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1.目は大事
COXは、目が重要です。付き艇において、COXはクルーの目とならなければいけないわけです。安全確認、真っ直ぐ進めるためのラダーワーク、漕手の漕ぎを見る、レースでは相手クルーを見る、さまざまな状況で目のパフォーマンス向上が重要ですよね。
ちなみに、「目のパフォーマンス」という言い方は、私がコーチを始めたころ、色々と資料や月刊Rowing連載などを読んで参考にさせていただいた当時H大のS藤コーチが使われていた言葉でした。気に入って使わせていただいています。
もちろん、漕手にとっても目はたいへん重要で、特になし艇ですよね。目でさまざまな情報をキャッチすることで、安全かつ安定した航行、直進性、レース展開の把握や仕掛けの判断、などに関わってきます。

ところで、ボート競技は眼鏡をかけた選手が比較的多いスポーツだと思います。球技全般では、眼鏡の選手ほとんどいませんよね。眼鏡は危険で外れやすいのもあるでしょうし、視野が狭くなりますよね。ボートは接触プレーなどがないので、眼鏡をかけてプレーしてもマイナスの影響があまりないわけですが、基本的にスポーツでは目が良いことは重要ですよね。
しかしボートもそうだと思いますが、スポーツ全体でのコンタクトレンズの使用率は相当多いようで、アスリートはかなりの割合(9割とか!本当か?)で競技中には何らかの方法で視力矯正をしていて、さらにそのうち9割がコンタクトだというデータがあるそうです。レーシック等の手術が約5%、眼鏡が約4%だとか。(ネットで見つけた眼科医ブログ情報による・・・)

ボートでも、コンタクトや眼鏡(サングラスなど含む)で視力矯正するのがほとんどで、視力が悪いままで特にレースに出ている人は少ないだろうと思います。やっぱりまず安全面ですよね。目が悪いまま乗艇するのは、目が悪いまま車の運転をするのに等しいかもしれません。
私も目が悪いので、大学入学と同時にコンタクトに変えて、毎回コンタクトつけてCOXしてました。大学1年の新人戦では強風の影響で片方のコンタクトがずれたままレースになってしまったという、今となっては笑うしかない失敗談もあります。(当然、レースは負けました・・・)



2.視点(目標)の置き方と、運転の関連性
ラダー操作、安全確認においては、特に長い時間ある一点を凝視したり、視線を不安定にしないことです。そして、視点を置く目標は近くではなく遠く。遠くを見るようにすれば、艇首のぶれが身体の向きがぶれたかのように感じることができます。近くよりも遠くに目標を置くことで、距離感が正しく把握でき、目標とトップの指す針路のずれ、つまり修正角度を精確につかむことができます。遠くの目標へと航路が直線的となり、針路修正の精度が高まるので、ラダーも小さく少ない回数で済みます。しかし、目標が近いとラダーも大きく多くなり、小刻みに曲がって進む航路になりやすく、蛇行や修正舵が増えます。
私はラダーが下手くそだったとき、左右のレーン、近めのブイをよく見ては蛇行してしまっていた記憶があります。ブレードを当てたくなかったり寄り過ぎないようにという気持が、視線を低く近くしてしまっていたのだと思います。顔を横に向けていると曲げやすいですしね。

遠くに視点を置きながらも周りの広い風景を把握することで、周辺視野も広がり、障害物や他クルーの認識もでき、心の余裕ができます。遠く広くを基本にしつつ、視点を近い一点に集中しないことですね。あるいは、アバウトにしつつも、視野に入ってくるさまざまな視覚情報をキャッチできるように予測・注意しながらこまめに眼を使う。左右や後方の状況も定期的に確認する。車の運転と同じです。ベテランドライバーになることです。

安全運転の基本は、「認知・判断・操作」と言われますよね。早めの「認知」が、素早く正確な「判断」と「操作」につながります。この3つにおいてミスを減らすのが、堅実なCOXであることに通じるわけですが、まず第一なのが「認知」、目だということです。

エイト、cox席から
とはいえ、スターンCOXでは漕手にさえぎられ前方は見えにくいのが現実。それでも、遠くに目標を置きつつレーン中央を想定したラダーワークを行ってください。ブレードワークにばかり目が行って顔が下がらない方がよいですね。練習時はときどき前方確認のため、漕手の肩越しに乗り出して見ることや、故意にラダーを切って(あるいは切らずにいることで)やや艇を斜めにずらして前方の視界を開けることも、安全のために必要でしょう。
(ただし、スターンCOXでは、整調とバウのアシストも重要ですね。整調はCOXが気づきにくい後方の安全確認をし、バウはやはりCOXが見づらい前方を、気配を感じた際や定期的なタイミングで振り返って、確認してあげてください)

トップCOXであれば、トップボール付近の近くではなく、遠くのランドマーク(英語ではレーンマーカーといい、これも日本のボート用語?戸田であれば500mおきにレーン中央の頭上に下げられたレーンナンバー標識)を目標にします。なし艇の漕手は、スタート500mまでは発艇後方にあるステアリングマーカー(黄色地に黒い線の標識)を目標に、それ以降はやはり遠くのランドマークを見るとよいでしょう。(整調の後ろの漕手は、前の漕手の後頭部や背中を見るかもしれませんが!)

視点と直進性の関係は、運転でイメージしてもらうとこのような感じですね。
http://driving.ciao.jp/ginou-1/shisen.html



3.周辺視の体得、目でパフォーマンスを高める
そして、さらに一歩踏み込んで目の技術について考えてみます。
ボート競技で有効であるかはまだ私の仮説段階ではありますが、他競技の例を挙げつつ、私の感覚に照らした独自論も付け加えていきます。

遠くを見た方が、直進性を高めるだけでなく、身体感覚に集中できるメリットもあります。
これは、漕手も同じで、COXも漕手も身体操作パフォーマンスを上げるために目のパフォーマンスが重要だということです。手元足元の近くに視点があるよりは、遠くを見て自分の感覚に集中して下さい。きっと、理想の針路、理想のRowing感覚やリズムのずれを微妙に感じ分けることができて、気持も集中し、パフォーマンスが安定するはずです。
初心者では自分のブレードや下を見る癖がある漕手もいますが、もっと視線を高くまっすぐにして、自分の感覚と艇の動きに集中してみてください。ずっと手やグリップを見たりしてしまい、自分の身体をいつも視覚で感じるのではなくて、身体や動作は運動感覚で感じてください。


この「目の使い方」は、近年、視覚能力がより重要な球技(ボールスポーツ)で注目されている、「周辺視」といわれるものです。球質やスピード、ボール軌道や落下点の把握、方向感覚、敵・味方選手の位置や動きの把握など、ボールを扱う競技では、見る能力や視野が広い選手が、実際のパフォーマンスと深くリンクしており優れた選手といえます。
「視野」とは、眼の構造が影響しているのですが、「①中心視 ②周辺視 ③意識」が大きく関係しているそうです。

「中心視」は、テレビやパソコンの画面、文字や絵などを見るときに、意識的に使っています。網膜の中心部を使って一点を凝視して見ることで、色や形を正確に捉えるのに適しています。
「周辺視」は、網膜の周辺部を使って視野の周辺部を漠然と見ることで、動きや位置を捉えるのに役立ちます。階段を上ったり、箸やお茶碗のご飯を持ち上げるなどといった動作の時に無意識で使っています。

人間の平均的な視野は左右180度・上下150度ぐらいが限界ですが、この視野角度内において中心視で見る事が出来るエリアは視線中心付近のごく僅かです。逆に周辺視では中心視よりもずっと広大なエリアを見る事が可能です。しかも訓練次第でそのエリアを広げる事が出来ます。スポーツが苦手な人は、視点が近く、中心視でじっと見過ぎていて、動作や反応が遅れる傾向が癖になっていると思います。見る方の意識ばかりで後追いですし、運動感覚に意識集中できない。これは「中心視」の特性によるものです。
「周辺視」は一度に得られる情報量が多い、というメリットの他に「中心視よりも反応速度が速い」という利点もあります。意識下と無意識下での脳への伝達スピードの違いからこうなっているようです。他に、目に余計な力が入らないので目の疲労度も格段に違うということです。

ですから、この周辺視のほうが、まず車の運転などには適しているということを、私は運転中に気づきました。(標識確認その他、中心視もうまく使います)私もしばらくそうでしたが、運転初心者は近くも遠くも凝視しがちで、たくさんの情報が拾えないし、操作感覚にも集中しにくい。
無意識的には知ってる人がほとんどではないかと思います。COXも、リラックスして遠くをぼんやり見つつ、周辺視野の情報を拾い上げて、スターンCOXであれば時に視点をブレード、漕手、クラッチ、などポイントで見て、感覚やコールに最大限意識集中をするのが良いと思っています。

周辺視は野球やサッカーなどあらゆるスポーツ競技においてトップレベルを目指す為に必須のスキルと言われており、専属のトレーナーを用意して「ビジョントレーニング」をしているプロスポーツの団体・選手も少なくないそうです。現代のスポーツ界では、目の重要性が改めて認識されています。目で情報を把握する能力以外にも、野球では投手対打者、サッカーでは中盤や、FW対DFなど、目の駆け引きが繰り広げられますしね。プレー判断や反応スピード、陽動や裏をかく、など色々な面で目がカギを握っているんですね。

イチロー選手は、「ボールを見ようとすると、身体の反応が遅れてしまう」として、「眼で見ないで、体で見る」という感覚があるそうです。
また、剣道には「遠山の目付け(えんざんのめつけ)」という教えがあって、剣道の達人は相手の顔付近のあたりに視線を固定するが、遠方を見るようにして相手の状況を把握するというものです。一点を凝視するのでなく、遠い山を見るような目の使い方をすると、相手の体全体を視野に入れることができるわけです。
これらは周辺視によって、相手の動きを把握し瞬時に反応することができ、かつ自らも冷静に集中できるようにする目の使い方なのだと思います。


そして、大脳との神経の経路から、中心視は「Whatシステム」(物体の色や形が処理される)、周辺視は「Where/Howシステム」(物体の位置や運動が処理される)だと言えるということです。

視覚情報がより重要なCOXだけでなく、漕手にとっても重要だと言えるのは、周辺視システムは運動システムとの連携が強いという特徴があるためです。
この周辺視ですと、反応速度が早いうえに、無意識的に幅広い情報が把握できて、視線の移動も予測的に行えるということです。私の感覚では、頭がたいへんクリアで回転もパッパッと速くなっている感じがあります。そしてやはり、身体感覚への集中が高くなる。
Rowing動作の感覚に極度に集中できているときは、視点がぼやっとどこを見ているか分からないのにしっかり見えている、頭が冷静でたいへんすっきりとクリアな状態だ、次の予測もできて冴えている、とても集中しているがたいへんリラックスしている、艇と身体の動きが手に取るようにわかる。今まさにゾーンに入ろうとしている・・・、という感覚、ですね。

「無意識の情報処理」と、いわゆる「ゾーン体験」は、関連があるようです。
私はCOXでしたが、インカレ最後のレースにそんな感じがありましたし、これまでにランニングの最中やその他、いくつかこういう感覚かなという時間があったと思っています。必ずしも最高のパフォーマンスが出るわけではないようですが、こうした直感で動きが良くなり、感覚に集中した状態は作れると思います。
この感覚は、目の使い方にヒントがあるという感じがしています。周辺視とはいえ、眼は動かしたりします。Rowingのトップ選手の表情や目の動きなどを見てください。少なくとも、じっと一点を凝視するような感じではなく、何か目でなく頭や体で見ているような感じです。ものすごく感覚に集中できているように見えませんか。




参考サイト
慶應義塾大学 連続公開講座~Bridging Program between You and KEIO SFC~
「講義名:身体運動から自分を知ろう」
http://gc.sfc.keio.ac.jp/class/2003_gc00001/slides/05/index_19.html

P.19から34までが周辺視システムについて述べた部分です。
中心視と周辺視の違いの表、各競技の熟練者の視点などは面白いですね。
著作権に関する記述がありましたので、念のためURLだけ貼ります。内容の転用・複製しないようお願いいたします。

ほかにも周辺視に関する記述はたくさんありますので、興味があれば調べてみて下さい。
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