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COXは、艇上での仕事がたくさんあります。目に見える仕事もあれば目に見えない仕事も数多く、漕手が日々積み重ねるストロークと同様、日々COXワークを積み重ねています。テキパキとそして確実にこなし、能率を高める処理を行うことが必要ですね。
第2回で見たように、COXがクルーに対して果たす決定的な役割として、「安全」「目標達成のための練習効率」「レースの勝敗」の3つを挙げました。これらはいずれも、情報の「把握」と「判断」、そして「処理」と「伝達」が必要になります。
COXは、色々な情報を受け取って、それらを漕手のために効果的に使い、最終的にクルーを勝利に導くことを請け負っています。
今回のテーマは、「情報」です。



1.Rowingにおける情報化社会
現代は、情報化社会と言われています。情報が、人・物・お金といった他の資源と同じように価値を認められ、情報を中心に機能する社会に変わりつつあるというのが現代の社会です。情報はもともと、自然からあるいは直接人づてに得るものでしたが、テクノロジーの発達、そしてメディアやネットワークをはじめ情報技術の発達によって、印刷物からラジオ、テレビ、パソコン、携帯スマホ諸々の端末などにより大量の情報を得て、それを多くの人が活用できる時代になってきました。

近年を見ても、ここ20~30年ほどの情報処理機器・情報通信機器の発達、インターネットメディアの全世界的拡大、デジタル社会化、ネットワークの拡大にともなう社会的つながりの変化、などビジネスや実生活において劇的な変化が感じられますよね。20世紀後半から21世紀にかけてのこの社会の大きな変化が、産業革命に対して情報革命と呼ばれるゆえんです。
スポーツにも、この情報革命の影響はたいへん大きく作用していると感じます。



2.COXは情報・通信の管制センター
ここでボートにこじつけるわけですが(笑)、情報と、通信やデータ計測技術は、艇速を追求するクルーにとってますます重要になってきています。COXはそれを管理・統制する役割を担っています。COXマイクとCOXボックス、あるいは艇内外のさまざまな計測機器、これらはその象徴だと思っています。通信機器や計器の持ち込みが許された競技ってあまり多くはないですよね。(ただし、他競技で選手は試合にはあまり持ち込めませんが、トレーニングにおいて、あるいはコーチ・スタッフは情報技術や機器を駆使してナンボというようにスポーツ界は変化してきていますよね。)
昔はもちろん、COX用のマイクなどなかったので、エイトでは地声もしくはメガホンで対応していました。メガホン越しでさえ、エイトのバウまでは指示の通りが悪かっただろうと思いますし、大声での号令は細かい情報やニュアンスを伝えるには適さず、COXの役割の範囲はやや限定されていたはずです。

しかし、1980年代に入り世界大会の映像を見ると、この頃は既にマイクの使用も、トップCOX艇も一般的になっていたようです。(国内では平成に入ったあたりから、普及しはじめたようです。)
COXは、艇内音声マイクによってSRの伝達やポイントでの戦術指示だけでなく、細かい技術改善や微調整の指示ができるようになりました。声の抑揚をつけて、囁くようになだめて冷静さを与えたり目の覚めるような号令を轟かせ強調することもでき、伝える情報の幅や量が増え、コーチに近い役割を、あるいはコーチにはできない役割を果たせるようになったわけです。COXボックスは、タイムとレートの計測からCOXの両手を解放してくれて、ラダーワークと、艇を感じたりする情報収集に意識をより向けることを可能にさせてくれました。
安全と、練習効率と、レースに勝つためには、情報の素早いキャッチと取捨選択の判断が必要ですが、この点でCOXは情報・通信における要のポジションであるということが言えると思います。
トップコックス視界、コックスボックス



3.計測機器の発達
今やRowingに不可欠となった、エルゴ、そして艇内外のデジタル計器の数々。
ちなみに、80年代頃にローイング・エルゴメーターに精度の高い計測モニター機能を付けて漕力測定ができるようになったのは、COXボックスやストロークコーチなどでおなじみの計測機器メーカー「ニールセン・ケラーマン(NK)」のレート計を使用してからだそうです。
(F川さんのコラムを参照 「ローイング・エルゴメータを知って使おう」

ローイングエルゴは、コンセプト2社製がほとんどシェアを占めていると思いますが、今出ているE型(モデルE)は、従来より表示されていたSR、500mラップ、漕行距離、ワットなどのデータに加え、グラフ、パワー曲線、心拍数、カロリーなどが表示できるようになり、データの保存、管理機能も充実しています。そのうちディスプレイがPC並になって1ストロークごとに理想のパワー曲線のためのアドバイス表示や、ラフコン対策など疑似乗艇モードがついたりして、陸上での汎用性がさらに高まるのではないかと思ったりします。

ニールセン・ケラーマン社製の計器は色々あって、例えば「ストロークコーチ」はSR、タイム、ストローク本数が表示される漕手用の小型計器ですが、今出ている「ストロークコーチ・サージレート」という製品は、ストロークの振動に反応するタイプなので、マグネットやケーブルいらずになっています。

また、今話題の「スピードコーチ GPS」は、従来のスピードコーチにあったエルゴのように500mあたりのラップ換算した艇速が表示される等の機能が、水流を利用したインペラー計測によるものでなく、GPS機能によって表示されるので艇速表示の精度が高まるとのこと。GPSなので航行距離も出ます。さらに新製品の「with HR」のタイプは、心拍数(HR)の表示まで可能です。(付属品のHRトランスミッターベルトの装着が必要)レートとタイムはもちろん、スピード計測からトレーニング強度の管理までこれ1つでOKということ。特に、500m、100mなどとタイムを測らなければ分からなかった艇速が、1ストロークごとにリアルタイムに分かるのは画期的ですよね。
高価なので、クルーのレベルをふまえて費用対効果を考慮しないといけませんが、技術アップのためにも漕手の足元にはぜひ取り付けたい計器ですし、COXボックスにもこうした表示がほしいものです。あるいは、COXボックスは「mini」バージョンのマイクシステムのみの製品が出ていますので、これと併用して、スピードコーチGPSはCOX席に装備するのもいいかもしれません。
ほかにも、あまり使っている方を見たことはありませんが、ここのメーカーでは「ケストレル」シリーズという風速計も出しています。風速から気温・水温・湿度までさまざまな条件下でのコンディション情報を計測できます。

あまりコストがかかりすぎるのはいただけませんが、このように各種データの計測機器が艇上でも艇外でもより発達して使えるようになっていくことは、ボート競技において特にトップクラスでは、今後ますますの競争の激化を意味しているのかもしれません。



4.情報収集力、情報処理能力
さて、COXはさまざまな情報を掴んで、瞬時に判断と処理をして、必要な情報を漕手に伝達すべきだと述べました。

「安全」のために、気象情報、季節の傾向、天候、気温・水温、風、波、流れ、水面コンディション、水域・地形、コース情報、障害物や漂流物、他クルーや船舶の交通状況、その他実に色々な情報を把握する必要があります。

「目標達成に向けた練習効率」のためには、スケジュール計画、トレーニング目標、メニュー、レートやタイムなど各種計測機器からの数字データ、漕手の体力データ、技術面、精神状態、体調、性格、モチベーション、目標と現状の艇速、その他の情報。目標設定、プラン、把握、調整、アプローチ、実行、評価など、情報に対して、正しい評価と方向づけを示すという情報処理能力が必要です。

「レースの勝敗」のためには、シーズン戦略、大会のレベル、対戦相手の情報、自分たちの情報、チーム総合力、当日のスケジュール、レースプラン、コンディション、数字データ、レース展開、相手との位置関係、ムード、リズム、メンタル、艇の感覚、戦術など、事前の準備とレース中での情報と、いかに勝利を引き寄せるかのアプローチのために情報をしっかり把握します。

実に多くの情報を、現状を知って未来を変えるために、集めて活用します。おもにはこの大きな3つの目的のためです。
COXは、情報を活用することで「安全」と「目標達成」と「レースの勝敗」のカギを握っているわけですから、立場的にも情報が集まる・集めるようにするのは当然と言えるわけです。
先に挙げた具体的な情報は、乗艇中にしか掴めないものも多いですが、事前に調べたり確認しないといけないものも多いですよね。練習中だけでなく、練習外での行動や準備が大事というのはそのためでもあるでしょう。日々情報を収集して、一部一部の練習や、一本のレースのために準備をしていきます。

COXは、クルーの目ということを以前述べましたが、「視覚情報」がまずは重要。そして、艇を感じるということで、「感覚情報」についても見てきましたね。それ以外も、キャッチ・フィニッシュ時などに発する音による聴覚の情報や、漕手とのコミュニケーションによって得られる漕手の内側にある情報も必要です。

これらの多くの情報は、漕手にそのまま伝えるべきものと、COXが適切に判断して伝えなくてよいもの、適切に処理してより価値のある情報としてフィードバックすべきものとがあります。
例として簡単に言えば、「ドライブの後半が短くなって、艇速が落ちそうな感覚があった」→この情報をただ伝えるのではなく、原因と対応を判断して「フィニッシュ加速から、最後まで艇を動かしていこう」といった内容に変えて指示をすることです。
漕手に多くの判断を委ねずに、特に艇上ではリーダーとして行動責任を果たし、そして情報のプロフェッショナルとして、データ・視覚情報・感覚情報などを、3つの目的のために価値ある形でクルー全体へと提供したいものですね。

Rowingをはじめ、スポーツはますます情報化の時代へと突入しているのです。
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