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今回は、COXだけでなく漕手も含め、「艇の操作」について考えていきましょう。細かく見ていったため、少し長くなってしまいました。

艇を思い通りに操ることは、身体を思い通りに操ることに通じます。イメージ通りに細かく動かせるようになれば、安全面での落ち着いた対応もできますし、普段の練習の効率化から、技術アップ、さらにはレースにおいても役立つと思います。
知っておくと便利なちょっとしたコツや、艇を意のままに操れるよう身につけるべきスキルとして、「体操」ならぬ「艇操術」を高めていきましょう。



1. 艇種による反応の違い
よく見かけるのが、熟練スカラーの所作。1×艇を意のままに操るような漕手は、艇速はもちろん、この艇の操作が上手いこと。
私はR大学コーチでしたが、両隣に○TT、MY生命の艇庫が近く、トップ選手、ベテラン選手のよく手慣れた艇捌きを見せてもらっていました。
艇庫前のせばまった湾内に、パドル並みかと思われる艇速で割って入ってきたシングルスカラーが、ザザザーッと小気味よく艇止めし短い距離でブレーキをかけ一気に減速させたかと思うと、その流れを切らさずストサイのみブレーキに切り替えつつストサイバック、バウサイローで旋回モード。交互に数本ずつでくるっとその場で180°方向転換を終了し、一目振り返り船台への進入角度を確認するやいなや、両サイドの細かいチャボで針路調整。狙いを定めたら両舷ローで着岸に十分な勢いをつけると、あとは風や波に対して軽い腕漕ぎとチャボリのみで調節しながら、スーッと入っていってピタリと船台に寄せて岸に着けます。
実際、その後のピンをゆるめ船台に選手が降り、オールをはずして艇を揚げていくすべての動作までもが、流れるように無駄なくコントロールされたルーティン動作となっています。あたかもドックや基地へと帰投してくる小型機の熟練パイロットの所作のようであり、颯爽としているというか、完全に艇操作と着岸、揚艇の一連の動作が身体にインプットされているわけです。

シングルスカルは、その軽快さゆえに、オールやブレードや体重を扱った力の働きによる艇への影響力が高く反応が良いので、このような艇の操作、艇のバランスコントロール、効率的な身体の使い方を覚えるのにとても適しています。軽量なので最初は難しいですが、力の入れ方・抜き方を覚え、リラックスして自重の利用(身体・艇・オールそれぞれの重さ)をうまく掴めば、艇のつながり(ダイレクト感)と一体感を感じるのにはとても適した艇種です。また、加速・減速の幅が最も大きく、風波のコンディションからの艇が受ける影響も、軽量であるために大きいのです。

ペア・ダブル、フォア・クォド、エイト、というように艇が大きく重くなっていくと、漕手の人数も増えますから、それぞれ加速・減速の幅が小さくなっていき、艇速と慣性がつきやすくなり、コンディションの影響も少しずつ減っていきます。スタートのアクセルが重く、トップスピードに乗るのに時間がかかるということは、抵抗、艇止めによるブレーキにも時間がかかり、旋回操作なども時間と手数がかかるということでもあります。
シングル以外の艇の操作は、クルーのイベントリーダー、もしくはCOXの指示に委ねられるようになっていきますが、このように艇種の違いによって、操作のコツも少しずつ変わってくることを頭に入れておきましょう。



2.COXこそ艇を自在に操れるようになるべき
スカルでは自分と艇との関係は1対1、自分が艇とけんかせず、艇やオールが別物でなく自分の身体の延長なんだという感覚がわかってくると、通常の漕ぎはもちろんのこと、艇止め、サイドロー、バックロー、旋回にいたるまで色んな操作がとても面白くなってきます。両サイドとも自分自身のコントロール下にすべて置くことができる、1×、スカリングの最大の魅力はこれかもしれません。

人が大きくなるとそれだけ難しくはなります。ダブルやクォドは1対2~4になりますし、スイープだとさらに片方サイドのみの担当になってくるので、なかなかペアの2人が1対に動くのは努力が要ります。フォア、エイトはさらに複雑で難しい。しかし、人の身体の作用を感じ取って、以前に見たように艇の挙動をしっかり感じられるようになれば、COXやクルーリーダーが指示によって艇を操作することは難しいというよりも楽しいものに変わってきます。
それでも、指示によって漕手を介し間接的に艇をコントロールする、という関係性が特にCOXにとっては必要です。

長年コーチをやっていますと、「漕手にこう動いてほしいイメージを、身体の感覚として言葉で伝えると、イメージどおりに動いてくれるようになる」という経験則ができてきまして、COXやコーチがやっていることというのは、自分のイメージを漕手の身体で表現すること、に他ならないんですね。COXのイメージが漕手の動作イメージになって、艇がそのとおりに動く。結果的にCOXが艇を操作する感覚を得るわけですから、COXは漕手の身になって漕手の感覚を掴んで、艇を操作する、というところにいかないといけないのです。
Mひと

熟練のスカラーが言葉を使わず頭の動作イメージを自分の身体に神経信号で送るのと同じように、COXは頭の動作イメージをしっかり持って、漕手の身体に言葉を使って伝え、漕手の身体感覚が分かるように努めましょう。
時に指示を繊細にして、快適な艇の動きを実現する。COXの意のままに、バランスや航路やスピードやキープや安定や加速やリズム、方向転換や針路調整や風波対応やブレーキなどができるようにしていきましょう。落ち着いて艇を感じ、イメージや目的が伝わる最適な言葉や指示を選択しましょう。

「COXがこうしたい」という意図やイメージが、漕手に直接伝わるということが大事です。これを何度も重ねていきますと、クルーの意思疎通が図れてイメージの共有がなされ、あうんの呼吸が感じられるようになります。クルーに一つの神経系が生まれるのです。COXのイメージの延長に漕手の動き、艇の動き、というようにつながっていきます。COXの作るリズムが、漕手のリズム、艇のリズムとなります。
これを別の言葉で、ボートではユニフォミティーといいます。漕ぎのイメージを表現へと統一する過程でも、全く同じことが言えると思います。イメージと感覚がはっきりしていれば、形や質として実現できるのです。



3.艇の操作のさまざま
艇運動のバリエーションは、ロー(前進・ゴー)と、ストップ(停止)、バックロー(後退)、そしてサイドロー(進みながらの方向転換・針路修正)、サイドストップ(止めながらの方向転換・針路修正)、サイドバックロー(後退しながらの方向転換・針路修正)。
後述していきますが、この中でストップの指示であるイージーオール・抵抗・艇止め、それから両舷、サイドでのロー・抵抗・バックローなどをうまく使い分けられるのは漕手だけでなくCOXも身につける必要があり、COXが細かく艇を動かすという場面は多々あります。
それから運動量や強弱、速度やテンポを調節する、加速、定常キープ、減速。ノーワーク、ライトワーク、ライトパドル、パドル、MAXスピード、スタートダッシュ、セトルダウン、コンスタント、スパート。

そしてこれら運動方向や運動量の操作に加えて、ローの長さのコントロール。つまり、チャボリ(微漕とでもいうのでしょうか)、ミドル漕、ハーフ、フル、上体漕ぎ、腕漕ぎ。キャッチ、ミドル、フィニッシュそれぞれのシートの前後の位置でも調節可能です。
艇の動きとしては、以前見たように、6種類の動揺も加わります。例えば艇が近づきすぎて接触の危険があった緊急の場合、近いサイドのオールを引いてケアし、さらに意図的に艇を傾けてブレードとリガーを高く上げ、接触を回避するなど、艇の傾きをうまく利用するケースもあります。

ブレード捌きのバリエーションは、フェザーリング、スクエアリング(フェザーを戻しブレードを水面に対し直角にする)、イージーオール、イージー(ありがとう)。

例えば、漕ぎ止めてストップさせる号令は、「イージーオール」。これは、パドルやノーワークにかかわらずフィニッシュ後フェザーをつけた状態でハンズアウェイ、ボディセットまで戻してから止まること。腕を斜め下に垂らしてオールに重さをあずけ、なるべくブレードを上げてください。「イージー」もしくは「ありがとう」でブレード水平にした状態で水面に落として休止する。ここまでは艇は慣性で進み、自然減速に任せしばらく流れます。

艇にブレーキをかけて、徐々に停止させたいときは「抵抗」。これはスクエアリングしたブレードの背中を水に押し当てて、斜めもしくは直角に差し入れ減速させます。そのまま方向転換し転回したい場合は、サイドのみ(右側通行ですから一般的にはストサイ)抵抗をかけます。完全停止させたいときは、「艇止め」コール。艇の減速度合いに応じて、ブレードを直角に立てて深く沈める、もしくはブレードを裏返しバックにして差し入れるとより負荷が重くなりますが、こうすると無駄に距離をかけずに停止できます。



4.急停止、急発進
「抵抗」と「艇止め」を使い分けるのは、「艇速」は「重さ」となりますから、勢いがついた艇を完全停止させるには時間と距離がかかるからです。いきなりブレードを裏返し、艇速の負荷が一気に集中するような急ブレーキはきかないのです。腹切りやリガーなどを折るリスクもあり危険です。
1×は小さく軽いので比較的すぐ止めることができますが、重い艇種になるほど、艇速は速くかつ「重い」ので、ブレードで抵抗をかけてその勢い・重さを吸収し、慣性をゼロにまで減らして完全ストップさせるには時間がかかるわけです。
ちなみに、8+はただでさえ積載量があって止まりにくく、しかも前方が見えにくい特殊な艇種といってもよいので、8+の直前を横切ったりという行動は危険なので絶対やめましょう。また、なるべく8+の前にいないようにしたいですね。8+は小回りのきかない、大型トラックやダンプカーみたいなものです。

しかし、緊急時は必ずあるものだと思って、COXは艇種にかかわらず急停止できるように日頃から備えていなければいけませんし、そのようなときにこそ、漕手と艇をしっかりコントロールできなければいけない。
後続クルーが追突でぶつかりそうなときなども、例えば「フォアー!!」などと叫んで呼び止めるだけではなく、すぐに強いローで艇を進め、離れて回避する急発進もできるようにしておきます。こういうときは、スタ練ではありませんが、スタートするようにレートやテンポを早めさせたり、強く漕がせたり、両舷ですぐ漕がせたりできること。
こういうことが確実にできて初めて、COXは艇を操作できるということが言えると思います。



5.レーン変更
戸田のようなコースでは、艇が多くて年中混雑し、常にレーンとブイが常設されているためあたかも車社会での交通の流れのように各クルーがルールを守って航行することが必要になります。
特に、両側の1レーンと0、6レーン、そして折り返し地点は恒常的に渋滞します。
この項と次の項では、おもに戸田コースでの艇操作のコツをお伝えします。

クルーの交通量が多いときは、レーン変更の際にモタモタしたりタイミングが悪かったりして、後続クルーに追いつかれたり接触の危険が出るような場面がたびたび見られます。また、旋回の要領がつかめない初心者クルーや、やたらに休んだり判断に迷って行動を遅らせたりすると、折り返しで大幅な渋滞を作ってしまいます。必要以上に周りに気を使いすぎるのも正しいとは思いませんが、スムーズなレーン変更、旋回技術、限定した水域での確実な操作などは必要なスキルです。当然これらは、無用な事故の危険も減らしますし、一定以上のレベルのクルーには必要な、「時短」にもなりますよね。

レーン変更では、例えば戸田の1レーンから2レーンや、6レーンから5レーンなど低速レーンから準高速レーンに入るときは、高速道路の入り口で本線に合流するようなイメージで、しっかり速いレーンの流れに乗るイメージで入りましょう。
COXは、ラダーを切ってレーン変更するには距離が必要になるし、第一、ノーワークではラダーの効き自体が悪いことを頭に入れてください。こういうときには、「両舷ノーワーク」ではなく「両舷ロー」で、強めの水中・早めのスライドでの動き出しを利用します。「ノーワーク」からの始動は、クルーの統一など確認ができる始動だと思いますが、あくまで周りにクルーが少なく余裕があるときに限定したほうがいいでしょうね。

そして、レーン変更にかかる手数もなるべく減らしたいので、COXは「サイド強調」を駆使するのがおすすめです。
「1レーンから2レーンに入ります。バウサイ強めいこう」→(トップが斜めを向き2レーンにじゅうぶん入ってきたら)→「強めありがとう、ストサイ強めいこう」→(針路をまっすぐに)→「強めありがとう。それではメニューに入ります」
このような感じです。さらに、もっと距離をかけずにレーン変更する場合は、バウサイドローのみでレーンに入り、今度はストサイローだけでまっすぐに戻す、という具合に、グイグイ艇の方向を変えることができます。
COXは、時間をかけずにレーン変更するために、漕手に対しサイドローだけとか、強さまで細かく指示してもよいということです。

ちなみに、戸田の1レーンは他のレーンより少し幅が広いこともあり、行列にはまってなかなか動けないときは、完全に2レーンに入るのでなく、ブイをまたいで少しはみ出すくらいで追い越すこともできます(はみ出さずに追い越せる場合もある)。戸田の豆知識です。1.5レーンのように活用するクルーもありますが、2レーンが1レーンに寄って来たり、1レーンに回避してくるクルーもよくあるので、混雑&注意ポイントではあります。あくまで安全第一で。
アップがはかどらなかったり、並べの際の時間管理など、最初の1レーン航行がカギですからね。時間短縮は社会人クルーや学生クルーにとって大事でしょう。
とはいえ、レーン変更、追い越しなどは、とにかく周囲のクルーや交通状況をしっかりと把握できていて、安全であることが前提です。無理はいけません。



6.転回・旋回バリエーション
艇を返してUターンしたり、回頭して艇の向きを変えることを転回といいます。また、ぐるっと半円やカーブを描いて回り込むように動かして向きを変えていくことを旋回などといいます。用語としてはどちらを使ってもよいでしょうね。
折り返し地点では、旋回してターンをします。

戸田コース500m地点 転回方法
これは戸田コースの転回エリア。普段は競艇場が閉まっていて500~600m地点が転回エリアになりますが、2000mフルに解放されている時は0m地点と考えていただいてもけっこうです。上の図は、転回する際の艇操作のイメージとなります。
※もちろん、1~3レーンがどのレーンに折り返しても問題ありません。


3レーンは高速レーン。速い艇種やスピードの高いメニューなどで使うレーンなので、4レーンに折り返すことがほとんど。この場合、回転半径も小さく済むし、奥までいくと1、2レーンなど外のレーンから転回するクルーに衝突する危険もあるので、なるべく少し手前で折り返すようにしましょう。後続に追突されるリスクもないわけではないので、途中まで転回しつつできるだけ4レーンに入ってから小さい回転半径の旋回操作をしましょう。エイトなど長い艇はチャボで回すのも良いでしょう(「ストサイバックチャボ、バウサイチャボで回そう」)。
転回しながら給水できるくらい余裕もありますが、給水タイミングは転回を完全に終えてから漕ぎ出す前のほんの数秒など、交通状況を見た方がよいでしょう(本来、停止・休憩をする場合は指定のエリアに入らなければいけません)。この両舷チャボ回しは、時間がややかかるので、時間をかけたくないときはストサイバックロー&バウサイローで回すのが一番早いです。
チャボでもローでも転回時は、テール側、トップ側の回転半径に気をつけてください。バックローよりも、ローのほうが水中が強くなりやすく、前にどんどん移動してはみ出しがちです。180°転回の際は、回転の中心点を意識して、バックロー(バックチャボ)を強め、ロー(チャボ)を弱めにコントロールするのも必要ですね。

2レーンから5レーン、そして1レーンから6、0レーンに向かうにしたがって、旋回に要する弧の半径が大きくなり、内側レーンよりも外側を大きく旋回するようにして転回を行います。こうすることで、渋滞を防ぎます。内側の速いレーンのクルーがみな奥に溜まってしまうと、外側のクルーをせき止めてどんどん渋滞が起こるからです。当然、渋滞すると、接触や事故のリスクも高くなってしまうので、円滑な転回はけっこう重要なのです。

2レーンから5レーンですと、ストサイ抵抗、ストサイバックローからバウサイローを入れてある程度トップ方向を回頭させたら、バウサイローのみで旋回しつつコースを横切り、5レーンに入ったところで転回し終えるのが早いです。

1レーンから6、0レーンまでいくにはかなり長い距離を横断しなければいけません。1レーンの場合はやや奥まで行きます。こちらもバックロー&サイドローなどである程度まで転回をしてコースに対し直角にしたら、サイドローや分漕もしくは両舷でローをして、6、0レーンまで横切ります。しかし、なるべくコースに対して艇を直角にする時間は短いほうがよいので、状況を見て、ゆっくりしないほうがよいですね。両舷ローは早く動けるのでおすすめですが、勢いがつくのでしっかり艇止めやバックローを入れるなどCOXはきちんと指示ができるようにしてください。
また、スタート方向に強い風が吹いている時は、競艇場を閉鎖する桟橋へと流されてしまうことがあるので、外側レーンとはいえあまり奥へ行きすぎないのも必要です。横切る際はバウサイローを強めに使うとよいと思います。


ゴール地点(2000m地点)も上の図が逆になるだけで、だいたいイメージは一緒です。2100mまでいかないと、折り返しができる転回エリアに入りませんので、2100m~2200m地点の範囲で転回をしてください。
500m地点も開放しているときはそうなのですが、ゴール地点の折り返しは、後続クルーだけでなく、反対から向かってくるクルーもありますので、転回時はいつも周囲の安全を十分確認することが重要です。


それから、コース途中の転回は原則として行ってはいけないのですが、現実として途中で転回したことがないクルーはいないでしょう。やむを得ず転回する際、このような時が最も操作が正確できちんとしていなければいけません。コースを横切ることが多いと思われるので、サイドロー、両舷ロー、サイド抵抗、バックローなどを駆使してください。横断してから狙いのレーンにしっかり納まる、はみ出さない。艇を直角にした時間を減らす。抵抗、艇止め、バックローを駆使する。旋回半径を小さく、できるだけ手短に行う。

COXは、こうした旋回のパターンを頭に入れて、艇を操作するイメージと、操作に要する時間をしっかり計算し、漕手への的確な指示と、強弱やテンポまでコントロールするようにしましょう。
そして、スムーズかつクイックな転回は、メニューの間をスムーズにつなげて漕手のリズムを途切れさせないため、練習効率の上でもたいへん重要です。トレーニング的にも、UTやLSDであればHRを落とさないことに通じます。


参考のため、「戸田ボートコース航行ルール(PDF版)」を貼っておきます。
http://www.jara.or.jp/info/2009/toda_rule0.pdf



7.狭い水域での操作、着岸
これまで見たところの応用とも言えます。COXは、熟練のシングルスカラーのように、ロー、艇止め、バックロー、サイドロー、サイド抵抗、サイドのバックロー、チャボ、旋回技術などなど、艇の方向や針路、強弱や操作テンポをさまざまにコントロールできるようにしておく必要があります。これくらいの力加減なら、これくらい転回する、前進できる、バックできるなど、感覚で掴めるようにします。

狭い水域や、戸田などの艇の密集・混雑ゾーンを抜け出す、これにはCOXの確かな操作感覚が重要なのです。上に挙げた色々な操作を組み合わせ、応用して艇をイメージどおり動かしてください。

艇速がない状態では、針路、トップ方向を変える際は、サイドのロー、チャボを使います。特に、トップを大きく振らせるには、トップに近い漕手、つまりバウペアやバウフォアを使ってください。
前進させたくないときは、サイドのバックロー、バックチャボを使います。その場で回頭、転回の場合はバックロー&ロー、ないしはチャボ回しです。後退しながらテールを振らせたいときは、テールに近いストロークペアでバックロー、バックチャボをさせます。
艇が流れた状態から、サイド抵抗も活用して、トップあるいはテールの進入角度を調整します。

こうした細かい操作は、着岸のときに要求されます。岸へと巧みに艇を着ける場面は、COXの腕の見せ所です。

風向き、波や流れをしっかりと読んで、トップやテールの進入角度を見定めます。20~30°くらいの角度が適切でしょうか。流れによってこの角度にも幅を持たせながら、岸から遠いほうの漕手を使った分漕で、最適な力加減と勢いで岸に接近して、最後はサイドロー・チャボ・抵抗などもはさみつつ微調整して、降りる役が岸に移って艇を降ります。
COXとしては、着岸時は完全に艇を着けてリガーなどをおさえてもらうまで、漕手が指示に対しすぐさま反応できるように、集中を持続してもらうことが大事ですね。

オザワ・ローイングさんの「離岸・着岸」(PDF版)
http://ozawa-rowing.com/04-junior-rowing-manual/J05-03-070320-102-launch-dock.pdf
同じく、「直進・停止・転回」
http://ozawa-rowing.com/04-junior-rowing-manual/J05-02-070320-102-straight-stop-turn.pdf



8.ステッキボートへの着艇
レースでの発艇台。スタート地点にアンカーロープで係留した小型ボートや発艇用桟橋のことで、発艇補助員であるウォーターマンを乗せてここからレースをスタートさせます。「ステッキ・ボード」ではなく、「ステッキ・ボート(stake boat)」が正しいのですが、ステッキの発音自体が間違っているという話もあります・・・。しかし、ステーキやブレーキと同様、日本語として定着してしまっている模様であります。

レース時は、このステッキにCOXがきちんと着けられるようになってください。
特に小さい大会では、付き艇種目でこのステッキへの着艇がうまくいかず、発艇時刻がどんどん遅延されるという光景が見られます。もちろん、新米COXが多いということなのでしょうが、全体として漕手のレベルに比較して、COXの技術レベルが残念ながら低いといった現状もあるのではないかと思います。
COXのレベルアップが、漕手をもレベルアップさせ、日本のボート自体のレベル向上になればと思っています。是非、技術アップが全体の意識向上につながってほしいと思います。

COXとしては、前に見た着岸ができれば、ステッキへの着艇もパーフェクトにできるはず!漕手にやってもらうのではなく、COXがきちんと艇を細かく自在に操作して着けられるようになるべきです。
トップCOXでは漕手に任せてしまうのもアリですが、近づくところまではCOXが指示したほうがよいと思います。

ステッキに着けるのが難しく感じるのは、テール(スターン)から近づいて後退して着けるからだと思います。車の運転でバックをして車庫入れする要領と同じなのです。
ステッキよりも数十m前の位置に艇を動かしてきてから止めます。サイドバックローから斜めにつけるコントロールに自信がなければ、なるべくレーン中央から動かします。あとは、距離によって両舷バックローか、ペアワークでのバックローでアプローチ。
あと分漕の数本でステッキに届くあたりで、漕ぎ止めてようすを見ます。艇半分くらいまで近づいたら、漕がずに惰性でアプローチしてください。
近づいてきたら「漕がないで惰性を使う」、これがポイントです。ただし艇の勢いが弱ければ、弱く漕ぎ足してください。強すぎればステッキに衝突しかねないので、抵抗をかけてください。テール方向が正しければ、両舷で抵抗、少し逸れていればサイド抵抗。バックで進んでいるので、止めるサイドを間違えないでくださいね。

時おり、付き艇だけでなく、なし艇でも、バックローの勢いがつき過ぎてドーンとステッキに突っ込んでいくクルーを見かけます。当然艇が傷つくおそれもありますし、ウォーターマンが受け止めきれないこともあります。エイトなどは勢いありすぎたら絶対つかめません。
おさえてくれるウォーターマンのことを考えて、ゆっくり静かに近づいて、直前でさらに艇止めして勢いをほぼ完全に殺してから最後の惰力でピタッと着けるのが艇にも人にも優しいですね。



9.ステッキボートからの発艇
ステッキに着けた後も重要です。最後は、ステッキに着けてから発艇までのコツです。

ステッキに着けた時点で実はCOXのレースはもう始まっています。艇の方向をいかに定めるのかが、序盤のレース展開、時にはレース全体を左右するからです。
あるいは、付き艇種目ではCOXが漕手を落ち着かせる言葉をかけたり、自信を与える言葉をかけたりします。自分のクルーに集中しつつも、隣りのレーンのCOXを意識したりして、「スタートから出るよ」などと聞こえるように言ってみたり、駆け引きをするCOXもいます。私も、この緊張が高まるスタート前は、逆に冷静になれたりして好きな時間でした。漕手は精神を集中しリラックスしようとしていますが、COXは動いたり仕掛けているのです。

艇の方向を定める、つまりトップ方向を定めるのは、風向きや流れによって決める方向は異なります。無風なら真っ直ぐ、横風なら風上に向けて、「アテンション」「ゴー!」の瞬間に、真っ直ぐかやや風上寄りに決まるようにうまく調節しつづけます。
横風が強くどんどんトップが流れてしまうコンディションのときは、常に漕手へ修正の指示を出しつづけます。その過程で、どれくらいの時間でどこまでトップが流れるか横風の程度を見極めます。

このときの操作指示は、サイドのチャボが基本。ここも、なるべくトップに大きく作用するバウ寄りの漕手を使います。流れが強くなるごとに、「チャボ」「チャボ+バックチャボ」「チャボリを強める」「人数を増やす」。両舷チャボ回しでもトップを戻せないときはやむなくローも使いますが、ウォーターマンが押さえてくれているのを忘れないでください。エイトで片方サイド全員が強めのローをしたなどとなったら、ウォーターマンはテールを持ち続けることは到底無理です。
ローを使いたいときは、バックローを優先することが良いですね。「バックロー」「バックロー+ロー(人数はペアかフォアまで)」。

また、レースの発艇では、ウォーターマンがラダーヨークやラダーの軸をつかんでしまうことがあるので、ラダーではなくテール、艇自体を両手で押さえてもらうように、COXや整調が声をかけてあげてください。ステッキのアンカーロープにラダーをひっかけてしまうトラブルもありますので、これも注意が必要です。スターンでのCOXや、トップCOXでの整調はウォーターマンの持ち方にも気をつけて、適切でないときは教えてあげてください。




今回はかなり細かくなってしまいましたが、COXがきちんと艇を操ることは、安全、練習効率、勝敗にも関わることですし、漕手の信頼にもつながるポイントでもあります。
「認知」「判断」「操作」の最後の部分ではありますが、それだけにここが確実ならば、COX技術は確かなものとなり、自信がつくでしょう。しっかりマスターしていきましょう。
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