今回のテーマは、リギング。艇やオールのセッティングについてです。
厳密には、クルーマネジメントの範疇に入るテーマかもしれません。まさに艇や道具を調整することは、練習効率を高め、クルーの艇速につながることだからです。
COXもしっかりとリギングの重要性について学び、理解して、漕手がRowing動作において艇環境にストレスを感じている際に調整や確認をしてあげられるように、マネジメントしていきましょう。

とはいえ、私自身がリギングについてだいぶ不勉強で、リギングの重要性を知りつつも理解が不十分だったところが正直ありました。いちおう最低限の知識は持っていても、そこまで深く考えたことがなかったのです。実は当初、COX特集のテーマに入れてはいたのですが、連載回数が多くなり過ぎてきたので後日に見送ろうかと考えていました。しかし、ちょうどリギングをテーマにしてほしいというご要望を頂きましたので、それならとここでとりあげることにしました。
今回、色々調べて記事を書いているところがありまして、書いている私自身が勉強になっている気がします。やっぱり、自分で調べて考えないと、理解はできないものなんですね。まだまだ、勉強不足を痛感します。

色々なサイトなどの情報を参考にしつつも、私なりの見解を加えていくといういつものスタイルで考えていきたいと思います。



1.Rowingにおけるリギング、Rowing工学
少し変わった観点からリギングをとらえていきます。
Rowingは水上のF1です。
COXがコックピットに搭乗し艇を操縦するF1のドライバーであるとしたならば、漕手は高性能・高出力エンジン。基本的にはこのエンジン性能がスピードの最大値を決めます。水をキャッチするブレードは、路面を力強くグリップするタイヤであり、近年の流体抵抗を減らし剛性を高めた美しい流線型フォルムの艇のボディは、空気抵抗を極限まで減らし軽くて堅剛なマシンのボディに酷似します。(F1マシンはタイヤ剥き出しなどの規定があり、空気抵抗減少よりもむしろ車体を下に押さえつけ安定させるダウンフォースを得る形状やパーツが重要らしいのですが)
ハンドル・クラッチ・ブレードはエンジンからギアを通じてタイヤに至る駆動伝達経路となりますが、これは漕手の関節も同様です。エンジンの出力をフルに生かせるように身体の関節と同じく艇を駆動する関節として狂いのない、伝達効率を高める調節が必要です。

オールのシャフトは力をダイレクトにかつしなやかにつなげる上肢の筋の延長といったところでしょうか。シャフトのスリーブ部分、ここがクラッチと噛み合って艇を推進させるジョイント部分であり、トランスミッションとつながって動く車輪の回転軸であるドライブシャフトの機能と同じです。車においてはタイヤが路面をグリップして軸回転の動力で車体の重さを駆動しますが、Rowingにおいてはブレードが水を捉えて力強くグリップし弧を描くクラッチ回転での動力で艇の重さを駆動します。

さらに動力源としては、漕手の下半身・体幹を中心とした筋力がエンジンとなり、いくつも関節を経由していきますので、この伝達がうまく「つながる」よう、エンジン系統(漕手自身)、ストレッチャー、シート、レール、クラッチ、リガー、オール(ハンドル、ブレード)と、さまざまな位置や角度や長さを調整、セッティングをすることが「艇速」のアップに関わってきます。日頃の手入れやメンテナンスも重要ですし、消耗したら交換も必要です。漕手(エンジン)の特性に合った道具(パーツ)を採用することも、セッティングといえるでしょう。
エイト、リギング

漕手はエンジンでもあると同時に、ギアのトランスミッションでもあり、そして自ら各部位を整備しセッティングするメカニックでもあります。(もちろん、COXだけでなく漕手自身が乗り手でありドライバーでもあります)
それぞれを整備しメンテナンスをして、推進効率を高めるために調整をしていくのは、ドライバーであるCOXとしても当然というわけです。あるいは、実際には漕手の感覚によって調整していくので、F1ドライバーがメカニック(整備工)に全体の艇の推進力や推進安定について不具合や要望を伝えるように、COXは漕手に色々な要求をして情報を提供できるといいですね。エンジンの出力アップと効率(漕手の体力、技術)、排気の調整(呼吸)、ピストンの具合と回転数(リズム、レート、出力)、ギア周り(ストレッチャー、シート、クラッチ、インボード)などなど。さまざまな調整をしてください。

このように、リギングとは艇速を高めるために推進効率を向上する調整であり、マシンのセッティングにたいへん似ている調整作業なのです。
リギングとは技術です。身体の姿勢や関節、イメージを調整し艇速に変えていくのが、通常は技術と呼ばれます。リギングは、いわば艇の姿勢や関節、艇を理想的に動かすイメージに合わせた調整、セッティングです。ですから、身体に対するアプローチと同じように、リギングも技術調整の一つと考えるべきなのです。
昔、「よろしくメカドック」という漫画がありました。艇にチューニングをほどこすのです。モータースポーツに関わる人たちは、マシンへの愛着が半端じゃないですよね。Rowingも、身体と艇と道具が資本であるわけですから、これらをよく知ることが大事です。身体を理解するのと同じように、艇と道具にも愛情をもって接し、より深く関心をもって理解していきましょう。

ここではF1に例えてみましたが、Rowingは、単にスポーツであるだけでなく、このように工学と深い関わりがあります。物理学であり、生理学であり心理学でもあります。社会学や経営学、経済学や法学、教育学も内包していると思います。Rowingは科学だと言われるゆえんですが、さまざまな学問に通じているわけです。知的好奇心は、モチベーションとなります。
ところで文学部出身の私は、Rowingは文学だと思っています。Rowingは、ことばが大事ですから。もちろん、これはどんな世界や文化にも通じる普遍性ですが・・・。



2.いつリギングやるか?今でしょ!
リギングに関しては、所属チームの中での標準値やコーチによって指定されたリギング値があると思います。
リギングを行うタイミングは、
①新艇も含め、リガーその他解体された艇を最初に組み立てるとき
②新しくクルーを組んだとき。あるいはメンバー交代やシートの順番を変更したとき
③漕いでいて、不具合を感じたとき。漕ぎにくく感じたり、自ら漕ぎ方の中で調整の必要を感じたとき
④コーチやビデオなど客観的な目によって、調整したほうがよいと判断したとき。促されて。相談の上で
⑤整備不良やアクシデントによって、部品の修理や交換をしたとき
⑥しばらく漕いでいると徐々に歪みや狂いが生じるので、定期や必要に応じたタイミングで。日々のチェック、レース前整備

だいたい、このようなときでしょう。リギングをした後は、いわゆるリギング乗艇、試漕をして、しっくりくるかどうかの確認をしていると思います。感覚でも見た目でもおかしいところがないかどうかを、実際に漕ぐ中でチェックと調整を繰り返します。


全国高校選抜、インターハイ、国体本選などでは「配艇」という方式をとっていますよね。「配艇」とは、艇の性能の差によって実力差が左右されないよう公平を期するために、あらかじめ主催運営側が用意した艇を貸し出しそれを使ってレースをするという仕組みです。各クルー決められた時刻に受付をして艇が割り当てられるのですが、それがレースの80分前とか90分前などと限られた時間となっています。できるだけ早く正確にリギングを完了してレースに向かわないと、練習時間が思うようにとれなくなってしまいます。大学や社会人で国体に出る予定のない選手には馴染みのないルールですが、リギングは効率良く、手早く正確に作業するのが選手には求められます。

ちなみに、主催者側が用意する艇の数はもちろん限られているので、レースが終わったら大会本部に返さなければいけません。レーススケジュールに関係してくる理由でもあります。学内や社内のナックルレガッタをやっているチームなら、要領は分かるでしょう。一つの艇を一日にうまく使い回していくので、例えば午前中に沈してしまった1×艇が配艇されたので、水抜きからはじめるなんてこともあるそうです。配艇は時間との戦いなので、作業はチーム総動員。帯同するサポートメンバーが活躍するときでもあります。後輩の高校経験者に聞いたところ、早いときは15分でリギングをすべて終了させるときもあるらしいです!うーん、やはり熟練と効率化が必要ですね。

大学、社会人のほとんどのレース、そして高校の予選などはいわゆる「自艇参加」。日頃からリギングを済ませているわけですが、遠征でこの自艇を輸送するとなると、現地に到着してから組み立ててリギングから始めますので(現地でレンタルするケースでも同じ)、当然リギングに要する時間は短縮できたほうがいいわけです。

自艇や配艇は、それぞれメリットとデメリットがあり課題はあるのですが、ボート選手ならば早く正確にリギング作業を行う能力はとても大事であり、そのための理解力も必要になってきます。配艇に縁がなくても必ず求められるリギング能力。正しい計測方法と工具や部品の準備や扱い方、効率のよい計測順序や段取りなどを覚えましょう。



3.リギングとは?
そもそも、リギングとは何でしょうか。
今回の記事を書くにあたり、色々なサイトやブログ記事をかなり参考にさせていただきました。ほかにも色々参考にしています。

それによると、艇・オールの各部分を、漕手に合わせ、また水面など漕ぐ環境に合わせて調整するのがリギング。艇や各部品の組み立て・解体・調整、ボート競技ではこれらのセッティング作業を総称してリギングといいます。
所属チームには、「このような漕ぎをめざす」という技術イメージの方針がありますから、それにしたがって決めた標準の数値やコーチによって指定されたリギング値を基準にします。リギングには考え方がよく表れています。これらの数値は、オーソドックスに日本人の標準的な体格に合わせたところもあります。しかし、伝統として受け継がれてきても近年艇やオールが新しくなってきたために実情に合わないものや、艇ごとの喫水などクルーによって合わない場合もあるので、感覚として理解しておくのが必要なところでもあります。

漕手の体格に応じて、または特長を生かすために、この基準値から最も自分の現状に合うものに調整をします。自転車で、最も自分の体力に合ったギアに設定したり、脚の長さに合わせてサドルの高さを変えたり、ハンドルの位置や幅を変えてグリップを握りやすいものに交換するなどの行為と、基本は全く同じことです。自動車で、新車や前に乗っていた人の状態から、シートの座席などの位置や角度を調節して自分仕様に合うように座りやすくしていくことと、何ら変わりはないのです。
ただしボートのリギングでは、乗艇中に調節できる箇所もありますが、陸に上がった時にしかできない作業がほとんどです。この作業を面倒だと思わないでください。モータースポーツもサーキットではなくピットや整備工場でしか整備できないわけですから、同じようなものだと思います。調整を繰り返して、自分にうまくフィットした感触を見つける楽しみがそこにはあるはずです。
リギング③

ボートでは、漕手の体格や漕ぎやすさに応じてストレッチャーの位置や高さ、角度を変えたり、ワークハイトの調整をしていきます。あるいは、ブレードピッチ(角度)の計測とメンテナンス、艇種やクルーによってオールのインボードやリガースプレッド(スカルではスパン)の設定などがあります。これらはどの姿勢が一番漕ぎやすく出力の効率が良いのか、自分のリーチや身体の各サイズに合ったポジションはどうなのか、まずは自分の身体と技術に合った数値に調整していくという考えに基づいています。
そして、クルー全体としての推進効率へと、バランスを整えていきます。クルーの中で、基準となる漕手、推進効率のよい漕手を基準に、「最も艇が走るポイント」に合わせて調整をかけていきます。その漕手のストローク範囲や効率・リズムに対し、やや小さい漕手、やや大きい漕手にとって、リギング、技術、パワー、リズムといった具合に各部を調整します。
全員で同じ水をキャッチして楽に力強く漕いだ時に、全員で同じボートの加速が得られるように、オールの長さを中心に設定を変更したりします。COXやコーチはこの見極めが重要だと思います。

ちなみに、この基準となる推進効率のよい漕手とは、整調や真ん中など、クルーの前寄りに配置することが多いはずです。野球の打線やサッカーやバスケやバレーなど、監督やコーチは、ポイントゲッターや優れたゲームメーカーといった主力選手を中心としたチームづくりをするはずです。チームとして効率良く機能するために、主力を基準として全体を調整していく。
それに対しバウや後ろ目のポジションというのは、こうした基準となる漕手やクルーの全体にうまく合わせられる調整能力が高い漕手が良いと思います。バウは、クルー全体と調整して推進効率と調和でき、かつ全体を見渡しリズムを修正したりコントロールできる能力が必要な、特殊なセンスが必要です。ダブルやペアのバウはもちろん、フォアやエイトもこのようにバウの役割は大きいです。
役割が異なりながらも、ボートにおいてはこうした基準値からメンバーは離れすぎず、体格やパワーや技術がなるべく高いレベルで均衡していることが望ましいですね。しかし現実的には同じ人間はいませんから、こうした個性をうまく調整して、全体の効率として最大のものを表現するというのが組織であり、チームスポーツであるといえるのです。



4.リギングの基本
おやじスカラーさんは、リギングは2つの目的があるとおっしゃっています。
①漕ぎやすくする(漕手が艇上で、自らの力を100%出し切れるようにする)
②推進効率を改善する(漕いだ力が可能な限り、全て推進力になるようにする)

①では、例えば陸上のエルゴで出せるパワーを、艇上でもしっかりと発揮できるようにするということです。パワーを出すことを阻害する要素を、リギング調整によって修正できます。例えばブレードピッチが適正な角度でなく、切り込んだり浮いたりすると、しっかりブレードでキャッチできず、バランスが悪くなり思い切り出力することができなくなります。こうした際に、クラッチのブッシュ角度を調整したり、ストレッチャー高さや角度を調整したり、ワークハイトを調整して漕ぎやすくしていったりします。
要は、艇上で、エルゴ並みに安定して思いきり力を発揮できるようにするということです。

②は、エルゴの値が最も良い漕手が、水上で必ずしもトップになるとは限らないのは、推進効率の差によります。例えばモーターボートでいかに出力の高いエンジンを搭載していても、このエンジンの推進機構であるシャフトやプロペラの軸にうまく伝わらなかったりすると、エンジンの出力は小さくてもよく整備されて効率良い推進器のボートに、スピードで負けてしまうということです。

リギングによって推進効率が悪いというのは、例えば以下のような場合です。
・ブレードピッチが適正でないと、漕ぎにくいだけではなく、漕手の力が上や下に逃げてしまい艇を推進させる力が分散してしまう
・ストレッチャーの前後位置が適正でないと、理想的なローイングアーク(振り角、ドライブの弧)がとれず、漕手自身も力強いポジションと合わない。(ストレッチャーを前に出しすぎるとキャッチ角度がつきすぎて艇を横から押す力が大きくなって艇を進めるベクトルの力が弱まる、フィニッシュ角度が浅すぎたり、詰まったり離れすぎたりする)
・ワークハイトが低すぎると、ブレードが水面と近くなりラフコンで水を叩きやすくなったり、高すぎると強い力が伝えにくくブレードの一枚キープが難しくなり浮いてしまう

推進効率については、漕手の技術やリズム、艇の性能なども影響がありますが、正しくセッティングされた艇に乗ることが、漕手の動きよりもまずは前提なのです。
合わない角度や身体のサイズと全く違う設定のまま漕いでしまっては、効率の良い艇の動きなど望めないし、ましてや安定してスピードを出すことなどかなわないのです。
推進効率を高めるには、リギングなのか?技術なのか?この判断ができるようになってください。
例えば、エルゴでハンドルを波打って漕いでいるような技術レベルでは、そもそも真っ直ぐ力を伝える身体技術がないので、原因はリギングというより漕手にあるということです。


おやじさんは、リギング情報をたいへん豊富に記述してくださってますので、ぜひ各テーマについて参考にしてみてください。
リギングその1(リギングとは何か?) 今の項では、かなりこの記事の内容をなぞってしまいましたね。すみません・・・。
http://d.hatena.ne.jp/oyajisculler/20040929

リギングその10(リギングに関するインデックス)
http://d.hatena.ne.jp/oyajisculler/20041022

以前も掲載させていただきましたが、技術関連ログとしてインデックス集。
3.リギング情報、4.オール関係、5.船型及びリガー形式
http://d.hatena.ne.jp/oyajisculler/20120820

World Rowingでのコーチング・マニュアルなどや各メーカーのサイトも含めて、幅広くリギングや艇・オールの情報を得て、自分自身で考えるための参考にしていくとよいと思います。



5.スカルとスイープ、オールの設定とギア比を決める
これ以降は、リギング設定と調整について、各々の計測箇所について見ていきます。

スカルは漕手がオール2本、スイープはオール1本をそれぞれ扱います。
スカルもスイープも艇速を効率良く高めるために、Rowingの長い歴史の中でそれぞれが最適なオールの長さやサイズに収まってきたのだと思います。現在主流のビッグブレードにおいては、昔のマコン型ブレードよりも水の掴みが良くなったぶん負荷も高いため水中が重くなっています。そのぶん、ギア比(てこ比、またはレシオともいう)を調節するためビッグブレードのオールはマコンよりやや短くなってきています。現在はさらにオール全長が変えられるアジャスタブルのタイプがほとんどです。

インボード、アウトボードを調節して、水中の負荷と艇の進みに関わるギア比を設定します。クラッチの内側のオール長がインボード。外側がアウトボード。アウトボードが短くなると、水中が軽くなってスイスイ漕げますが、艇速があまり出ません。アウトボードが長くなると、水中がぐーっと重くなるぶん、一本で艇速が伸びます。自転車のギアと同じです。自転車のギアと違う点は、その場でギア比を変えられず、揚がってからカラー(オールのつば)の位置を変えるしかありません。1cm変えると大きく違いますが、リギングは感覚と結果で試してみるのが大事です。

オーバーラップの問題があります。スカルでは左右のハンドルが交差する長さ、スイープでは中心線より外側にはみ出すハンドルの長さ、これをオーバーラップといいます。このオーバーラップはいつも一定にするのが基本です。乗り替わって、艇種やシート順が変わっても、ここは同じ感覚で漕げるようにするためです。
インボードを1cm短くしたら、リガースプレッド(スイープでの艇の中心線からピンまでの距離)やスパン(スカルで左のピンから右のピンまでの距離)も1cm短くして、差し引きでオーバーラップが変わらないようにします。

例:オール設定(ビッグブレード) FISA World Rowingサイト「コーチング・マニュアル」より推奨値、クラブレベル
スカルは艇種共通(1×、2×、4×、4×+)
Men   スパン:158-160cm オール全長:290cm インボード:86-88cm オーバーラップ18-22cm
Women スパン:156-158cm オール全長:288cm インボード:86-88cm オーバーラップ18-22cm

スイープ 艇種別
M2- リガースプレッド:87cm オール全長:374cm インボード:117cm オーバーラップ30cm
M2+ リガースプレッド:88cm オール全長:374cm インボード:118cm オーバーラップ30cm
M4- リガースプレッド:85cm オール全長:374cm インボード:115cm オーバーラップ30cm
M4+ リガースプレッド:86cm オール全長:374cm インボード:116cm オーバーラップ30cm
M8+ リガースプレッド:84cm オール全長:374cm インボード:114cm オーバーラップ30cm

W2- リガースプレッド:86cm オール全長:372cm インボード:116cm オーバーラップ30cm
W8+ リガースプレッド:84cm オール全長:372cm インボード:114cm オーバーラップ30cm

女子は、インボードやスパンなどが男子とほぼ同じですが、オール全長を2cmほど短くするぶん、アウトボードが短くなってギア比が小さくなり、女子に見合った水中の重さになります。
日本人はFISA推奨値よりもややオール全長を少しだけ短くしたりすることで、体格やエルゴに合った設定をしてもよいと思います。上記はあくまで海外クラブ向けですが、日本人選手にもじゅうぶん適用できます。ちなみに、オープン級のナショナルチームは一般にオール全長を長くしギア比も高めに設定していますが、これも体格やエルゴに合わせて調整しているということです。
これらのオール回りの設定値は、できるだけクルーで統一するとよいだろうと思います。


FISAのマニュアルによると、オールの振り角は、スカルが85~100度、スイープが80~85度がクラブレベルでは最適です。
日本人の大学上位レベルであれば、男子ではスカルが100度(キャッチ角65-35度)、スイープが85度(キャッチ角50-フィニッシュ角35)。女子はスカルが90-100度(キャッチ角65~60-フィニッシュ角30-35)、スイープが80度(キャッチ角45-フィニッシュ角35)といった形でしょうか。スカルもスイープも、フィニッシュの最適角度は30-35度のようですので力強く決まる最適なフィニッシュポジションを見つけたら、あとはいかにキャッチ角のほうのレンジをとるかですが、しっかり脚と股関節の効く強いキャッチポジションでなければ長くとる意味がなくなってしまいます。
こうした振り角は、あまり神経質すぎても意味がないとは思います。トップクルーでもオールの角度がぴったり合わないのは、よくあることです。角度を大きくとるほうが目的になって、力強さを失ってはいけません。しかし、見た目でもキャッチ角度が明らかに足りない場合は、レンジを広げることを意識してみてください。スカルもスイープも、キャッチは前にとろうとするより、横方向にワイドに開くイメージが重要だと私は考えています。



6.ワークハイト、ハンドルの高さ
ワークハイトは、クラッチの高さです。すなわち、ハンドルの高さと水面までのオールの角度を決める設定です。これは、艇やクルーが乗り替わってもなるべく同じ感覚で漕げるようにするために重要なところですね。キャッチ、ドライブ、フィニッシュ、フォワードすべてにおいてハンドルの高さとハンドルを動かすスペース(空間)に関わってきます。
シートの座る最も低い面から、クラッチの、スリーブを置く下の部分までの高さを計測した数値がワークハイト(一般に省略してハイト)です。具体的にどこからどこまでを測るかの基準は、チームで統一をしてください。

一般的には、このワークハイトは14-18cm程度の範囲で調整します。(R大学ではスイープで15.5cm前後でやや低め。)FISAコーチングマニュアルでは16-18cm程度が一般的と書いてあります。ある程度の基準値の中で、個人の感覚で出力しやすくハンドルを動かしやすい数値に調整してください。しかし、クルーの中ではあまりばらつきのない範囲に収めるのが重要です。
また、艇によって、あるいはクルーの重量によって、喫水が変わります。喫水とは、艇を浮かべてどれくらい沈むのかの値。艇の設定より軽量ならやや浮き、重量ならやや沈みます。艇の乗り替えにおいても重要です。こうした喫水によって、水面に対してハンドルの高さが変わりますので、ワークハイトを調節してどの艇でも同じように漕げるようにしていきます。

スカルでは、ハンドルがオーバーラップ時(交差する際)にぶつからないように、左右のハイトに差をつけるのが基本です。
ストサイを基準に、バウサイを上で交差するのが一般的で、例えばストサイ15cm、バウサイ17cmといった形です。そしてこの2cm程度なら交差としては右手を手前に、左手をやや奥にするなどぶつからないように漕ぎでも調整します。(ハイト差を小さくして、前後を完全にずらすやり方もあります。トップ選手や自分で漕ぎやすいものを研究してください)
日本代表コーチからは2.5cm前後くらいはハイト差が必要という情報もありました。これはクラッチでなくハンドル位置で見るとだいたい拳(こぶし)一個ぶんに満たないくらいに交差できる高さになります。左右のハイト差をつけると、キャッチからフィニッシュまでハンドルの高低の差を一定にキープしなければいけません。これらハイトについては、選手の感触、コーチの見た目を合わせて改善しましょう。

また、スイープでは8+などピッチングの揺れが大きな艇種に関しては、ハイトを整調がやや高め、バウをやや低めに調整することがあります。キャッチの際に、ピッチングによってスターンが沈みトップが浮きます。艇が長い8+ですと、整調が水面と近すぎると感じたりバウが水面と遠くなってキャッチしにくいと感じるときは、クルーでの基準値の範囲内で、例えば整調とバウで最大1cmなどのハイト差をつけましょう。
トップCOX艇などはトップが沈んで安定しピッチングが小さい艇ですし、フォアやクォドくらいまでならなし艇でもそれほど気にならないと思いますが、エイトは艇が長く、その上特にカンバスが短いタイプではバウはかなりピッチングを感じやすいと言えるでしょう。



7.ブレードピッチ
ブレードの角度です。ちなみに、英語のpitchは色んな意味がありますよね。艇の両端が上下に揺れるピッチング、ブレードピッチ、これらはピッチが「傾き」「傾斜」を意味するところからきています。また、以前は1分あたりのストローク本数を「レート」ではなく「ピッチ」を使っていましたが英語でもピッチという言葉は使います。実際に声や音などリズムを整えるという意味があり、調節するという意味があります。
それから、ピッチング、ピッチャー。野球の投球、投手という意味もあれば、ビールなどを注ぐ取っ手つきの器、水差しの意味にもなります。度合いや音の高さを示す言葉だったり、あるいはサッカーやホッケーなどの競技場のことをピッチといいます。かなり色んな用法を持つ多義語なんですね。

ブレードは、キャッチ、ドライブ、フィニッシュの局面で浮いてこないように、下向きの傾斜角度をつけます。少し前の項でも言いましたように、これが適正でないと艇を推進する力が上や下に逃げてしまいます。しかし、この角度に関してはあれこれ設定を変えて試すようなものではなく、漕手のレベルに応じてあらかじめ定めた適正値から歪みや狂いがないかどうかをチェックする整備が必要という箇所になります。
ブレードピッチは、ピン角度+クラッチ角度+ブレード(オールのスリーブ)固有の角度、この3つの合計値になります。通常この合計値はFISAによると、初心者が8度、競技者レベルはスイープが5-8度、スカルが4-7度とのことです。一般に、初心者は角度が大きいほど漕ぎやすく、熟練者になるほど角度を浅くしていきます。しかし、大学レベルで当初からインカレ上位をめざす目標であれば、上級生と同じ角度でキャッチや水中技術を磨いていくのがいいかもしれません。

まず必要なのは、ピンの角度が0度、どの方向にも完全に垂直であることをチェックします。そして、例えばC2社のクラッチやオールは、現在ではほぼ固有の角度が初期設定されているということなので(注文時変更も可)、それが使用しているうちに変化がないか定期でチェックをしてください。あとは、漕手の技術レベルや好みの感触に合わせてクラッチに角度調整のブッシュを入れて、1度小さくするなどの調整をしてください。



8.ストレッチャー
フットストレッチャー、つまり足回りの調整です。自動車で「足回り」というと、タイヤやホイール又は車輪と車体を支えてつなぎ、安定して走行させる装置であるサスペンションなどのことをいうのですが、ここでは文字通り漕手の足回りの調整についてふれます。

ストレッチャーは、位置と角度、高さを変更できます。(古い艇では変更できないものもありますが、最近の艇はほとんどが調整可能です)これによって、基本としては脚の出力を生かす調整をしていきます。「足」はfoot、「脚」はleg。ボートにおいてはこの2つを混同してはいけませんので、日本語だと同じ「アシ」と発音しますが、足と脚は明確に使い分けてください。レッグやももの裏、ハムなどと意図的に使うとよいと思います。ちなみに私は「脚蹴り」を、足を強く押すことではなく、脚の出力を上げることだとイメージしていまして、意識する対象は股関節周りです。結果的には足のほうも強く押すことにはなりますが、出力の結果としてより重さがストレッチャーに乗るだけであっていつも出力する筋は股関節周りです。推進エネルギーである体重に関わるために、ストレッチャーやシート、レールの整備はたいへん重要であるわけです。

このストレッチャーの調整こそ、個人の体格やサイズごとに合わせて変える、個人で異なる数値です。急なメンバー交代のときも、ストレッチャー関係のリギングだけは行うと思います。自転車のサドル調整や車のシート座席の調整と同じことですので。


まずストレッチャーの角度は、効率よく体重を乗せるために重要です。個々の足首の柔軟性や漕ぎやすさで調整するわけですが、FISA推奨値は38-42度。私はだいたい42度がよいのかと思っていましたが、たいへん足首が柔らかいために44度といった高い数値に設定する漕手もいるそうです。体の硬い漕手もいると思いますが、下半身を中心として柔軟性はボート競技には必要ですから、身体の調整も必要ですね。

それからストレッチャーの高さ(深さ)。シート最底面からストレッチャーのかかとまでの距離、いわゆるヒールデプスですね。FISA推奨値は15-18cm。こちらも、柔軟性に関わったり、あるいはRowingフォームによってかなり変わると思います。すねが長いと深め、短いと浅め。基本的には、やはり漕ぎやすさによって個々に自由に調整します。私などは、ひざを高くももをよく上げる下半身重視のフォームを志向していたので、高めの設定がよいと感じています。技術やフォームにも合わせた調整ですね。

ストレッチャーの前後位置。クラッチのピンからストレッチャーのかかとまでの距離、いわゆるピントゥヒールです。
一般に身長が高いと大きめに設定し、身長が低いと小さめに設定します。それに加え、手や脚の長さ、柔軟性、漕ぎやすさを考慮します。ここはストロークの振り角に関わってきます。特に推奨値の乗っている資料がなかったのですが、現役選手に聞いたところ、女子は28cm、170cmくらいの男子は32cm、180cmくらいの男子は34cmといった数値が聞かれました。チームで特徴もありそうです。ピントゥヒールの半分くらいが、ヒールデプスになるといっためやすもあるそうです。
ストレッチャーの位置をテール寄りにとると、キャッチが大きくとれますがフィニッシュが詰まります。トップ寄りにとると、フィニッシュは決まりますが、キャッチまで遠くなります。しかし私の考えとしては、まずフィニッシュを力強いポジションで最適な角度に決めたいので、そこの数値をとれればよいと思っています。フィニッシュポジションは、艇の安定やバランス、リズムの起点、フォワードからキャッチまでの安定に関わるからです。ノーフェザー(スクエア)での一枚からの抜き上げがきちんとできるフィニッシュポジションが大事ではないでしょうか。
最も力強く、力が出し切れる姿勢に合わせた、身体に近い位置(グリップが身体に当たらない程度の)でのフィニッシュのオール角度。スイープではフィニッシュ角35度くらい、スカルでは同じくらい、めやすとしてフィニッシュで左右のハンドルの間が10~15cm隙間があくくらいの角度でしょうか?
身長というよりも脚が長い場合、ピントゥヒールは長くとらないとシート終わりのフィニッシュが統一されないので、基本は脚の長さで調整してください。


シートやレールの整備。こちらは、調整というよりも、機能の保守管理、メンテナンスですね。レースでは、オールやクラッチのトラブルと同じく、シートのトラブルも発生しやすく、よく起こるアクシデントの一つです。腹切りやオール接触等の衝撃でシートが脱線して外れたり、シートの車輪(コロ)がうまく回らずキーキー鳴るなどがあります。レール位置は左右同じに揃えて正しく定め、日頃から潤滑油を注したりします。また、シート車輪も滑らかにスライドするかチェックして、シートもレールも老朽化したり修復が難しければ交換が必要となります。

それから最後に、ストレッチャーシューズの大きさ。靴のサイズですね。このへんはコストがかかるので難しいのですが、足のサイズや形はそれこそ十人十色なので、理想は自分専用のストレッチャーシューズがあるとよいですね。実際には、艇ごとに備え付けたシューズを多少合わなくても我慢して履いているかもしれませんが、スペアを用意して自分のサイズに合うものを使ったり、各シートで融通しあったりして、なるべく自分に合ったものを選べるとよいと思います。



9.オール
現在、C2(コンセプト2)社製のオールには色んな種類が出ています。ブレード形状としてはビッグブレード、マコンだけでなく、ビッグブレードの発展形でありブレード面に芯がなく面積をやや小さくしたスムーシー、これをやや幅を厚くして下が丸みのある形状のファットスムーシーです。グリップも種類があり、オールの全長を調整できるアジャスタブルがあります。どれが一番良いとは言えないのですが、好みや特徴に合わせて採用すると良いですね。クルーの中でも異なるオールを使うケースがあります。
クローカーも色々な種類がありますし、スイープオールのグリップはウレタン製(ブルーのラバー)でC2よりも手に優しくて好評です。C2と同じくウッド製も選べます。スカルオールも握りやすいようなオリジナルのグリップ形状です。
そのほかにも、桑野やウィンテックなどをはじめ造艇メーカーもオールを出しています。

C2社製ではシャフトの硬さはSoft(柔らかくよくしなる)/Medium(標準)/Stiff(硬い)の3種類があり、初心者にはSoft、標準としてMediumが推奨されています。Stiffは代表クラスや海外オープン向けに近く、この硬さの選択を誤ると故障の原因にもなります。硬いオールは技術がないと水を逃がしてしまうし、キャッチ技術がしっかりしてきてもMediumくらいの標準でないと、Stiffでは身体への負担が大きいという点があります。ビッググレードと硬いシャフトは人間の身体にダメージを蓄積し、ここ15年ほど増加している肋骨の疲労骨折などにつながりやすいと言われています。体力に合ったしなり(ベンド)のある、しなやかなオールを選択するのも大切なことです。
あるいは、C2よりもしなりが効いて水を逃しにくいと言われ、女子や高校生に人気のあるクローカー社製のオールを選択するのも手です。クローカーオールのシェアも、日本ではかなり大きいですよね。

漕手によっては、しなりが効き過ぎると出力が艇の推進として現れるまで時差があったり、最後のフィニッシュでベンドの戻りがもどかしかったり、ダイレクト感とリズムに影響しますので、漕手の身体の強さや技術、リズムに合わせたものを使うべきです。
「出力と推進」「つながり」「艇の動きや反応を感じるドライブ」は、水中技術としてとても重要です。ハンドル、クラッチ、ブレードはこのダイレクトな接続部分であり、漕手の上肢~脇の筋や、オールシャフトは、下半身や体幹の出力機構とこれら艇に至る経路の接続とをつなぐ上で逃がさずに強くかつしなやかに伝える感覚を大事にしてください。

オールは、漕手にとってまさにOarsmanとしてのアイデンティティ。なるべく自分専用のものを用意して大切に扱い(自費で買ってもらうチームも多いと思います)、グリップ、シャフト、スリーブ、ブレードの各部分を定期にチェックして、手入れもしていきましょう。



10.艇
リギングで最も大事なのは、艇とオールと身体を知ることです。どのように艇を進めているのか、しくみや構造を知ることです。
多くの艇の種類を知って比較することも、自分たちのチームが持つ艇の特性を知ることにつながります。メーカーやモデルによって、艇も実にさまざまな種類と特徴があります。例えば、ハルの素材や構造、厚みや形状、全体の設計によって、乗り味はほんとうに違ってくるのです。ヨーロッパの代表的なE社、F社、アメリカのV社、W社、国産のK社などをはじめ、乗った感触、進みの感覚、いろいろです。そのほかにも、日本になじみがないだけで世界を見るとほんとうに多くのメーカーやモデルが存在します。また、艇の重量や剛性など、あるいはリガー形状や素材によって、ドライブで駆動した時の感覚も当然千差万別なのです。

たくさん艇を揃えるお金がそれほどなくても、人脈が増えたりほかのチームで乗れる環境があって、色んな艇に乗る機会が増えると、世界が広がっていく感じがあり、これもRowingの楽しみや魅力の一つですね。
水を鋭く切り裂いて突き進む感覚、たいへん安定してコンスタントな艇速を感じさせる艇、薄手だが軽量で堅く水をよく感じられトップスピードに乗せやすい艇、厚手で快適かつ水面の凹凸をあまり感じさせずスピードの落ちない艇、ドライブ感覚やスライド感覚を自分なりに表現して、乗り味をいわば鑑賞できるようになれば楽しみ方のステージが上がるといえるのではないでしょうか。そのうちに、こうした艇を見るだけでも乗っている感覚を想像して楽しめるかもしれません。

しかしながら、自チームで所有する艇は決まったものであると思いますので、艇の特長を生かし、自分の身体の特長を生かす進め方をぜひ追究していきましょう。


また、艇については、特にスイープではリガー配置の関係で横に曲げる力が同じ位置で相殺されない構造上、艇自体がねじれてきます。艇のボディにねじれや歪みが出てきて、左右非対称のボディに変化してくると当然直進性が損なわれてきます。ボディ形状の修復はなかなか難しいので、ここではリギングや漕手の技術、あるいはラダーによって直進性を調整するしかないと思います。
艇のボディ自体の歪みの調整は難しいですが、漕いでいるうちに生じるリギングの狂いはきちんと調整することができます。




さて、今回はリギングに関することを大まかに見てきました。
身体と艇の性能をフルに生かしてこそ、パフォーマンスが発揮できるというものです。そういう意味では、艇と道具の特性を理解して、調整やメンテナンスを行うことは、自分の身体を調整しメンテナンスを行うことと全く同じことだといえるわけです。
艇の性能をしっかり知ることが、漕手はもちろんCOXにとっても大事なことなんですね。

ただし、リギングによって、快適さの追求だけにならないように注意したいですね。優先したいのは、クルージングの心地よさよりも、スピード。すべては、2000mのスピードのためのセッティングです。
最も艇速の出せるセッティングを追求していくようにしたいものですね。

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