、リオ銅イタリアM4-は以前紹介したように
Sジュゼッペ・ヴィチーノ(193cm85kg、23歳)
3マッテオ・ロド(197cm82kg、21歳)
2マッテオ・カスタルド(186cm80kg、30歳)
Bマルコ・ディ・コンスタンツォ(175cm83kg、24歳)
というトップクルーもあり、体重的にイギリスほど筋肉マンではないし、バウペアなどは日本人選手と変わらない体格と言えます。
※と、思ったらバウは五輪本番でドミニコ・モントローネ(189cm91kg、30歳)に代わっていました。多少身長がなくても大丈夫という話をしたかったのに、ちょっと説得力に欠ける材料ですね(苦笑)

さらには王者NZキウイペアにあと2.8秒差のリオ銀南アフリカM2-はSショーン・キーリング(192cm89kg)、Bローレンス・ブリテン(184cm77kg)のクルー。バウのブリテンはオープンにあっては決して大柄ではありません。しかもこの選手、SNS情報で先ほど知ったのですが2年前世界選手権後にホジキンリンパ腫というがんの一種を患い化学療法で治して復帰したということです。その精神力、体格もさることながら、お兄さんがあのロンドン金のミラクル南アフリカLM4-のメンバーであり、2番のマシュー・ブリテン(184cm70kg)だそうです。お兄さんはロンドンで引退し、M2-相棒のキーリングもリオで引退とのことですがローレンス・ブリテンは東京はまだ遠いとしながらも今シーズン世界一を目指すと意気込んでいます。興味ある方はWorld RowingのAthlete of the Monthをご覧ください。

ただし各クルー共通するのは、身長が180cm前後の選手が数人いても、それはエルゴと技術がすぐれている前提で、さらにこうしたオープン基準ではやや小柄と言える選手のほかに190cm級でさらにものすごいエルゴ値を持つエンジンとなるパワー漕手が必ずクルーには欲しいということです。ですからここの人材を、ボートの新勧、もしくは他競技転向やトライアウトで新規に獲得しなければいけない。技術は最初劣るでしょうが、もともとボート競技で育ったテクニックが高い既存の選手とクルーを組み、優れたコーチをつければすぐに才能を発揮するでしょう。
オープンで世界の上位にいくには、そうするとトップ4人ほど(190cm90kg超級)が5'50、次点の選手(185cm85kg級)が6'00切りはやはり必要な基準となります。その中で95~100kg級の選手などが5'50切りを見せてくれると、日本のボートも変わってくると考えています。


女子は、W1XやW2Xについては175cm70kgくらいほしいところではありますが、リオ金ドイツW4Xは平均178cm71kgですが、ストロークは172cm76kg、バウは173cm69kgです。ミドルペアが180cm台の長身選手なのですが、クルーボートなら身長は多少低い選手がいても勝負できるかと思います。W8+は特殊な世界で、リオ金アメリカW8+などは平均183cm80kgです。日本女子バレーボール代表でも主力選手のような体格を8人揃える必要がありそうですが、私の考えではやはり求められるのは175cm68kgの基準ラインでありその上でエルゴに秀でている必要があります。
W2-、W4X、W8+に加えW4-が新種目となったのですから、一点突破で重点種目を絞り最強クルー編成をめざすのもありでしょう。狙い目はやはり新設のW4-か。ジャパンW4-金メダル計画を発動し、全日本選手権に種目追加しても面白いのでは。他競技経験で175~180cmの体力優秀な選手を2~4人獲得し、ボート経験で170cm前後65kg前後のトップ選手で組みW4-とW2-を核にクルーを作るようなイメージで、強化する。ジャパンW8+は人材が揃わないといけないしもう少し日本の女子エイト文化そのものの成熟も必要かと思います。W2-はイギリスW2-と勝負するには6'55~7'00、W4-は五輪優勝なら6'25くらいが最低必要で、ほぼインカレ男子決勝くらいのレベルであり女子(75kgあたり)でエルゴ平均6'40は確実にほしいところです。6分30秒前半の世界トップレベルの女子も1人か2人ほしい。
ちなみに、W2XとW4Xでもほぼ体力レベルは同じです。W2Xで6'45、W4Xで6'15あたりの艇速が必要で、これらタイム基準はほぼ男子オープンでのタイム基準+40秒という数値になっており、世界の男女のレベルはだいたいタイム差40秒というたいへん高い女子のレベルがおわかりいただけると思います。
五輪女子種目が増えて、ますます世界での女子のレベルは上がっていくことでしょう。

いずれにしても現状で選手の皆さんは、男女で自身の適性や骨格も考慮しつつ、大柄な選手はもちろん何とか男子175cm以上、女子165cm以上の漕手はオープン挑戦を視野に入れて体重すなわち筋量の増大をしていく計画をボート界全体で奨励する必要があります。(もちろん有酸素トレーニングと並行して)




どの種目を重点種目とするか、そこは実際は強化部と代表コーチの好みなども出てくるかもしれませんが、日本の得意種目を決める選択にもなるかと思います。
私などは、やはりどうしてもCOX出身でもありスイープが好きなのですが(笑)、それはもちろんCOXが乗れる五輪種目はM8+とW8+だけであり、自分が出れるというところは選手には最も重要な問題です。(もちろん、スカルも大好きですよ!)
そういう点から、特にM8+については今回がむしろ腹を決めてJAPAN8+プロジェクトを立ちあげる好機ととらえて、M8+の世界制覇をめざす第一歩にしていただきたいなと思っています。
それは日本ボートを育ててきた先人の方々、大先輩たちの夢を継承することでもあります。ボートの世界挑戦に関して日本は新興国ではないのだから、8+でチャレンジし世界の表彰台に立つことは日本ボート悲願でもあるはずです。1928年アムステルダム五輪に出て以来、2028年には日本ボートが五輪に挑んで一世紀となるようであり、100年の挑戦で必ず達成したい夢。
ぜひとも8+を核としたオープン強化策をお願いしたいと思います!日本ボートのリーダーによる決断と舵取り次第です。切にお願いいたします。

とにかく人材を集め、さらに世界トップの海外のコーチをもっと招聘するなどやり方、戦略の道すじは無限にあります。オープン強化のためにはギザビエ・ドルフマン氏に加えてさらにフランスの見識豊かなトップコーチを1人2人ともっと増やしていくのも良いかもしれません。せっかくですからギザビエコーチと共通する哲学をもったコーチでないと一貫性が作れませんからね。実績あるコーチを、きちんと調査して検討を重ねた上で日本ボートに強い思いをもってくれると確信できる方を招いてほしいです。
そうなるととにかく資金も本当に必要になってきますが、そもそもお金を工面するのは何の事業を成し遂げるにも必ずついて回ることです。そこをあきらめていると全てあきらめなくてはいけなくなります。

ナショナル・スポーツディレクターに就任したギザビエ・ドルフマン氏の日本代表に対する考え方はこちらも参考に。元日本代表I本さんとの対談です
「ギザビエ氏インタビュー前編」(PDF版)
「ギザビエ氏インタビュー後編」(PDF版)



オープン種目強化についてはぜひ積極的にすすめたいと、O久保会長も、ギザビエコーチもともに意見が一致していると聞きます。
チャレンジは、困難だからこそやりがいも成長ももたらしてくれます。オープンの著しい強化は、必ず軽量級の大幅なレベルアップももたらしてくれますし、国内ボート競技のレベルアップも間違いなく促進してくれるでしょう。

強化、そして広報や普及のほうも活性化して、決意と覚悟を新たに東京をめざしてボート界が戦略をもって邁進してくれることを望んでいます。

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