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COXは、クルーの目標を達成するために練習効率を向上させ、成果を最大限高めなくてはいけません。これらは、すべて「艇速」に関わる働きです。
COXは漕手のように直接艇を進めているわけではありませんが、日々クルーをマネジメントすることによって艇速を高めているのです。漕手がストロークや艇に集中できるよう、トレーニング成果を高められるよう、COXがクルーをマネジメントする。これはまぎれもなく、クルーとしての艇速を高めていることにほかなりません。まさに、「COXが艇速に貢献している」という自負を持って、これらの仕事に取り組んでください。

「クルーマネジメント・練習効率」は、以前も「安全」「レースの勝敗」と並んでCOXが関わる重大な役割の1つに挙げてきました。
まず、計画、準備がすべての始まりです。そして、トレーニングを実行し、管理し調整し、練習目的を遂行します。目標とするレースや体力数値などを常に見据えて、「めざす艇速」へとクルーを導きます。現状把握と目標との進捗状況をふまえ、また計画の調整などを繰り返していきます。ここでは、計画、プラン上の調整も必要ですが、クルー内において個々の漕手との調整がCOXに求められる部分でもあります。

そう、COXは漕手の調整役、すなわちコーディネーターなのです。各部を調整し、調和するように組み合わせたり全体をまとめることがコーディネートの意味するところです。そして方針を示し目標に向けて全体をリードしていくのが、舵取り役のゆえんです。
特に技術的にコーディネートしていくのは、テクニカル・コーディネーター。これは、次回に詳しくふれたいと思います。

今回は、目標設定・計画・実行・評価・改善などについて、トレーニングや漕手をコーディネートして練習効率を高め、Rowingテクニック以外のところでクルーとして管理しマネジメントを行う手法について、考えてみたいと思います。COXとして、調整力を高めていきましょう。



1.目標設定
クルー結成は、チームの目標の下で行われると思います。エンジョイ目的、ボート部として活動すること自体が目的、というチームでなければ、ターゲットとなるレースが存在し、それを目指してのクルーを組んでいくことになるでしょう。
チーム目標に即して、またクルー個々の実力やポテンシャル等を勘案して「インカレ○位」などのクルー目標を設定するはずです。コーチ、クルーのリーダー、COXはここで目標達成という使命を与えられます。すべてここからやるべきことが創り出されます。それはクルーのメンバー全員でしっかりと共有します。

重要なのは、この目標はクルーの実力に見合ったものであるかどうか。現状クルーの評価と把握ができていて初めて目標を立てることができます。現状把握のための情報がないと客観性に欠け、目標に到達するためのトレーニング知識や方法論がないと実現性に乏しい目標になりがちです。とはいえ、高い目標をめざすことは全体の意識レベルを高めるので、目標は、最大限頑張って必ず到達でき、なおかつ高いレベルに設定したいのです。チーム理念の中に、「日本一をめざす」「インカレ優勝やメダル、最終日」を謳う大学チームは増えていると思いますが、シーズン目標やクルー目標はこの理念と整合させるため、こうしたチームはおもに対校クルーがチーム目標を背負うことになると思います。すなわち、対校クルーの実力は、チーム目標に見合うものでなければいけません。

ここで、私の持論ですが、まずタイム目標が先であること。そのあとに順位目標がきます。「この大会でメダルを目標」と言っても、その大会レベルを知らないのに3位以内を目指すのはどうなのでしょうか。また、3位以内を目標にしたのに、目標タイムは3位にはとても足りない数字を出すなどのちぐはぐな設定になってしまいます。
目標がタイムであれば、日々この目標に対し現状がどの段階であるのかが分かります。先ほどから言っている、現状把握ができ、目標に対する進捗状況が分かるので計画や実行の調整が可能です。順位だけを目標にすると、レースに出てみないと分からないなどということになり、準備不十分となります。結果的に、目標を誤ったためにすべてを否定しなくてはいけないということになりかねず、これでは悔やんでも悔やみきれません。

クルーをマネジメントするには、いつもクルーの正しい評価と把握が大事です。そして、目標はこの現状に対して最適か。これを最初にしっかり検討してください。
ただし、強豪チームは現状やや足りずとも、今までの伝統から目標をあえて順位に設定して、足りない現状を目標に到達させるたいへんハードなシーズンプランを用意する場合があるでしょう。強豪の強豪たるゆえんは、目標が高いだけでなく、それに伴った計画と実行ができる人と経験と力とエネルギーがあり、これを毎年継続することにあります。強いチームに入ると鍛えられて意識が高くなるのはそのためです。他のチームから見るととても高い目標が、当たり前の目標意識に変わっていきます。目標だけを高くしてもまだ強くなれませんが、すべての始まりであるため、最も重要なポイントです。
目標設定には、個々やチームに即した調整が必要です。



2.計画
PDCAサイクルのP。プラン(Plan)です。目標設定がプランの中に入っているという考えもありますが、ここでは具体的な方針や行動計画、トレーニングメニュー作成についてです。
チームによって、この計画づくりはコーチ、クルーリーダー、COXと作成する担当は変わってくると思います。最も知識と経験のある者が組み立てて、実行者である選手もできるだけ参画するやり方がいいでしょうね。

目標達成のために、どのような強化をしていくのか。何を主眼においてスケジュールを組んでいくのか。これも現状と目標、つまりスタート地点とゴール地点の両方がはっきりすることで、過程の地図を詳細に描くことができます。そしてこれを詳細に描くためには、トレーニング知識と、Rowing経験とが要求されます。
色々な方法があります。しかし、大事なのはきちんとゴールにたどりつけるかどうかです。すべて目標ありきなのです。
目標達成するために組まれた計画は、当然段階を追って強化し、準備していくプロセスで積み立てるように組まれていき、また目標とするレース日程に照準を合わせるため、逆算して不足なく準備ができるようにスケジューリングされます。

スタート地点で見たときに、ゴールにたどりつくまでに、何が最も必要となるのか。体力(フィジカル)であればパワー、持久力、瞬発力、有酸素能力、筋持久、体幹、下半身・脚、上半身、耐乳酸、2000mエルゴ。技術(テクニカル)であればキャッチ、ドライブ、ファイナル加速、バランス、フォーム、艇を感じる力、イメージ、Rowing感覚。精神(メンタル)であれば、セルフコントロール、モチベーション、目標達成意欲、集中力、プラス思考力、プレッシャー克服、リラックス、パフォーマンス安定。
現状と目標に必要な要素をしっかりと分析し、量や質を決めて、ゴールまでの詳細な生きた設計図を描いて下さい。
いずれを重点課題とするのかによって、計画のメリハリやボリュームが決まってきますが、おそらく重点強化項目はいくつかだけに絞って、あとはバランスよく総合的に向上できるように組んでいくだろうと思います。

ボート競技のメニューというのは、だいたい冬場は基本となる低レートロングを中心にやって、シーズンになると中レート高レートも増え始めて体力と技術の課題を絞って取り組み、レース前はスピード漕・レースペース・実戦形式の割合が多くなる、という決まりきった定番があるとは思います。
しかし、その中で何を優先し、また総合的に強化していくにしても「この練習で何を伸ばすのか」という「練習目的」を計画の段階から必ず明確にしてください。レースが目標なのだから、すべてレースのために必要な練習をしているのです。勝つクルーは、必ず「目標が明確」で、「練習目的が明確」です。勝てないクルーはこの逆で、すべてがあいまいです。目標が明確でないから一つ一つの練習目的も理解や共有ができず、目先の状況に左右されているのでは時間を有効に使うことなどとてもできません。

また、これは個人的な意見ですが、トレーニングメニュー作成だけが目標に到達するプランではないと思います。プランの対象は無限に広がります。
知識や情報、モチベーションを高めるために、講習会、集団レクチャー、個別レクチャー、ミーティングや話し合い、遠征、他団体交流、食事会やレクリエーションなどイベント、なども計画としてスケジュールに盛り込むのが良いと思います。そして、体力だけではなく、練習だけで伸ばすのは難しい技術や精神をアップするために、どこまで計画に盛り込むことができるか?
さらには、体力や筋力のトレーニングにおいては、食事(栄養)と睡眠(回復)をセットにした、漸進性のあるトレーニングサイクルとして計画を組んでいかなければいけません。
トレーニング効率を上げるために、成果の器を大きくするためにできることはさまざまです。

計画作成には、多くのスケジュール、トレーニングの量や質、現状と目標との兼ね合い、練習目的、課題のクリアと段階分け、個人やグループ、など実にさまざまな調整が必要です。



3.実行
PDCAサイクルのD。実行(Do)です。計画どおり、確実に実行するにはさまざまな障壁があります。まさに、日々の調整が必要になるところです。やはり、クルーリーダーやCOXによるリーダーシップと管理・調整能力が必要なところです。
カギとなるのは、時間配分と工夫、徹底力、目的理解、集中力などです。

練習途中でクルーの体調が悪くなったり艇の故障で、上げざるを得なくなった。悪天候になって、乗艇が中止になった。スケジュール上のアクシデントがあって、今日はクルーが揃わない。今日は突然、コースが練習禁止、閉鎖になった。もろもろの準備不足や確認不足で、今日は乗艇ができなかった。最も怖いのは、選手が怪我や病気で、しばらく乗れない、あるいはメンバー交代が必要になった。

すべては、これらのアクシデントやトラブルは織り込み済み、できるだけ想定した上で、計画を立てることです。もちろんこのようなトラブルを起こさない予防や自己管理をするのは大前提ですが、このような不測の事態や、想定外のトラブルはつきものなのです。「予定は未定にして、決定にあらず」という言葉もあります。
今日は乗艇ができない、明日もできない、でも計画は変えられない、ではなくこうした時にスケジュールを調整してください。風が吹き荒れ波が高すぎて乗れないとき、乗艇の代わりに次の日のウェイトやエルゴと入れ替えるなど。週の中でのボリュームや内容が変わらないことを基本に、目標に対して道順が変わってもゴールにたどりつけるように調整をしてください。

その日に練習目的が果たせないならば、週全体として達成できるようにする。週の中でやりくりできないならば、2週間と期限を決める、あるいは1カ月のスパンにして全体のバランスをとる。メンバーが欠けたら、あらかじめ代替のメンバーを決めておき、そのための序列やルール決めをチーム内で調整し作っておく。全員が納得できるように、関係調整を行う。
時間配分をしっかりとできるようになることです。社会に生きる人にとって、お金のやりくりと時間のやりくりは、とても大事な管理能力です(人のやりくりも?)。そして、時間の余裕がない学生や社会人アスリートにとって、期限が決められたり、短い時間で最大限の効率を生むためには、この時間管理能力が欠かせません。制限や期限というのは、逆説的に無限の工夫や成果を生み出します。リーダーやCOXは、「締め切り効果」を時には活用するのもよいでしょう。

計画の時点ではできそうなことも、いざ実行となるとできなくなる。やるべきことをきちんとやりとげる、「徹底力」こそが日常の練習や生活で必要になってきます。強い組織や強い個人にはこれがあります。「当たり前のことが当たり前にできることが一番難しい」などとよく言われます。実行には多くの障害があるからです。しかし、これを乗り越えて克服することで、確実にクリアする毎日を習慣化しましょう。


練習目的を果たすために、クルーでその部の目的(課題、フォーカス、テーマ)を共有します。計画のところでもある程度やっているはずですが、その部、そのモーションごとに、目的を周知徹底します。この目的共有をするには、練習の意味を分かっていなければいけませんので、計画段階でメニュー作成者に、クルーリーダーやCOXがその理解のために関わっておくことが大事なのです。

部やモーションごとに行う事前の目的共有、これは多くは、出艇前にクルーが輪になって行う「クルーミーティング」です。これは岸蹴り前の儀式ではありません。練習目的を果たすために予め行う意思疎通であり、練習プランと目的を確認し、また諸注意や必要な情報の共有を行います。前の項でも言いましたが、勝つチームは、このミーティングが明確です。必ず練習目的をシンプルに伝え、そして徹底をします。目的がはっきりするので、集中しやすくなります。

日々の作業だからと何となく惰性で練習をやるのではなく、目標のレースのために練習をしているので、おのずと気持ちの切り替えができます。意識の高い選手の多くは、練習前に準備をして、あるいは決まったルーティンをして切り替えのための行動をとっています。だからこそ、集中力もぐっと高まるのです。とにかく迷いがない。

うまくいかないクルーは、生活上の悩みなどを乗艇にも持ち込みます。いつも心の迷いを抱え、クルーやチームの気持がバラバラになりがちです。練習目的を意識できず、早く終わってほしいなどと考えてしまいます。たまにはそういう日もあるかもしれませんが、何のために練習をやるのかが分からないほど、意味のないことはありません。
目標達成のために、その日の練習には必ず目的があり、それを果たせたかどうかを日々評価する、それが次の「評価」につながっていきます。
クルーマネジメント①



4.評価
PDCAサイクルのC。評価(Check)です。実行した成果を、評価・測定・把握します。計画に沿って日々、着々と進歩しているか?当初の計画どおり、目標に向けて順調に進んでいるのか?目標への方向がはずれてはいないか?

よくビジネスでは「進捗(しんちょく)管理」という言葉を多用し、仕事や作業が計画どおりに進んでいるのか、捗(はかど)っているのか滞(とどこお)っているのか、今どの段階にあるのか、完了するまでにどれくらいかかるのか、ということをチェックします。納期や他の仕事との関連性などの理由からこうしたチェックが欠かせないわけですが、何週、何十週にわたって計画を立てる競技トレーニングにおいても、このような管理やコントロールは重要でしょう。

体力指標であれば、おもにはエルゴ。エルゴ数値は、低レート、中レート、高レート、500m、2000m、6000m、20min、60minなど、それぞれ定期的に測定することによって、一定期間の中でどれくらい伸びたのか、または目標に対して現時点でじゅうぶんであるかどうかが評価できます。数値の変化を見極めて、また記録をつけていくことによってその推移を見ることで進捗管理を行います。もし思うように伸びていないならば、原因を考え、計画や実行に改善を加えます。また、基準となる数値やスコアを知識として持っていることは、正しく評価する上でもちろん欠かせませんね。
その他、さまざまな種類の体力測定によってトレーニングの成果をしっかり把握して、目標に対する現状をしっかり把握していきます。


日々のトレーニングでは、どのように評価するのでしょうか?
この日の練習では目的をきちんと果たせたかどうか、これをまず評価します。あくまで練習目的を第一の基準にして評価してください。
有酸素能力を向上させるプログラムであったならば、例えば24kmの距離を、指定のSRやHR、あるいは目標タイムといった理想的な強度を維持して、100%こなせたか。どちらかといえば、この場合体力が練習目的だったので、スピードよりも消化の度合いをきちんと評価します。その上で、艇速や技術的によい変化が見られたなら、さらにプラスの評価を与えてよいでしょう。
これはクルーのレベルにもよると思います。体力的に高い水準で消化できることが当たり前になっているクルーは、より技術や精神に課題や目的を置いているかもしれませんね。

これが技術により比重をおいた練習目的だったならば、きちんとメニューを消化しても、よい変化が出なければ評価はできませんよね。COXとしては、漕手の主観とは独立して、客観的な評価ができるようにしていきたいものです。特に、クルーとしての艇速をきちんと評価する。艇速に関わる技術を最優先に評価し向上させるのが鉄則です。

技術や精神に関しては、日々正しく評価するのはなかなか難しいと思います。熟練コーチが持つような、経験に裏打ちされた観察眼が必要です。しかし体力とリンクはしますが、「艇速」という尺度でいえば評価は難しくありません。乗艇トレーニングにおいて常にタイムを計測し、現状がどれくらいかを把握します。定期的にタイムトライアルを行ってもよいでしょう。
この週までに狙ったタイムやレートを出しておく予定が、まったく捗っていないというときに、メニューの見直しや技術方針の見直しをすることができるのも、タイムを使って評価をします。疲労がたまって、単にそのとき調子が落ちていただけなのか?体力、技術のどちらに課題があるのか?メニューの組み方が適切でなかったのか?実行に問題があったのか?このようにして原因をつきとめていき、次の練習目的に組み込んでいきます。


定期的なチェックポイントとして貴重なのは、やはり実戦経験。小規模な大会や、時には全日本級の大会も、最終目標でなければこれほど現状把握ができる機会はありません。その時点での実力と課題がそのまま浮き彫りになるので、目標に向けた進捗確認と重要課題を洗い出すには最適です。
目標前に増加する傾向がある「並べ」なども、仕上げるための課題の確認として大事な機会になりますね。「並べ」自体は前哨戦としてだったり、ライバルの実力や情報をさぐったり、勝って自信をつけておきたいといったような効用もあるわけですが。
これらは、結果よりも内容を正しく評価して、あくまで目標に向けて次の計画に反映させるための測定であったのだと捉えるようにしましょう。必要以上に一喜一憂するための機会ではありません。

こうして、一部一部、毎日、週ごと、あるいはもう少し長いスパンなどの定期で、数値やデータにすることで評価ができ、目標までにやるべきことを整理するということにつながります。どの課題を最優先にするのか、今の方向性のまま継続するのか、などをCOXとしての立場から判断していくようにしましょう。



5.改善
PDCAサイクルのA。改善(Act)です。実行や練習目的が、計画どおりにできていないときに、改善を加えて処置をします。
目標に対して、現段階の進捗状況が思わしくない場合に、計画を一部修正したり、実施体制の見直しをかけたりして、きちんとゴールにたどり着けるように道順を改善します。
予定よりうまくいっているようなら、目標の上方修正をかける。この場合は、進捗が早いためにゴールそのものをもう少し高めの数値に改善することです。現状に安心しすぎないで、より高いレベルをめざせるので自信にもなり、こういう改善は良いですよね。また、ライバルが当初の予想よりも多くなったり、めざましく成長しているライバルがいたりすると、目標ラインが上がってくるケースもありえます。もちろん、目標を下方修正することがないようにしていく必要があります。
これは、前段階の「チェック」や「評価」がきちんとできているからこそ、「改善」のプロセスにつながるのです。

PDCAのチェックでは、行動した結果と当初の目標を比較し、問題点の洗い出しや成功・失敗の要因を分析する、ということが必要だと言われます。これらは、乗艇中にメニューのセット間や折り返しごとにチェックをかける、揚艇後の「クルーミーティング」でチェックをかける、そして日々のクルーのノートや個人のノートでそれらを記録したり再度チェックをかける、などがそのタイミングや機会であると思います。そこでは、評価とともに次に向けた改善案も出されることが多いですね。

特によく言われる、「乗艇中に直そう」という言葉。できればすぐに見直しをして行動に移したいというところで、乗艇中での意見交換やCOXの評価や改善、提案、修正案など、その場での修正能力を養う。練習目的に沿っているのであれば、こうした習慣を日頃から行うのはよいことでしょう。レース期間などでもこうした修正能力は役立ちます。

また、揚艇後の「クルーミーティング」では、さまざまなミーティングのやり方があると思いますが、まずはそのモーションでの練習目的が正しく果たせたかのチェックが重要です。実行前のミーティングと違い、実行後のミーティングは評価と改善のために行います。目標に正しく向かったトレーニングが実行できたならば、きちんとプラスの評価をしてください。そして、成功・失敗の分析をするべく、必要な情報を集約してください。COXは乗艇中に修正できなかった点などをふまえながら、漕手からの情報や意見を集めます。そして、クルーと艇速のことを基準にした改善案を提示しましょう。
クルーミーティング

もしその場で案を出せなければ、時間をとって、あとでクルーと相談したり個人的にノートをつけるなどして考えをまとめて、なるべく次の乗艇までには提示できるように努めましょう。
こうして改善案とともに、情報共有や正しい評価をするためにも、クルーのノートや個人ノートを活用してください。


これらの改善が終わると、PDCAは一般に、再びPlanに戻り、次のサイクルを実施します。これを繰り返すことによって、らせん状(スパイラル)に次第にプロセスが改善されるようにしていくわけです。
一つのクルーを組むたびに、実力の土台も上がっていくことになると思いますが、こうしたサイクルを繰り返し、目標設定・計画・実行・評価・改善のすべてが向上すること。こうした調整力の向上が、ボート競技者としてももちろん、人間としても色んな場面で役立つマネジメントの力になっていくことと思います。



6.人間関係の調整
PDCAサイクル以外に、練習効率をアップさせられる調整ごと。それは、人間関係でしょう。ヒトのマネジメントです。
基本的に、現状を把握して、理想のところに持っていく、目標に近づけるという意味では今まで見てきた練習サイクルと考え方は同じです。足並みを揃えて、チームワーク良く全員で協力して、共通のゴールに向かうために関係調整を行います。

漕手個々の性格をつかむ。価値観や行動基準、考え方を把握する。漕手は同じクルーに乗るとはいえ、みな育ちも性格も違う人間たちです。漕手個々を知り、それぞれに合ったアプローチや言葉をかけ、艇速や勝利という一つの目標に向けて統率してください。時には、個人を主張して艇速に合わない動きをする漕手もいるかもしれません。個別の指示やアドバイス、時にはコミュニケーションをとって、個性を生かしつつも一つの方向に向かうためのアプローチをしていきましょう。

それから、実に色々なタイプの人がいますよね。怒りっぽい人、テンションの低い人、感情の起伏が激しいタイプや頑固なタイプ。あるいは、褒められると俄然やる気になってくれる人、厳しいことを言った方が実力を発揮できる人、いつも自分のことを見てくれたり必要とされることが何よりも意気に感じる人。
クルーの1人1人の性格を把握して、心をつかみ掌握する。うまくいかないときほど、個々がバラバラになりやすくチームワークが乱れるものだと思いますが、COXは全体を考えるからこそ個人を大事にしましょう。間を取り持ったり、漕手を理解し認めたり、時には目標に向けて甘えや妥協を許さずシビアな姿勢や態度をとるなど、常にクルー全体がまとまるように人間関係を調整しましょう。

モチベーションを管理します。選手は自己管理できるならばよいですが、全員が自分自身でやる気をコントロールできるセルフ・モチベータ―ばかりではありません。少なくとも、COXは練習時には率先してやる気を上げるような言動を心がけ、艇上においては盛り上げたりポジティブなコールや言葉を多用する。良くなったときは、「いいぞ」「よくなったよ!」「いけるいける」など、いい状態に乗せることです。いい状態と、いいムードは、プラスのサイクルを回しつづけます。モチベーションの泉となります。
しかし、「まだそこまで良くない」「全然ダメだよ」「やる気あんの?」など、ネガティブで上から目線の物言いは、特に今の時代、すぐに周囲の気持ちに作用し、ムードがしらけて全体の動きを悪くしがちです。

悩みを抱えていたり、愚痴を聞いてほしい選手などがいたら、相談相手になったり聞き役になったりと、とにかくCOXはさまざまなところでコミュニケーションを大事にしていくことが重要ですね。精神状態の強化やリフレッシュに貢献し、よいメンタルコンディショニングに努めましょう。



7.練習目的の遂行
COXの役目とは、やはり方針や目標に向けて全体をリードしていくこと。
一つ一つの練習の中での目的をやり遂げることで、一歩、また一歩と、目標すなわちゴールへ近づいていくことができます。方針や方向性をいつも意識させることが、COXの舵取り役としての使命なのです。

PDCAサイクルのところでもふれましたが、もう一度「練習目的の遂行」についてふれたいと思います。
計画において、今日のこの練習はどのような目的で行うのか。目標に対してどの段階にあるか。計画よりも遅れているならば、短期間で集中的に前進するため、計画を調整・変更して量や質を高める必要も出てきます。そもそも、現在地はいつも目標から逆算してとらえるものです。

練習目的には色々あると思います。これも先に見たとおり、フィジカル、テクニカル、メンタルのいずれを重視したものか。その中でも、どの要素が一番の目的なのか。テーマをしっかり絞って取り組む。
しかし、結局ボートのトレーニングは、同時に総合的でもあります。特に乗艇はそうです。テーマを絞り、練習目的を明確にすることが、部分的ではなくて実は総合的に向上することにつながります。水中の強さだけを意識して表現できるようになったら、リズムまで改善されたという具合です。理想のフォームや感覚を追求したことでキャッチが変わったりするわけです。
目的を徹底することが、結果として全体に良い効果として現れる、そういったものにも気づけると良いと思います。

COXとしても、毎回の乗艇が、安全訓練、操作訓練になるところがあります。また、クルーが組んだばかりであれば新しいクルーに慣れることで、新しい艇の感覚を発見することがあります。試漕、メンバーの組み替え、リギング確認などは漕手にとっても意味のあるトレーニングです。
メニューも同様で、ある練習目的のために設定されていますが、それを遂行することでほかの多くの効用があることを意識できると良いだろうと思います。だからこそ、しっかり練習目的を意識できることが肝心です。


ただし、色々なことを毎回挙げていたりしますが、あれもこれもすべてできるようになる計画や練習はないと思います。完璧なクルーなど、どこにもいません。
目標に向けて、艇速の伸びに一番関わる、最優先のポイントを改善していくことが大事だと、世界の常勝チームであるデンマークの代表コーチも言っています。レースでは、完全に仕上がらなくても、それなりに艇速は出ているはずだと。
課題がクリアしきれないのは、負けたクルーだけではありません。勝ったクルーは勝ったなりに課題をいつも抱えていて、たとえ世界一になったとしても決して完璧ではないということです。次の世界一と比べたら、負けているかもしれない。

「こんなはずじゃなかった」とならないようにするのが、準備、計画をするということです。以前ブログでも述べましたが、戦略的な発想が大事です。大局的な視点で、目標をとらえる。そして、大局的だからこそ、それを見据えた日々の調整作業が、最後に実を結ぶことにつながるわけです。サイクルの、不断の向上をスパイラルで繰り返していくことが、勝利への道です。

とはいえ、学生スポーツは経験のない者同士の争いであるというところがあります。大目標のレースまでは何度負けてもいいのです。(できれば勝つ経験は多いほうがいいですが)小さいレースは勝てたとしても、大きな目標に対して負けている要素や足りない要素がたくさんあるはずです。
練習や、短期目標のレースでは、目的を遂行しきれないことの連続であるかもしれません。しかし、大事なのは改善し、向上することです。負けるということは足りないものに気づけたということ。改善と向上のチャンスです。
そのうちに、勝ってもさらなる目標のために改善と向上を続けられるようになると思います。

「サイクルのすべてにおいて改善と向上を繰り返し」、「大きな目標のところで、最後の勝負どころで、しっかり勝利できるように」、クルーを、自らをマネジメントしていきましょう。

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