だんだん、初心者向けから逸脱してきたこの連載シリーズですが、COXの技術や精神を考えるための、「COX特集」としてこのまま続けたいと思います(笑)。初心者向けには、3章の「コックスの基本」があるのでそのあたりを見ていただきたいですが、それ以降も、ぜひ初心者の方から熟練者の方まで読んでいただけるとうれしいです。

COX指導はごく基本で当たり前のことさえできていればいい、という考えはあまり私にはありません。もちろん基本を重視しながらも、発展性を見出し深く追究することで、大きなモチベーションや価値をこのポジションにも持たせたいのです。そもそも、COXに求められる役割も、現代Rowingではもっと変わってきていいはずです。
スポーツは人間による創造的活動の一つです。何かそんなきっかけになればいいのではないかと。また、もちろん漕手に向けたメッセージもたくさん入れているつもりです。

私は、初心者に対しても、奥深いことがたくさんあるよと知ってもらいたいほうですし、何言ってるかよく分からない点もあるかもしれませんが、色んなレベルの人に何かヒントになればというスタンスでいます。ボート競技は、1、2年、あるいは高校3年間や大学4年間くらいですべてが分かるようなスポーツではないということくらいは知ってもらいたいなと。
しかし、だからこそ最初の1、2年で知識と世界がかなり広がるだけで、ずいぶん違うとも思います。


今回のCOX特集、構想ではCOXに関するテーマを15くらい列挙して最初から長期連載を想定していました。
そのぶん簡潔な内容で書いていって、できれば毎日サクサク更新したいなんて考えていました。ですが、やはり相変わらず長文になりすぎて、しかも下調べに時間がかかるという予想外の展開になってきてしまいました。私のブログは最近調べものが増えてきて、更新するのに気が重くなるほどになってきています・・・!
書きやすく読みやすいブログにするために、「できればコンパクトに!」をいつも意識はしています(笑)。しかし、それがなかなかできずに今回も長編になったため、やむを得ず2回に分けました。いつものように長くなって、すみません(笑)。



さて、今回は漕手だけでなく、COXにとっても重要な、「艇を感じる」ということをテーマにしたいと思います。


1.艇の動きを知る
COXや漕手は、艇の動揺についての性質を知って、うまくコントロールできるようにしてください。

艇の動揺に関する図
(前々回「舵」編での参考サイト、「漕艇物理学概論」より)
↑上の図のように、艇には6種類の動揺があります。いずれも、艇の中心より「上下」「前後」「横」の3軸についての「軸に平行な揺れ」と「軸回転の揺れ」です。ローリングやヨーイングなどこれらの用語は、Rowingの艇だけでなく、船舶や航空機、自動車や二輪車、電車など色んな乗り物について使われたりします。

ピッチ・コントロール(艇首の上げ下げ)、ヨー・コントロール(艇首の左右)、ロール・コントロール(左右の傾き、バランス)、ヒーブ・コントロール(上下振動、漕手の体重による浮き沈み)。そしてサージ・コントロール(蹴り戻し、ラッシュ、加速・減速など艇速変動)。
※スウェイ(左右に動く)は横からの風や波への対応くらいなので、針路に気をつける対応で問題ないでしょう。

Rowingでの艇の挙動とはおもにこれらのことですが、漕手の体重の動き、オールやブレードの動き、キャッチ~ドライブ~フィニッシュ~フォワードの一連の動作によって必然的にこうした種類の艇の動きが生じます。
コントロールと付け加えたのは、こうした挙動は漕手の体重移動などによって必然的に起こりますので、漕手自身がコントロールする意識がまず大事だということです。それに加えて、以前見たようにCOXは舵によってヨー・コントロールに関わることが可能です。
艇速変動、艇の挙動、これを感じて改善の指示やコールを出せるかどうかで、COXのレベルはぐっと上がると思います。


例えば、漕手が各動作を確認するテクニカルドリル(いわゆる技術練)がありますが、キャッチドリルひとつとってみても、単にブレードを入れるタイミングや一枚の深さを確認するだけが目的ではありません。ブレード操作の際に安定したフォームのまま、つまり最小限のピッチングでサージングを起こさずエントリーモーションが完了できるか。(スーッと艇を前に動かして、艇を揺らさず戻さずエントリーできるか)
チョイ懸けやレッグオンリーでヨーイングが生じないか。さらに上のレベルで、ローリング、つまりバランスを傾けず両舷でのキャッチドリルが行えるか。

ブレードワークよりむしろ艇の挙動を感じて、艇を動揺させないポジション(姿勢)とモーション(動作)でドリルを行えるようになることが、パワーが100%艇に伝わるためのアプローチとなり、これが上達に近づくわけです。
トップクルーの、キャッチ回りやリリース回りでの丁寧さ、スムーズさ、艇の安定性を見てください。いつも艇の動きを安定させてコントロールができ、自らのRowing動作を安定させられるようにするのは大切なことです。



2.艇の揺れを減らすための対応
軽くて剛性の高い艇が増えてきて以来、こうした艇はスピードが出やすい反面、不安定で揺れやすく漕手の動きがダイレクトに反映されます。乗り手の能力が、はっきりと艇の安定性にあらわれるようになっているため、艇の動きをしっかりコントロールできる技術を身につけましょう。

一つずつ簡単に見ていくと、まずピッチング。漕手のフォワード中やストローク中の体重移動によって、艇首と艇尾が交互に浮き沈みします。キャッチ直前の艇尾の沈み。フィニッシュでの艇首の沈み。これらは、理想的なリズムで体重移動を合わせることでコントロールします。
キャッチ回りで艇を止めないドライブへの移行も意識してください。これは、スライドのトップで、ストレッチャーへ駆け込まない、上体を突っ込ませない対応が必要です。それから、スライドの終わりにおいて後ろでの体重のストップと前へのゴーを合わせることも重要です。フィニッシュで過度な後傾をとらず、フォワード初めの膝の緩みを一致させる。
前後の体重移動の範囲を限定したその中で、体重の利用自体はストローク中のみでダイナミックに行いたいですね。

ピッチングと混同しやすいですが、ヒービングは、艇全体の上下動です。まず、選手が艇に乗り降りすることで、重量の積載によってヒービングが起こります。また、キャッチでブレードが固定されて体重が乗ると、艇が浮き上がる感覚があります。リリースすると、ブレードで支えられていた艇体が沈みます。これもヒービングでしょう。この強く浮き上がる感覚を、「キャッチで艇が立つ」という言い方をする人もいますが、COXとしては感じられるようにしたいですね。
ネガティブなヒービングをしないためには、漕手の体重が上下に激しくぶれないことが重要だと思います。つまり、漕手の重心をなるべく低く一定にして、艇重心もRowing動作も水平移動させるようにコントロールしていきます。フィニッシュで肩をリラックスして下腹部あたりに重心を感じる、そのままキャッチまで肩や視線を水平に保つ、などがポイントです。

サージングは、艇速変動です。よく、「艇に対しネガティブな力を減らす」と言われて最もイメージするのがこれでしょう。艇速のアクセルとブレーキになる前後の揺れだからです。しかし、ほかの上下や横の揺れも、水にエネルギーがロスされるのでブレーキになっています。
艇速には、フィニッシュで最も加速し、フォワードで最も軽く動き、キャッチで最も遅くなるという加減速の波のリズムがあります。大きなブレーキをかけないためには、まず戻らないキャッチが大事ですね(実際にはブレードは少し戻る)。エントリー動作において、最後まで艇をスライドで動かしていること。そして、スライドのトップで力強いキャッチ姿勢がとれていること(ブレードは艇を止めないタイミングでスムーズに落とす)。この2つがエントリー~キャッチでは大事です。
また、フォワードではいつでもキャッチができる準備をして、艇をスムーズに動かすこと。キャッチ準備ができないまま急いで前に出るのは、ラッシュと言われるネガティブなシートスライドです。
ドライブ技術については、また違う機会に詳しく見ることができればと思います。

ヨーイングは、舵の章でも見たように、針路が左右にぶれることです。特にスイープはキャッチはもちろんドライブでも横の力が相殺しにくくぶれやすいですし、スカルならば両舷のブレードの深さが一枚分カバーできているかと、いずれもまず「力を逃がさない強いキャッチ姿勢」であることが大事。やはり、キャッチは重要なのです。
キャッチポジションにおけるフォームによって、かなりドライブの力強さが変わるところがあります。また、ドライブそのものがサイド負けしている、フィニッシュにかけて支えきれなくなりブレードが浮いてくる、ドライブが短い、フィニッシュで引っ掛ける、さまざまな左右の不均衡がヨーイングを生じさせ艇首を左右にぶれさせてしまいます。舵で修正しつつ、漕手の技術を高めていきましょう。



3.バランスについて
最後に、ローリング。一般的にいうところのいわゆるバランスです。違う種類の揺れも混ざって発生しているはずですが、漕手にとっては最も漕ぎにくいと感じるのがこのローリングによる揺れ、傾きです。ブレードの高さと、体重の傾きが影響します。
ここでいうブレードの高さは、重さです。適度な範囲のワークハイトであれば、さほどハンドルを下げなくてもじゅうぶんなブレードの高さは得られます。リリース時に、ハンドルに指の関節から垂直の重さをかけて、ブレードをしっかり上げます(手の平でと教える場合もある)。そして、エントリーでバランスを傾けない一瞬でブレードを落とすのと同様、フィニッシュも同じように一瞬で抜き上げることも意識したいです。

さらに重要なのは、リリース後に「オールの重さをクラッチに乗せる」ということ。ハンドルに重さをかけるときに、力んでいるとオールの重さが生かされません。これは、バランスのための重要なコツです。自然なオールの重さを利用することが、正しくバランスの良い、じゅうぶんな高さからのエントリー~キャッチにつながります。
オールの重さがクラッチに乗らないと、ブレードの重みで垂れたサイドに傾くか、ハンドルを低く抑えすぎてブレードが浮きすぎるかのどちらかになります。この2つはエントリーでバランスを崩し、艇はフラットにならずブレード一枚がうまく入らない結果になってしまいます。
ノーフェザー漕ぎ(スクエア漕ぎ)のドリルは、ファイナルの押し方やリリース確認だけでなく、この「オールの重さをクラッチに乗せる」ことを身につける練習になります。私はノーフェザーの練習は一番重要な技術練習だと思っています。

胸と腹筋の境目くらいがストロークにはちょうどいいハンドルの高さだとすれば、リリースからリカバリーではへそのあたりの高さが腕の重さを預けてリラックスできるちょうどいいハンドルの高さではないでしょうか。
基本的に、リリース、フェザーリングが完了した高さでクラッチにオールを乗せ、水平にエントリーまでいって最後の瞬間に入水すれば、大きなローリングは発生しないと思います。ハンズアウェイ~エントリーまで、特にアウトの指に(インの包んだ指も)最後までオールとブレードの重さを感じる。スライドのトップでこれを落とす。じゅうぶんな落差が得られ、理想的なエントリースピードで入水できると思います。

「水平の」ハンドルワークのために、「水平の」ボディワークが行えるようになることが重要ですね。
スイープでは、ファイナルポジションからハンズアウェイでハンドルが一旦外にはみ出しても、キャッチポジションでツイスト(回転)しても、左右に体重を傾けてはいけません。キャッチで上体がインサイドにややはみ出したとしても、シートの左右均等に、ストレッチャーの左右均等に下半身から体重を乗せる姿勢があるのです。トップ選手のキャッチポジションを極めてください。

そして、ローリングはスピードに乗っていれば軽減されるところもあります。自転車なども同じですね。ノーワークよりもパドルの方が安定します。キャッチ前の減速した際にバランスが崩れることがよくありますよね。ですから、ドライブでもフォワードでも、艇を動かし続けるのは重要な技術なのです。

最後に、艇を安定させられることが理想ではありますが、やはり艇速が第一です。特にバランスについては、艇速を犠牲にしてまで完璧を求めるのは本末転倒です。艇速が出ていれば、ある程度の「揺らぎ」は許容することも必要だと思います。

良いバランスを作るために、オザワ・ローイングさんの下記ページも参考にしてみてください。(PDF版)

「ハンドルの高さ」
「ブレードの深さの最適化」
「バランス」
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